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藤沢周平「雪明かり」の感想とあらすじは?

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直木三十五賞受賞前後の短編集。大雑把には前半が市井もので、後半が武家ものですが、中間のものは市井もの武家もの半々です。

藤沢周平としては前期の作品群になるわけですが、この時点で後期の時代のものと比べても遜色のない内容になっています。

このあたりが、藤沢周平作品にハズレ作品が少ない理由なのでしょう。早い時代から、小説が巧いのです。

本書は別々の短編の集まりのはずですが、なぜかまとまった感じのする仕上がりになっているのは不思議です。このことは解説にも記載されていますが、本として一つのまとまりを感じるのです。

さて、本書最後の短編「雪明り」は2004年公開の映画「隠し剣鬼の爪」の原作の一つです。他の原作は「隠し剣孤影抄」に収録されている「隠し剣鬼の爪」です。

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内容/あらすじ/ネタバレ

恐喝 ⇒文春文庫「又蔵の火」にも収録
入墨 ⇒文春文庫「闇の梯子」にも収録
潮田伝五郎置文 ⇒新潮文庫「冤罪」にも収録
穴熊 ⇒新潮文庫「暁のひかり」にも収録
冤罪 ⇒新潮文庫「冤罪」にも収録
暁のひかり ⇒新潮文庫「暁のひかり」にも収録
遠方より来る ⇒新潮文庫「竹光始末」にも収録
雪明り ⇒新潮文庫「時雨のあと」にも収録

本書について

藤沢周平
雪明かり
講談社文庫 約三五〇頁
短編集
江戸時代
市井ものと武家もの 海坂藩ものも含む

目次

恐喝
入墨
潮田伝五郎置文
穴熊
冤罪
暁のひかり
遠方より来る
雪明かり

「海坂藩もの」が収録されている作品

  1. 隠し剣孤影抄
  2. 隠し剣秋風抄
  3. 暗殺の年輪
  4. 蝉しぐれ
  5. 冤罪
  6. 竹光始末
  7. 静かな木
  8. 闇の穴
  9. 闇の梯子
  10. 雪明かり 本書

映画の原作になった小説

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