記事内に広告が含まれています。

藤沢周平「竹光始末」の感想とあらすじは?

この記事は約3分で読めます。

短編6作。武家ものと市井ものが織混ざった作品集です。

「竹光始末」「恐妻の剣」「乱心」「遠方より来る」が武家もの、「石を抱く」「冬の終りに」が市井ものとなります。

また、「竹光始末」「遠方より来る」が海坂藩を舞台にしています。

なお、「遠方より来る」は「雪明り」(講談社文庫)にも収録されています。

さて、2002年の映画「たそがれ清兵衛」(主演:真田広之、宮沢りえ。第76回アカデミー賞外国語作品賞ノミネート。)の原作となるのが、本書収録の「竹光始末」と「たそがれ清兵衛」「祝い人助八」(それぞれ「たそがれ清兵衛」に収録)です。

映画「たそがれ清兵衛」の紹介

内容/あらすじ/ネタバレ

竹光始末

海坂藩に辿り着いた小黒丹十郎は浪人の身であった。海坂藩で新規の召し抱えを行っているというので、推薦状を持ってやって来たのだ。相手は柘植八郎左衛門である。

しかし、柘植八郎左衛門にとっては迷惑な話だった。というのも、新規の召し抱えはとっくに終わっていたからである。

そうはいうものの、一度小黒丹十郎と会う事にした。会ってみて分かったのは、小黒丹十郎という男は非常に潔いという事であった。そのため、柘植八郎左衛門は小黒丹十郎のために一肌脱ごうと思った。

恐妻の剣

馬場作十郎は、妻・初枝の尻に敷かれている。そのため、子供達からも軽く見られている節がある。その馬場作十郎に、ある命が下った。

それは、藩で預かっている人間三人のうち二人が逃げたので、連れ戻せというものだった。もし、手に余るようであれば切手捨てても構わないものだった。

石を抱く

直太は博奕の世界から足を洗って、ある店で働いている。その店の女将の弟というのがヤクザなやつで、度々店にやってきては金をせびって帰った。この事を知った直太はひとつ、この弟に釘を刺そうと考えた。

冬の終りに

磯吉はなれない博奕で五〇両も勝ってしまった。実は胴元がわざと勝たせたのだが、そうとは知らない磯吉は勝ったまま帰ってしまった。すかさず胴元の下のものが磯吉を追う。追われているのに気が付いた磯吉は恐くなって、必死に逃げる。そして逃げた先でお静と出会う。

乱心

新谷弥四郎は剣友の清野民蔵の事が心配であった。それは、清野の妻女・茅乃に不義の噂があったからである。いつ清野が逆上するのか心配していたが、その心配は杞憂で終わったようだった。そのうち、新谷も清野も江戸詰めになり、江戸に赴く。

遠方より来る

海坂藩士の三﨑甚平のもとに、かつて戦場で知り合った曾根平九郎が転がり込む。海坂藩への仕官のためだ。豪快な印象の平九郎だが…

本書について

藤沢周平
竹光始末
新潮文庫 約二六〇頁
短編集
江戸時代(海坂藩もの含む)

目次

竹光始末
恐妻の剣
石を抱く
冬の終りに
乱心
遠方より来る

登場人物

竹光始末
 小黒丹十郎
 柘植八郎左衛門
 余吾善右衛門

恐妻の剣
 馬場作十郎
 初枝…作十郎の妻
 森本麓蔵
 平賀
 菅野甚七

石を抱く
 直太
 新兵衛
 お仲
 菊次郎
 権三

冬の終りに
 磯吉
 富蔵
 お静
 袈裟次

乱心
 新谷弥四郎
 清野民蔵
 茅乃…清野民蔵の妻

遠方より来る
 三﨑甚平
 曾我平九郎

「海坂藩もの」が収録されている作品

  1. 隠し剣孤影抄
  2. 隠し剣秋風抄
  3. 暗殺の年輪
  4. 蝉しぐれ
  5. 冤罪
  6. 竹光始末 本書
  7. 静かな木
  8. 闇の穴
  9. 闇の梯子
  10. 雪明かり

映画の原作になった小説

池波正太郎「鬼平犯科帳 第8巻」の感想とあらすじは?

今ひとつピリッとした感じがない。平蔵ら火付盗賊改方の派手な大立ち回りや、なじみの密偵達の華々しい活躍が乏しく感じられるためだろう。唯一「流星」がスケールを感じる短編である。

山本兼一の「火天の城」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)

第十一回松本清張賞。織田信長の最後の居城・安土城をつくった職人たちの物語。天主を担当した岡部又右衛門以言、岡部又兵衛以俊の親子を主人公としている。安土城は謎に包まれている城である。

佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第1巻 陽炎ノ辻」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
坂崎磐音が豊後関前藩を出て江戸で暮らさなければならなくなった事件から物語は始まる。居眠り磐音の異名は、磐音の師・中戸信継が磐音の剣を評した言葉である。
山本一力「あかね空」のあらすじと感想は?
第126回直木賞受賞作品です。永吉から見れば親子二代の、おふみから見ればおふみの父母をいれて親子三代の話です。本書あかね空ではおふみを中心に物語が進みますので、親子三代の物語と考えた方がよいでしょう。
酒見賢一の「墨攻」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)(面白い!)
物語の始まりは墨子と公輸盤との論戦から始まる。この論戦で語られることが、物語の最後で効いてくる重要な伏線となっている。さて、墨子は謎に包まれている思想家である。そして、その集団も謎に包まれたままである。
池波正太郎「鬼平犯科帳 第6巻」の感想とあらすじは?

主立った登場人物が登場しつくし、登場人物が落ち着いてきている。本作で印象に残るのが、「大川の隠居」である。火付盗賊改方に盗っ人が入り込み、その盗っ人と平蔵の駆け引きがとても面白い作品である。

藤沢周平「隠し剣孤影抄」の感想とあらすじは?
それぞれの秘剣に特徴があるのが本書の魅力であろう。独創的な秘剣がそれぞれに冴えわたる。それがどのようなものなのかは、本書を是非読まれたい。特に印象的なのは、二編目の「臆病剣松風」と「宿命剣鬼走り」である。
井上靖「おろしや国酔夢譚」の感想とあらすじは?(映画の原作です)
覚書/感想/コメント「序章」で大黒屋光太夫ら伊勢漂民以外のロシアに漂着した漂民を簡単に書いています。それらの漂民は日本に帰ることはかないませんでした。ですが、この小説の主人公大黒屋光太夫は日本に帰ることを得たのです。帰ることを得たのですが、...
浅田次郎「壬生義士伝」の感想とあらすじは?(映画の原作です)(面白い!)

第十三回柴田錬三郎賞受賞作品。新選組というものにはあまり興味がなかった。倒幕派か佐幕派かといったら、倒幕派の志士の話の方が好きであった。だが、本書で少し新選組が好きになった。興味が湧いた。

池波正太郎「鬼平犯科帳 第2巻」の感想とあらすじは?

本書、第二話「谷中・いろは茶屋」で同心の中でも憎めない登場人物の木村忠吾が初登場する。本書では二話で主要な役割を果たす。また、小房の粂八と相模の彦十は密偵として板に付き始めてきているようである。

司馬遼太郎の「城をとる話」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
覚書/感想/コメント昭和三十九年(1964年)に俳優・石原裕次郎氏が司馬遼太郎氏を訪ね、主演する映画の原作を頼みました。それが本作です。司馬氏は石原裕次郎氏が好きで、石原氏たっての願いを無下に断れるようではなかったようです。映画題名「城取り...
池波正太郎「闇の狩人」の感想とあらすじは?

仕掛人の世界と盗賊の世界。本書はある意味「鬼平犯科帳」の盗賊の世界と「仕掛人・藤枝梅安」の香具師の世界を同時に楽しめる、かなりおいしい作品である。

京極夏彦の「嗤う伊右衛門」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)(面白い!)

第二十五回泉鏡花文学賞受賞作品。伝奇や幻想話というのは好きであるが、怪談やホラーというのは苦手である。だから積極的に読む気がしない。映画などに至っては見る気すらない。

井上靖の「敦煌」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)

敦煌が脚光を浴びるのは、20世紀になってからである。特に注目を浴びたのは、敦煌の石窟から発見された仏典である。全部で4万点。

藤沢周平「たそがれ清兵衛」の感想とあらすじは?
短編八作。全てが、剣士としては一流なのだが、一癖も二癖もある人物が主人公となっている。2002年の映画「たそがれ清兵衛」(第76回アカデミー賞外国語作品賞ノミネート。)の原作のひとつ。
池波正太郎「雲霧仁左衛門」の感想とあらすじは?
池波正太郎の火付盗賊改方というと「鬼平犯科帳」があまりにも有名すぎますので、本書は霞んでしまう面がありますが、「鬼平犯科帳」とは異なり、長編の面白さを十分に堪能できる時代小説であり、短編の「鬼平犯科帳」とは違う魅力にあふれた作品です。
池波正太郎「鬼平犯科帳第22巻 特別長編 迷路」の感想とあらすじは?

個人的に、鬼平シリーズの中で、本書が最も長谷川平蔵が格好良く書かれている作品だと思う。特に最後の場面は、思わず"目頭が熱く"なってしまった。

宇江佐真理の「雷桜」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
江戸という都会から少しだけ離れた山里。その山里にある不思議な山という特殊な空間が、現実を忘れさせてくれる舞台となっている。そして、そこで出会うお遊と斉道というのは、まるでシンデレラ・ストーリー。
井上靖の「風林火山」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
物語は、山本勘助が武田家に仕え、勘助が死んだ武田信玄(武田晴信)と上杉謙信(長尾景虎)との幾度と行われた戦の中で最大の川中島の決戦までを描いている。
海音寺潮五郎「天と地と」の感想とあらすじは?
本書は上杉謙信の側から見事に描ききった小説であると思う。本書では、上杉謙信が亡くなるまでを描いているのではない。しかし、重要な局面で印象的に小説は終了している。