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灰原薬「応天の門」第3巻の感想とあらすじは?

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灰原薬氏による「応天の門」の第3巻です。この巻の大きなテーマが菅原道真の兄の事です。

そして、新たな登場人物として許嫁の島田宣来子(しまだ のぶきこ)が登場します。

以後、頻繁ではありませんが、たびたび登場するようになります。

舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。

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全巻の目次

  • 応天の門 第1巻
    • 在原業平少将、門上に小鬼を見る事
    • 都を賑わす玉虫の姫の事
  • 応天の門 第2巻
    • 怨霊出づる書の事
    • 藤原高子屋敷に怪の現れたる事
    • 鏡売るものぐるいの事
    • 番外編 白梅のおしごと
  • 応天の門 第3巻 本作
    • 染殿の后、鬼に乱心せらるるの事
    • 道真、明石にて水脈を見る事
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
  • 応天の門 第4巻
    • 在原業平、数多の災難に遭う事
    • 在原業平、京にて塩焼きの宴を催す事
    • 京に妖の夜行する事
    • 山科宮、山中の笛の音に惑わさるる事
    • 伴善男、吉夢を引き替ふる事
  • 応天の門 第5巻
    • 都にて、魂鎮めの祭の開かれる事
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
  • 応天の門 第6巻
    • 長谷雄、唐美人に惑わさるる事
    • 島田忠臣、菅家廊下につとむる事
    • 源融、庭に古桜を欲す事
  • 応天の門 第7巻
    • 藤原多美子、入内の事
  • 応天の門 第8巻
    • 都で流行りたりける暦の事
    • 大学寮にて騒ぎが起こる事
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 番外編 白梅、菅家門前にて仔犬を拾う事
  • 応天の門 第9巻
    • 菅原道真、遊行する比丘尼と会う事
    • 禍を呼ぶ男の童の事
    • 源融、別邸にて宴を催す事
  • 応天の門 第10巻
    • 藤原基経、道真と会遇する事
    • 都に馬頭鬼があらわるる事
    • 菅原道真、米算用をする事
    • 番外編
  • 応天の門 第11巻
    • 菅原道真、山中に椿の怪をみる事
    • 大路に髪切る鬼の現わるる事
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 番外編 天女に魅入られたる男の事
  • 応天の門 第12巻
    • 菅原道真、盗人に疑わるる事
    • 在原業平、山中に桃源郷を見る事
    • 土師忠道、菅原道真と遇する事
  • 応天の門 第13巻
    • 土師忠道、菅原道真と遇すること
    • 紀長谷雄、竹藪にて子を見付くる事
    • 都言道、山中にて天女に惑わさるる事
    • 番外編 業平、重陽に花を求むる事
  • 応天の門 第14巻
    • 在原業平、伊勢に呼ばれる事
    • 藤原良房、病に臥す事
  • 応天の門 第15巻
    • 典薬寮にて不老不死の薬が見つかる事
    • 源融、嵯峨に庭を望む事
    • 流人の隠岐より帰京する事
  • 応天の門 第16巻
  • 応天の門 第17巻
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第3巻の基本情報

登場人物紹介:在原業平

主人公・菅原道真のバディである在原業平(ありわら の なりひら)は高貴の出自です。

父・阿保親王は皇族でしたが、臣籍降下し、兄・行平らと共に在原朝臣姓を名乗りました。

美男の代名詞とされ、歌人として優れていました。また、兄・行平ともども鷹狩の名手と言われています。

二条后(藤原高子)など高貴な女性との恋も噂されました。

登場人物紹介:紀長谷雄

菅原道真の友・紀長谷雄(き の はせお)は、描かれているようにダメな男子ではなく、非常に優秀な人物だったようです。

「竹取物語」の作者の候補者の一人であり、「長谷雄草紙」の主人公です。

「延喜格式」の編纂にも関わった人物として知られます。

「延喜格式」のなかの延喜式巻9・10の「延喜式神名帳(じんみょうちょう)」に記載された神社を一種の格式として式内社と呼んでいます。

関係年表

島田宣来子が12歳という記述があります。生まれは嘉祥3年(850年)とされます。

数え年ですと、863年ころでしょうか。1巻から年数は変わっていないようです。

ーーー第3巻はここから?ーーー

  • 863(貞観5)
    • 神泉苑で御霊会を行い、祟道天皇、伊予親王ら6人の霊をまつる
    • 越中・越後地震、死者多数

ーーー第3巻はここまで?ーーー

  • 864(貞観6)
    • 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
    • 亡くなった人物(円仁(入唐八家))
  • 866(貞観8) 応天門の変
    • 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
    • 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)

第3巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人

  • 平安時代の信仰について。天台宗と真言宗の違いは、天台宗は本来「顕教」であり、真言宗は「密教」であることです。
  • 平安時代の土地事情について。平安時代には私有という概念が成熟しておらず、同じ土地に何人もが権利を持っていました。
  • 得業生試と文章生試について。
  • 平安時代の地方政治について。

物語のあらすじ

染殿の后、鬼に乱心せらるるの事

菅原道真の兄・吉祥丸は優しい兄でした。

道真は、吉祥丸が狂犬(たぶれいぬ)にかかり死んだ、藤原に殺されたも同然、と考えていました。

父・是善が帝に呼ばれました。

帝は、以前に是善が生霊についての書を読み聞かさせてくれたことを思い出して読んだのでした。

昨夜、母の染殿が帝の前に現れたのですが、その姿が異様であったというのです。

是善が下がると、藤原基経とすれ違いました。

基経は染殿の生霊が現れたことを聞き、女官の遠山を呼びつけて叱りました。

そして、染殿の恢復を祈願するため、金剛山から真済と多くの若い僧を差し向けたのです。

菅原是善は在原業平に染殿のことが心配でならないと言いました。

業平は祈祷の様子に不審を覚えていました。

そして、帝への学問を終えた菅原是善が下がるときに、祈祷の真の姿を見てしまうのです。

悲鳴が聞こえ、是善が踏み込むと、僧たちが死んでおり、藤原良房が立っていました。

良房に言い含められた是善は、戻ると道真に兄・吉祥丸のことを話し始めました…。

道真、明石にて水脈を見る事

道真は昭姫のところに現れ、なるべく遠くに行く船に乗せてほしいと頼みました。

明石に向かう船に乗るものの、ひどい船酔いに苦しめられる道真。

京へは戻らないと決めたものの倒れこんでしまった道真を助けたのは、郷司の妻・キヨでした。

キヨは京である屋敷の姫に仕えていました。

キヨの夫は郷司の常丸と名乗りました。

この辺りでは真水の井戸が涸れてしまい、人柱をたてようという話が出ていました。

道真は書物で読んだ水脈の探し方を思い出しながら、水脈を探し始めました。

そこに在原業平が現れました。

在原行平、数多の災難に遭う事

菅原家に入り込もうとする姫がおりました。

その場に在原業平と、そのあとに菅原道真が現れました。

姫は道真の妻だと言いました。

道真の許嫁で、道真の師・島田忠臣の娘・宣来子、12歳です。

最近、在原業平はおかしな夢を続けてみるのだと言います。

夢に出てくるのは数年前に通っていた山吹でしたが、いまさら心当たりはありません。

しかし、立て続けに業平の周りでおかしなことが起きます。