灰原薬「応天の門」第7巻の感想とあらすじは?

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灰原薬氏による「応天の門」の第7巻です。

第4巻で藤原常行の前に現れた百鬼夜行ですが、本巻でも登場します。しかし、それは物の怪でもなんでもありません。

藤原常行は百鬼夜行を装った者たちが何者なのか気になります。

そして菅原道真も百鬼夜行の一団が何者なのかを探り始め、手がかりを見つけます。

舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。

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全巻の目次

  • 応天の門 第1巻
    • 在原業平少将、門上に小鬼を見る事
    • 都を賑わす玉虫の姫の事
  • 応天の門 第2巻
    • 怨霊出づる書の事
    • 藤原高子屋敷に怪の現れたる事
    • 鏡売るものぐるいの事
    • 番外編 白梅のおしごと
  • 応天の門 第3巻
    • 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事
    • 道真、明石にて水脈を見る事
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
  • 応天の門 第4巻
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
    • 在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事
    • 京に妖の夜行する事
    • 山科宮、山中の笛の音に惑わさるる事
    • 伴善男、吉夢を引き替ふる事
  • 応天の門 第5巻
    • 都にて、魂鎮めの祭の開かれる事
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
  • 応天の門 第6巻
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
    • 島田忠臣、菅家廊下につとむる事
    • 源融、庭に古桜を欲す事
  • 応天の門 第7巻 本作
    • 藤原多美子、入内の事
  • 応天の門 第8巻
    • 都で流行りたりける暦の事
    • 大学寮にて騒ぎが起こる事
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 番外編 白梅、菅家門前にて仔犬を拾う事
  • 応天の門 第9巻
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 禍を呼ぶ男の童の事
    • 源融、別邸にて宴を催す事
  • 応天の門 第10巻
    • 藤原基経、道真と会遇する事
    • 都に馬頭鬼があらわるる事
    • 菅原道真、米算用をする事
    • 番外編
  • 応天の門 第11巻
    • 菅原道真、山中に椿の怪をみる事
    • 大路に髪切る鬼の現わるる事
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 番外編 天女に魅入られたる男の事
  • 応天の門 第12巻
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 在原業平、山中に桃源郷を見る事
    • 土師忠道、菅原道真と遇する事
  • 応天の門 第13巻
    • 土師忠道、菅原道真と遇すること
    • 紀長谷雄、竹藪にて子を見付くる事
    • 都言道、山中にて天女に惑わさるる事
    • 番外編 業平、重陽に花を求むる事
  • 応天の門 第14巻
    • 在原業平、伊勢に呼ばれる事
    • 藤原良房、病に臥す事
  • 応天の門 第15巻
    • 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事
    • 源融、嵯峨に庭を望む事
    • 流人の隠岐より帰京する事
  • 応天の門 第16巻
  • 応天の門 第17巻
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第7巻の基本情報

登場人物紹介:藤原常行

藤原 常行(ふじわら の ときつら)。藤原北家、右大臣・藤原良相の長男です。

百鬼夜行に遭遇したことでも知られます。馬場あき子「鬼の研究」に詳しく書かれています。

同じ年のいとこ藤原基経と昇進を争っていましたが、応天門の変を機に明暗が分かれていきます。

基経の父・良房が摂政となりましたが、常行の父・良相が政治的影響力を失ってしまうからです。

登場人物紹介:藤原多美子

藤原 多美子(ふじわら の たみこ)。清和天皇の女御。父は右大臣・藤原良相。

貞観6年(864年)正月に入内します。仁和2年(886年)に薨去。

関係年表

藤原多美子が入内しましたので、貞観6年(864年)になります。

ーーー第7巻はここからーーー

  • 864(貞観6)
    • 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
    • 亡くなった人物(円仁(入唐八家))

ーーー第7巻はここまでーーー

  • 865(貞観7)
    • 大きな出来事がありませんでした。
  • 866(貞観8) 応天門の変
    • 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
    • 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)

第7巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人

  • 裳着(もぎ)について。平安時代の貴族の女性の成人式を裳着と言います。12歳から15歳の間に行われます。
  • 女官について。日本の朝廷には宦官は存在しませんでした。後宮は原則女性だけの世界で、女性同士の争いも激しかったようです。尚侍(かみ)2名、典侍(すけ)4名、掌侍(じょう)6名が後宮での権力者です。そして、後宮には12の役所が置かれていました。
  • 平安時代の貨幣について。皇朝十二銭はあまり流通していなかったようです。
  • 土地事情について。平安京は長安をモデルに設計され、大きさは長安の3分の1です。整然と区画された平安京でしたが、桂川に近い方の右京は荒廃し、南側も人気がなくスラム化します。左京、しかも北の方に住むようになります。

物語のあらすじ

藤原多美子、入内の事

藤原常行が在原業平に妹・多美子を入内前にさらってほしいと頼みんできました。そうでないと、殺されてしまうというのです。

藤原高子の入内を待たずに父・良相が抜け駆けしましたので、このまま藤原良房と藤原基経が黙っているわけがありません。

入内の日まで何とか多美子を守り抜きたい。

在原業平は自分の屋敷の者を手配すると約束しました。

多美子の入内を聞き、伴善男は大笑いしていました。藤原良房の悔しがる様が目に浮かびます。

藤原良房と基経が高子を訪ねました。

そこに多美子が現れました。高子は多美子を妹のようにかわいがっています。

多美子は最近自分の寝床の床下から音がするので、気味悪いと言います。

高子は菅原道真を唐物の陶硯で釣りました。釣られた道真は白梅に書物を持たせて屋敷に行かせます。

高子は白梅に多美子のそばにいて気を配ってほしいと頼みました。白梅が目を光らせ、何かあったら道真の知恵を借りというつもりです。

白梅は早速多美子のもとで働き始めました。

在原業平が昭姫に五条のあたりに何か噂が無いかを訪ねてきました。

多美子のところで働き始めた白梅は床下にもぐり、多美子の寝床の周辺を調べました。すると、藁でできた人形を見つけました。

それを菅原道真に見せました。呪詛用の形代です。

誰かが外から侵入したのか、それとも内部の者のしわざか…。

翌日、多美子の屋敷に戻った白梅は、台所で深雪が運ぼうとしたお膳をひっくり返してしまいます。

鼠がお膳の食べ物を食べると、すぐに死んでしまいました。それを見ていた吉野は深雪が犯人であることを見破りました。

深雪がいなくなったにもかかわらず、新しい呪詛の形代が床下にあるのを白梅がみつけます。

在原業平は入内の日までの多美子の移動経路を心配していました。

入内の前日までに多美子の母の実家から藤原良相の屋敷に移ります。これが問題です。百鬼夜行の噂のある通りを通るからです。

紀豊城が昭姫の店で暴れようとしていました。そこに居合わせたのが紀長谷雄です。豊城は長谷雄が紀家であるため気に入りません自分を追い出した夏井や父を思い出すからです。

昭姫の店で働く小藤を盾に、豊城は長谷雄に双六の勝負を挑みます。

負けを認めたくない豊城が暴れようとしたところに在原業平が現れました。

多美子入内まであと5日。

多美子の移動は夜に行うことになりました。藤原常行は百鬼夜行の件があるため反対でしたが、在原業平は秘策があると言います。

すると、予想通り百鬼夜行が現れましたが、藤原常行は物の怪の類ではなく、徒党を組んだ人の一団だと見抜きます。

しかし、双方にとって予想外な人物が襲ってきました。紀豊城です。

こうした騒ぎがある中、多美子はとっくに藤原良相の屋敷についていました。

明けて翌朝。正式に入内の運びとなりました。

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