灰原薬「応天の門」第2巻の感想とあらすじは?

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灰原薬氏による「応天の門」の第2巻です。第2巻と第3巻のテーマの一つが菅原道真の兄の事です。

この巻で何やら思わせぶりなセリフや場面が多く出てきます。

一体どういうことなのでしょう…?

舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。

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第2巻の基本情報

登場人物紹介:菅原道真

主人公の菅原道真(すがわら の みちざね)は、右大臣にまでなった政治家です。

しかし、昌泰の変で大宰府へ流され、失意のなか大宰府で没します。

菅原道真の死後、藤原家での相次ぐ死や、清涼殿への落雷など、朝廷にとって不穏なことが続き、菅原道真の祟りと考えられるようになります。

朝廷は菅原道真の怨霊を鎮めるため、天満天神として信仰の対象とします。

現在は学問の神、受験の神として親しまれる。各地にある天満宮がそれです。代表的なのが北野天満宮、太宰府天満宮、湯島天満宮などです。

怨霊信仰については次の本が参考になります。

登場人物紹介:藤原高子

「ふじわら の こうし」もしくは「たかいこ」と読みます。

清和天皇が元服してから2年後の貞観8年(866年)に25歳での入内し女御となりました。のちに皇太后となります。

父は藤原長良。藤原基経の同母妹です。

叔父に藤原良房。良房の養女になっていた可能性もあるようです。

入内する以前に在原業平と恋愛関係があったとされます。本書では11歳で駆け落ちした説を採用しています。

関係年表

本書の舞台ははっきりとはわかりません。

ヒントとなりそうなのが、得業生になるための勉学に励んでいる場面です。

しかし、菅原道真が得業生になるのは、貞観9年(867年)ですので、応天門の変が起きた翌年です。

本書の時期ではありません。

やはり、第1巻と同じく、863年ころでしょうか。

ーーー第2巻はここから?ーーー

  • 863(貞観5)
    • 神泉苑で御霊会を行い、祟道天皇、伊予親王ら6人の霊をまつる
    • 越中・越後地震、死者多数

ーーー第2巻はここまで?ーーー

  • 864(貞観6)
    • 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
    • 亡くなった人物(円仁(入唐八家))
  • 866(貞観8) 応天門の変
    • 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
    • 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)
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第2巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人

  • お香について。お香は「嗅ぐ」ではなく「聞く」。そして、古代・中世には今のようなお風呂がないため、お香が重宝されました。
  • 入内について。皇后の妃である皇后・中宮・女御になる高貴な女性が、儀礼を整えて内裏に入ることです。
  • 山海経について。漢王朝には成立している書で、様々な妖怪や霊的な存在が描かれてます。開明獣、窮奇、九尾の狐、天狗、西王母、祝融、女媧などです。
  • 鷹狩について。鷹狩は古代から行われており、在原業平と兄・在原行平は鷹狩りの名手として知られていました。
  • 遣唐使船と交易船について。遣唐使船そのものについての資料はほとんど残っていません。

物語のあらすじ

怨霊出づる書の事

菅原道真は橘広相に呼ばれ、久しぶりに大学寮に顔を出しました。

そこに一人の学生が現れ、この本は祟られていると言い、写本は無理だと言いました。

夜になると怨霊が出るだの、妖艶な美女が出るなど、この本を開くと物の怪が出るというのです。

本は橘広相の友が遣唐使船で持ち帰ったものでした。橘広相も物の怪を見たというのです。

ばかばかしいと思った菅原道真は自分が写本を作ると言って本を持ち帰りました。

夜。

道真の前に現れた者がいました…。

翌朝、道真は紀長谷雄を呼び昭姫を訪ねました。そして、所に焚き染めてある香のことを尋ねました。

道真は香を反魂香ではないかと考えていました。

そこで紀長谷雄を縛り上げて、香の実験をすることにしました。

藤原高子屋敷に怪の現れたる事

昔の夢…。

藤原高子が見ていたのは、11歳のころの自分と在原業平との夢…。

翌朝。

叔父の藤原良房と、兄・藤原基経が高子を訪ねてきました。昨晩、女官の筑紫が物の怪に襲われたと聞いたからでした。

良房は検非違使に警護させると言いましたが、基経は二人の兄に警護を任せると言います。

その二人の兄は、昔に在原業平を散々に痛めつけたのでした。

藤原長良の三男であった基経は男子のいなかった良房の養子になり、順調に出世し、長兄・次兄を追い抜いていました。

その基経は在原業平を呼び出し、高子に近づかぬようにくぎを刺しました。

在原業平は菅原道真を訪ねましたが、道真は得業生の試験で忙しく、業平に関わっている暇はありませんでした。

道真のところにいる白梅が漢書を高子のもとに届けました。

在原業平は戻ってきた白梅から屋敷の中の様子を聞き出しました。屋敷には高子の二人の兄・藤原国経と遠経がいることが分かりました。

菅原道真が藤原高子に呼ばれて屋敷に向かいました。

物の怪騒ぎで身動きが取れず、困っているので、どうにかしてほしいというのです。

道真は断ろうとしましたが、高子は一本御所所の山海経を借りているというものですから、道真は断れなくなりました。

しかし、物の怪が筑紫による虚言であることがわかり、警護している兄たちをどうにかしなければなりません。

高子は再び松煙墨の一級品で道真を釣りました。

鏡売るものぐるいの事

藤原基経は島田忠臣を呼び、菅原道真のことを聞きました…。

菅原道真は鷹の訓練をしていました。そこに在原業平が訪ねてきました。狩りに誘いましたが、菅原是善は拒否しました。

菅原道真は亡き兄の夢を見ました…。

紀長谷雄が手にしている鏡の模様を見て、菅原道真は気になることがありました。

昭姫に鏡を見せると、唐の物ではないと言います。おそらく晋代のもので、500年前の物でした。墓荒らしが持ち込んだようです。

加持丸と呼ばれた男の様子がおかしい。長谷雄が鏡を買ったのはその加持丸からでした。

書倉に立てこもった加持丸の様子を見るため、菅原道真は倉に入り込みました。

加持丸は唐で山犬に噛まれたいたようです。

菅原道真は加持丸の様子がおかしいのを見て、医術書をあたり、すぐに狂犬(たぶれいぬ)におかされていることを突き止めました。

そして、道真は昔見たものを思い出しました…。

番外編 白梅のおしごと

白梅が菅原家に来て最初の仕事は書倉の整理でしたが…。

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