灰原薬「応天の門」第10巻の読書備忘録(要約と紹介と感想と)

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灰原薬氏による「応天の門」の第10巻です。

藤原基経と偶然出会ってしまった菅原道真ですが、この巻から、徐々に徐々に政権闘争に巻き込まれていくようになります。

すでに伴善男とは知り合い、源融とも知り合い、そして藤原基経と知り合いになりました。

さて、鬼が再び市中を騒がせます。不思議なことに、鬼が跋扈したのは平安時代が主でした。

平安時代には鬼や狐が国家を乱す妖怪でしたが、中世になると天狗になります。

小松和彦「異界と日本人」に詳しく書かれています。

本書の中で良かったセリフを2つほど挙げておきます。

ならひとつだけ言っておく

若君

鞘とは家だ

鞘を失った剣はすぐに錆びる

錆びて朽ちるだけだ

灰原薬 応天の門 第55話 都に馬頭鬼があらわるる事

帳尻合わせるっていうのは数字のことだけじゃないんですよ

誰かが辛い思いをしたり損が出ないように上手いことやるって意味です

灰原薬 応天の門 第56話 菅原道真、米算用をする事

舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。

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第10巻の基本情報

登場人物紹介:紀豊城

応天の門では粗暴な男として描かれている紀豊城(き の とよき)。

勝手気ままに振る舞う性格であったことから、異母兄・夏井から厳しく責めたてられ、大納言・伴善男の許へ身を寄せてその従僕となりました。

貞観8年(866年)の応天門の変では、伴善男・中庸親子らと共に首謀者とされました。

関係年表

ヒントとなる出来事がないため、おそらく貞観6年(864年)のままと思われます。

ーーー第10巻はここからーーー

  • 864(貞観6)
    • 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
    • 亡くなった人物(円仁(入唐八家))

ーーー第10巻はここまでーーー

  • 865(貞観7)
    • 大きな出来事がありませんでした。
  • 866(貞観8) 応天門の変
    • 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
    • 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)
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第10巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人

  • 平安時代の養子について。武家においては血のつながりより、家の存続が重んじられましたので、家を繫栄させてくれるのであれば、養子でも良かったのです。
  • 渤海国について。いまの中国東北部から朝鮮半島北部、ロシアの沿岸地方を領土にしていた国家です。(世界史を選択している高校生ならなじみがあるでしょう。)
  • 平安時代の刀について。平安時代前期には直刀、湾刀、両刃、片刃の4種類が混在していました。やがて湾刀で片刃が大勢を占めていくようになります。
  • 平安時代の埋葬について。大切なのは霊魂であり、遺体は大事ではないという考えに近かったため、葬送の地(鳥辺野、蓮台野、化野など)か、町はずれに捨てに行っていました。鴨川べりなどは、かつて遺体がごろごろしていた場所だったわけです。
  • 平安時代の流行について。流行を裏付ける資料が足りないのですが、貴族の装束は柔装束(なえしょうぞく)から強装束(こわしょうぞく)へ変化していきました。

物語のあらすじ

藤原基経、道真と会遇する事

菅原道真が藤原基経と偶然出会いました。その様子を基経を探していた藤原常行が見かけます。

基経は兄・吉祥丸を知っているようでした。

宴が終わり屋敷に戻った道真は兄の日記に記載がないか探します。

唐犬に噛まれる前日に「手古」という名を見つけました。

手古は基経の幼き頃の呼び名です。

手古は叔父・良房に呼ばれ、養子となることになっていました。

都に馬頭鬼があらわるる事

大内裏の談天門。

検非違使が賊に襲われて負傷しました。

襲われた検非違使は物の怪だと言っています。襲われたのは五条のはずれあたり。

在原業平が調べてみると今月に入って4人が襲われ、馬の頭の鬼を見たという民もいました。

襲われているのは武官ばかり。剣をさげている者を狙っているようです。

その馬頭の鬼が現れたのは多美子の入内の翌週からであり、入内の行列が襲われたあたりに夜毎出没しているようです。

それを聞いて藤原常行は藤原基経に百鬼夜行のごとき鬼が出るから注意しろと忠告しました。

菅原道真は先日昭姫に預けたものが何かわかったかと尋ねました。

おそらく飾り紐は渤海のもので馬具や刀の柄飾り巻くようなものですが、革鞘はもっと西のものではないかと推測していました。

道真が百鬼夜行が現れたあたりに出向くと在原業平と是則がいました。

道真は百鬼夜行の正体を見ていました。異国の言葉を話しており、目の色が違っていました。あるいは胡人か…。

馬頭の鬼が探しているのは革鞘かもしれないと、道真は業平に見せました。

夜。

道真が五条のあたりを歩いていると、果たして馬頭の鬼が現れました。

襲われた道真を業平が助けに入り、生け捕りにします。しかし、喋っている言葉が分かりません。

捕まえた男に革鞘を戻してあげると、涙を浮かべました。

そして、片言の渤海の言葉で道真が訪ねると、ウイグルから来たと言いました。

男はウイグルが滅んだあと、唐を経て渤海へ流れましたが、そこで奴隷になったことがわかりました。

菅原道真、米算用をする事

昭姫は菅原道真を呼んで、先日の馬頭鬼事件の際に使った小屋の件をたてに、帳簿付けをさせることにしました。

数字が合わないことに気づいた道真が昭姫に尋ねようとしたところ、蔵で使いに行ったはずの三好が倒れているのが見つかりました。

毎月米がどこかに消えている…。三好が…。

と思っていたら、昭姫のところで働いている皆が、少しずつ蔵から物をとっていました。そして、そのことを昭姫は知っていました。

昭姫のところでの仕事が終わり、屋敷にもどると、屋敷の前に牛車が止まっていました…。

番外編

島田宣来子が白梅を連れて昭姫の店へ乗り込みました。

すぐに宣来子の誤解が解け、店の者たちにおめかしをしてもらい、そのままの格好で道真に会いに行きましたが…。

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