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灰原薬「応天の門」第11巻の感想とあらすじは?

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灰原薬氏による「応天の門」の第11巻です。

この巻の前半は伴善男が関わってきます。この登場するのが源能有です。文徳天皇の皇子です。

そして後半は道真本人が殺人事件の容疑者になってしまいます。事件は12巻に続きます。

本書の中で良かったセリフは在原業平が菅原道真に語る次にセリフです。

道真 ひとつ教えておいてやる

力に押し流されない生き方は二つある

全てを諦め全てに背を向けてひっそりと暮らすか

お前が力となるかだ

灰原薬「応天の門」第11巻 第59話

舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。

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全巻の目次

  • 応天の門 第1巻
    • 在原業平少将、門上に小鬼を見る事
    • 都を賑わす玉虫の姫の事
  • 応天の門 第2巻
    • 怨霊出づる書の事
    • 藤原高子屋敷に怪の現れたる事
    • 鏡売るものぐるいの事
    • 番外編 白梅のおしごと
  • 応天の門 第3巻
    • 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事
    • 道真、明石にて水脈を見る事
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
  • 応天の門 第4巻
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
    • 在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事
    • 京に妖の夜行する事
    • 山科宮、山中の笛の音に惑わさるる事
    • 伴善男、吉夢を引き替ふる事
  • 応天の門 第5巻
    • 都にて、魂鎮めの祭の開かれる事
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
  • 応天の門 第6巻
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
    • 島田忠臣、菅家廊下につとむる事
    • 源融、庭に古桜を欲す事
  • 応天の門 第7巻
    • 藤原多美子、入内の事
  • 応天の門 第8巻
    • 都で流行りたりける暦の事
    • 大学寮にて騒ぎが起こる事
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 番外編 白梅、菅家門前にて仔犬を拾う事
  • 応天の門 第9巻
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 禍を呼ぶ男の童の事
    • 源融、別邸にて宴を催す事
  • 応天の門 第10巻
    • 藤原基経、道真と会遇する事
    • 都に馬頭鬼があらわるる事
    • 菅原道真、米算用をする事
    • 番外編
  • 応天の門 第11巻 本作
    • 菅原道真、山中に椿の怪をみる事
    • 大路に髪切る鬼の現わるる事
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 番外編 天女に魅入られたる男の事
  • 応天の門 第12巻
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 在原業平、山中に桃源郷を見る事
    • 土師忠道、菅原道真と遇する事
  • 応天の門 第13巻
    • 土師忠道、菅原道真と遇すること
    • 紀長谷雄、竹藪にて子を見付くる事
    • 都言道、山中にて天女に惑わさるる事
    • 番外編 業平、重陽に花を求むる事
  • 応天の門 第14巻
    • 在原業平、伊勢に呼ばれる事
    • 藤原良房、病に臥す事
  • 応天の門 第15巻
    • 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事
    • 源融、嵯峨に庭を望む事
    • 流人の隠岐より帰京する事
  • 応天の門 第16巻
  • 応天の門 第17巻
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第11巻の基本情報

登場人物紹介:源能有

源能有(みなもと の よしあり)。文徳天皇の皇子。清和天皇の兄。右大臣までのぼりました。

菅原道真と親しく、道真の詩文集「菅家文章」に漢詩が収録されています。

生母の身分が低かったため、皇嗣からは早い段階で除外されました。仁寿3年(853年)に時有・本有・載有ら兄弟と共に源姓を与えられ臣籍降下します。子孫は文徳源氏。

有能だったようで、貞観14年(872年)には28歳に参議として公卿に列します。

弟の清和天皇と陽成天皇の治世をたすけました。藤原基経からも評価され、娘を娶っています。藤原基経亡きあとは、政治を事実上担ったようです。

関係年表

ヒントとなる出来事がないため、おそらく貞観6年(864年)のままと思われます。

ーーー第11巻はここからーーー

  • 864(貞観6)
    • 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
    • 亡くなった人物(円仁(入唐八家))

ーーー第11巻はここまでーーー

  • 865(貞観7)
    • 大きな出来事がありませんでした。
  • 866(貞観8) 応天門の変
    • 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
    • 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)

第11巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人

  • 平安時代の後宮について:江戸時代の大奥は男子禁制でしたが、平安時代の後宮は貴族が入ることができたようです。血の継承にうるさい中国の皇帝とはことなり、天皇家は大らかだったようです。
  • 盆栽について:武士は緑で枯れない「松」が好きでしたが、貴族の美意識は桜でした。盆栽は中国から平安時代にもたらされました。
  • 平安時代の化粧について:貴族の成人女性と現代女性との違いは「引き眉」と「お歯黒」です。また、白粉が必需品でした。ところが白粉には鉛が使われており、鉛中毒になることがありました。
  • 日本最古の女流作家:紫式部の源氏物語が貴族の必読書となるのは室町時代になってからのようです。それまでは宮廷で知る人ぞ知る存在だったとのこと。
  • 平安時代の犯罪について:よく分かっていません。犯罪を取り締まる検非違使が、捕まえた後、どうしたのかが分からないのです。平安時代には死刑はありませんでした。重い罪のときは遠い国に流し、牢屋くらいでしょうか。
  • 平安時代のアイドル:歌と美貌を兼ね備えていた、在原業平と小野小町でしょう。

物語のあらすじ

菅原道真、山中に椿の怪をみる事

伴善男が菅原邸に道真を訪ねてやってきていました。

戻ってきた道真に伴善男は、少々厄介な身の上の若者がおり、会ってくれないかと頼んできました。

道真は薬師ではないので、と断ろうとしましたが、物の怪が関与しているというのです。

その者は木に精を吸われているというのです…。

宇治方面に連れていかれた菅原道真が会った若者が見せたのは盆栽の椿でした。

道真が会ったのは、前の帝・文徳帝の子で、現帝の異母兄・源能有でした。

道真は、しまった、はめられた、と思いました。

藤原勢力に対抗するため、伴家に縁ある若者をすべて与させるつもりなのか…。

そう考えた道真が暇を告げて帰ろうとしたとき、「抱朴子」を落とし、それに源能有は興味を持ちました。

源能有は盆栽の椿に女の精がおり、毎夜現れては源能有の精を絞りつくしているのだといいます。

道真は夜を待つことになりました。

家の者が薬湯を持ってきたので、源能有と菅原道真はそれを飲みました。

夜、菅原道真の枕元に現れたのは、人の女でした。

菅原道真と源能有が家の者に鎌をかけると、京の屋敷にいる奥方・滋子の命令だったというのでした。

自分が身ごもっている間、源能有のご不興を慰める目的と、源能有の血筋を絶やさぬようにするためでした。

菅原道真は源能有邸を辞して、伴善男の邸宅に向かいました。

そして、伴善男の邸宅から自宅への帰り道、紀豊城に襲われます。そこに伴中庸が助けに入りました。

大路に髪切る鬼の現わるる事

白梅の様子が少しおかしいようです…。

桂木は白梅も24歳になって、いい話の一つや二つあるのでは、と心配しています…。

巷では大路に出るという髪切り鬼の話でもちきりでした。

紀長谷雄が菅原道真に話題を振ってきたところ、在原業平が詳しく知りたいと二人を呼び留めました。

その鬼として白梅が疑われてしまいましたが、面通しをしたところ、違うことが分かりました。

白梅は森本の屋敷から玉虫姫宛の恋文を持ってきており、それを参考に、人の恋に一人盛り上がっていたのでした。その様子を桂木におかしく思われていたのでした。

菅原道真、盗人に疑わるる事

魂鎮めの祭の日の喧騒に乗じての盗み、家人へ重傷を負わせて殺害した罪で菅原道真が捕らえられました。

その日はちょうど伴善男の邸宅で解毒の処置をしていました。

しかし、そのことは話せません。

盗まれたのは硯一つだといいます。

道真が捕まったことは父・是善に伝わりました。そして、その様子を見ていた藤原基経が動きます。

番外編 天女に魅入られたる男の事

在原業平の従者たちがいろいろ話をしていました。

その一人、近丸がいそいそと帰っていきます。

その後を在原業平がついていくと、ボロい寺の中に近丸が入っていきます…。