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池波正太郎「鬼平犯科帳 第2巻」の感想とあらすじは?

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本書、第二話「谷中・いろは茶屋」で同心の中でも憎めない登場人物の木村忠吾が初登場します。

本書では二話で主要な役割を果たします。

また、小房の粂八と相模の彦十は密偵として板に付き始めてきているようです。

まだ、他の主要な密偵が登場していませんが、それも鬼平を読む上での、今後の楽しみです。

「蛇の目」が「鬼平犯科帳 劇場版」の原作の一つだと思われます。

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監督は鬼平犯科帳のテレビシリーズの監督もつとめている小野田嘉幹。松竹創業100周年記念作品。率直な感想としては、"別に映画化しなくても良かったのではないか?テレビの特番で十分"といったところ。
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内容/あらすじ/ネタバレ

蛇の目

鬼平にさんざんに邪魔された蛇の平十郎。長谷川平蔵宣以の鼻をあかすまでは、江戸を離れないと意地になっている。その蛇の平十郎が目を付けたのが、医師の千賀道栄の家である。前の田沼時代に、金を貯め込んでおり、金が唸っているはずであった。

そして、予定通り押し込みに入ったものの、金蔵には金がない。なぜなのか?

谷中・いろは茶屋

同心の木村忠吾は、谷中にあるいろは茶屋でお松と戯れていた。金が尽きてきた忠吾は、お松と会えなくなると思っていた。しかし、世の中には奇特な人物がいるもので、お松に金を与え、好きな人と遊びなさいと言う。

このおかげで、忠吾はまたお松を会えるのだが、元々は火付盗賊改方の内勤の忠吾。そうそう外出はできない。ある晩、たまらず役宅を抜け出し、お松の元へはせ参じるつもりであった。

その途中で怪しい人間を見かけてしまい、忠吾はその人物の見張りを行う。

女掏摸お富

お富はかつての掏摸仲間の岸根の七五三造に脅されていた。百両を用意しなければ、お富の亭主に全てをばらすと言われたのだ。

今の生活を守りたいお富は必死になって、百両を作ろうとするが、それには掏摸をするしかなかった。久方ぶりの掏摸も、回数を重ねる毎に感覚を取り戻すお富。そして、約束の百両を用意し終えるも…。

妖盗葵小僧

小房の粂八が預かっている〔鶴や〕に妙な客が現れた。その客の話しを総合して推測するに、押し込みにあい、亭主の前で女房が犯されるという事件だったらしい。その話しを聞き終えた平蔵は、粂八と二人きりで捜査を始める。

やがてこの盗賊が頻繁に出没するようになった。しかもこの盗賊葵の御紋を身にまとった不埒な輩であった。しかし、この”葵小僧”の足取りはようとしてつかめない。平蔵を嘲笑うかのように犯行を繰り返す葵小僧。平蔵の面目は丸つぶれとなり、火付盗賊改方の評判も落ち、平蔵は憔悴する。

密偵

密偵のぬのやの弥市の前に乙坂の庄五郎が現れた。そして、弥市を縄ぬけの源七が狙っているという。弥市はたまらず、佐嶋忠介に報告をする。

しかし、この後、再び乙坂の庄五郎が現れ、盗みを助けてくれないかという。助けてくれれば、縄ぬけの源七の居所を教えるというのだ。

お雪の乳房

同心の木村忠吾が惚れて、夫婦になっても良いと考えた娘・お雪の父親は盗賊だった。お雪の父親である鈴鹿の又兵衛は、自身の引退を考え、最後の盗みをするつもりで準備を進めており、このことを知り困惑する。

埋蔵金千両

自分の命が後幾ばくもないと考えた、小金井の万五郎は、妾のおけいに隠し財産のことを漏らしてしまう。しかし、その後、医師の中村宗仙が治ると請負い、実際に治りかけると、おけいに隠し財産のことを漏らしたのを後悔する。

本書について

池波正太郎
鬼平犯科帳2
文春文庫 約三〇〇頁
連作短編
江戸時代

目次

蛇の目
谷中・いろは茶屋
女掏摸お富
妖盗葵小僧
密偵
お雪の乳房
埋蔵金千両

登場人物

蛇の目
 蛇の平十郎…盗賊
 白玉堂紋蔵…蛇の平十郎の手下
 千賀道栄…医師
 座頭の彦の市
谷中・いろは茶屋
 木村忠吾…同心
 お松
 墓火の秀五郎…盗賊
 油屋乙吉…数珠屋
女掏摸お富
 お富
 霞の定五郎…掏摸の元締
 岸根の七五三造…掏摸
妖盗葵小僧
 鶴屋佐兵衛…骨董屋
密偵
 弥市…ぬのや亭主・密偵
 乙坂の庄五郎…盗賊
 縄ぬけの源七…盗賊
お雪の乳房
 鈴鹿の又兵衛…盗賊
 お雪…又兵衛の娘
 つちや善四郎…足袋屋
 木村忠吾…同心
埋蔵金千両
 小金井の万五郎…盗賊
 おけい
 中村宗仙…医師

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