灰原薬氏による「応天の門」の第17巻です。
引き続き貞観7年(865年)が舞台のようです。
藤原高子の入内の話が持ち上がりますが、入内したのは貞観8年(866年)でした。
舞台となる時代については「テーマ:平安時代(藤原氏の台頭、承平・天慶の乱、摂関政治、国風文化)」にまとめています。
全巻の目次
第17巻の基本情報
登場人物紹介:藤原順子(ふじわらののぶこ)
「藤原を煮詰めたような女」として登場したのが、藤原順子です。
ふじわらの のぶこ、もしくは、じゅんしと読みます。
仁明天皇の女御で、文徳天皇の母となった女性です。
藤原北家の勢力拡大において重要な位置を占め、晩年には太皇太后となりました。
日本三代実録では、美しく、穏やかな性格の女性として伝えています。
父は藤原冬嗣、母は藤原美都子。
兄弟には次の人物がいます。
- 藤原長良――順子の兄。文徳天皇の外伯父。
- 藤原良房――兄。のちに皇族以外で初めて摂政となる。
- 藤原良相――兄弟。右大臣。
- 藤原古子――妹。文徳天皇の女御。
在原業平と藤原高子が恋に落ちるきっかけになった人物という逸話があります。
順子の姪・藤原高子が若いころ順子の邸に住んでいた際、在原業平が高子に会うため、正門から入れず、子供たちが遊んで壊した土塀の隙間から忍び込んだという話があります。
また、仏教にも深く関わり、山科の安祥寺の建立を発願したと伝えられます。
861年に出家し、871年に63歳で亡くなりました。墓所は現在の京都市山科区にある後山階陵とされます。
関係年表
- 864(貞観6)
- 富士山噴火(貞観大噴火)富士山噴火史上最大
- 亡くなった人物(円仁(入唐八家))
ーーー第17巻はここからーーー
- 865(貞観7)
- 大きな出来事がありませんでした。
ーーー第17巻はここまでーーー
- 866(貞観8) 応天門の変
- 最澄に伝教大師、円仁に慈覚大師の諡号が授けられる
- 応天門の変(応天門炎上し、伴善男が罰せられる)
第17巻の「道真の平安時代講」【解説】本郷和人
- 太皇太后とは。后から皇太后、さらに太皇太后へと、天皇との続柄や即位・譲位に伴って称号が変化するのが原則でした。ただし例外も多く、藤原順子も皇后を経ずに皇太夫人→皇太后→太皇太后となっています。
- うなぎについて。万葉時代から鰻は夏痩せに効く栄養食と考えられ、大伴家持も歌に詠んでいます。当時は塩焼きが主流で、現在の醤油を使った蒲焼きや「土用の丑の日」の習慣は後世に成立しました。
- 狐と稲荷信仰。稲荷神は本来、五穀豊穣や食物を司る神で、狐そのものではなく「神の使い」とされます。狐は農業を守る存在と考えられ、後には商売の神としても信仰され、江戸の町で稲荷社が広まりました。
- 吉兆・凶兆について。平安貴族は陰陽道を生活に取り入れ、方違・物忌・反閇などによって吉凶や穢れを避けていました。中国由来の思想に日本独自の呪術や風水、密教などが加わり、陰陽師の役割も広がっていきました。
- 女性の髪形。高貴な女性は長く黒い髪が美の象徴で、成人すると基本的に髪を切らず、大垂髪(おすべらかし)のような姿になりました。幼少期には剃髪や髪削ぎの儀式があり、成人後は頬の髪を短くする「鬢削ぎ」なども行われました。
物語のあらすじ
伴中庸、橋の上にて思し悩む事
各地で大雨の被害があり、富士山周辺でも地震が続いていました。
藤原良房がいない間に、右大臣の藤原良相は自分の思うように政を進めようとしていました。
大納言・伴善男の体調が思わしくありません。その中、外出しようとしています。
息子の伴中庸(とものなかつね)は、気取られぬように後をつけましたが、途中でばれてしまいます。
伴善男が向かった先には、藤原良相と藤原順子(ふじわらののぶこ)がいました。
その頃、伴中庸は橋の上から菅原道真を見かけます。入水自殺をしようとしていると勘違いした中庸は道真を助けようとします。
中庸は父・善男の身を案じてること、そして、自分の力不足を道真に吐露します。
そんな折、中庸は身分を知らぬまま、先帝の生母である太皇太后・藤原順子と出会います。
順子は亡き息子(文徳天皇)の面影を中庸に重ねます。
そこに慌てた様子で現れたのが伴善男でした。善男は中庸に女性が先帝の母君であることを教えました。
善男はまさか中庸を巻き込むことになるとは思っておらず、厄介なことになったと感じています。
藤原基経は藤原良房を訪ねました。兄弟による骨肉の争いが始まろうとしていました。
狐を嫁にした男の事
左馬寮に配属された下級官吏・使部丈人(つかいべのたけひと)の周囲で、彼は狐を嫁にした、その嫁が在原業平を呪詛しているという奇妙な噂が流れ始めます。
心配した同輩が使部丈人を連れて菅原道真を頼りました。
その頃、在原業平も門前に奇妙なものが置かれることが続いていました。
怪異を信じない菅原道真がこの事件の調査に乗り出し、業平たちと共に真相を追います。
在原業平は丈人と妻を呼びよせて、話を聞きました。
藤原高子、屋敷に吉兆が現れる事
藤原多美子の入内後、内裏では帝の世継ぎがなかなか生まれないことが話題になっていました。
季節も寒い時期になってきました。
そんな中、藤原基経の妹・藤原高子(ふじわらのたかいこ)の屋敷の門前に白い蛇と白い亀が現れたという噂が京の街を駆け巡ります。
吉兆が現れたことで、藤原良房や基経らによって、保留にされていた高子の入内話が一気に進められることになります。
入内の日取りは来月晦日になりそうです。
高子には今更という気持ちがありました。そんな折に、白梅が訪ねてきました。
白梅は高子が在原業平の事を好いていることを知っています。そのことを菅原道真に話しますが、首を突っ込むのをやめるように言われます。
道真はこの寒い時期に白い蛇と白い亀が現れたことを不思議に感じていました。
高子の屋敷では山路に瀬戸が桃里に気を付けたほうがいいと進言していました。
番外編一
島田宣来子が白梅の髪型をどうにかしようとしていました。が、どうにもなりません。
伴中庸、五条の屋敷に赴く事
紀豊城が伴中庸を付けていました。そして、中庸が入っていった屋敷を驚きます。
その紀豊城を菅原道真が付けていましたが、見失ってしまいます。
その道真を在原業平がつかまえます。なぜなら、道真がうろついていたのは太皇太后の屋敷前だったからです。
在原業平は伴中庸から太皇太后への贈り物の相談を受けました。中庸が母のように思っていることに驚きます。
なぜなら太皇太后は藤原を煮詰めたような女性でしたから、なにか謀りごとでもあるのかと考えたのです。
番外編二
紀長谷雄が菅原家に向かう途中で牛追童に絡む大学寮の者を見て、コマでの勝負を挑みます。
