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藤沢周平の「暁のひかり」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

「暁のひかり」「馬五郎焼身」「おふく」の三作品は、共通してある種のやりきれなさを感じさせる作品である。「暁のひかり」では病身の少女、「馬五郎焼身」では馬五郎の死んだ娘、「おふく」ではおなみの人生がそのように感じさせる。

「穴熊」「冬の潮」の二作品は、毛色は異なるものの、それぞれに淫靡な雰囲気が漂う内容となっている。

「しぶとい連中」はユーモアのあるコミカルな内容である。

「暁のひかり」「穴熊」は講談社文庫「雪明かり」にも収録されている。

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内容/あらすじ/ネタバレ

暁のひかり

市蔵は博奕の壺振りとしてなかなかの腕をもっている。ある朝の帰路、危なっかしい歩き方をしている少女と出会う。

病気で長いこと寝ていたので、歩く練習をしているというのだ。市蔵には、その少女の姿がとてもまぶしく映った。少女とは時折会うようになった。そして、言葉もかわすようになった。

その市蔵が、凄腕の壺振りの小梅の伊八を紹介された。伊八からいかさま賽の使い方を学ばないかというのだ。

馬五郎焼身

馬五郎はほおずき長屋と呼ばれる裏店の嫌われ者である。最近では臆面もなく若い娘を引っぱり込むような傍若無人な振る舞いに出る馬五郎に、裏店の住人は触らぬ神に祟りなしと決め込んでいる。

昔から乱暴者だったわけではない。女房と別れた6、7年前からである。夫婦の娘が、女房の目を離したすきに川に落ちて死んでしまったのである。

女房と別れ、馬五郎はお角という女を気に入っていた。最近ではお角が一緒に暮らしても良いといっている。だが、馬五郎にお金があるのを分かると、お角は金を持って逃げた。

おふく

造酒蔵はおふくが奉公に出されるところを眺めていた。幼いながらにおふくが出される奉公先がどんなところか分かっていた。明石屋という男に体を売る店である。

数年経ち、かざり職人になった造酒蔵は明石屋の前に立っていた。なけなしの金を借りておふくに会いに来たのだ。だが、結局おふくには会えなかった。

造酒蔵は金がないとおふくに会えないことが分かり、宗左の子分になった。宗左は恐喝でくっている男である。その宗左の手伝いをしている中で、造酒蔵はおなみと知合った。

穴熊

お弓を探している浅次郎は、ある時お弓に似た武家の妻を知る。その妻は人にはばかられることをして金を稼いでいたが、哀れに思った浅次郎は、その妻を助けるため、夫の塚本伊織にあることを手伝わせる。

それは賭場のいかさまを暴いて、賭場から金をふんだくるというものだった。その企みはうまくいき、金をふんだくることに成功する。

そして、塚本伊織の妻女も人にはばかるようなことをしなくて済むはずだった…

しぶとい連中

熊蔵が酔っているときに、母子が身投げをしようとしている場面に遭遇する。熊蔵はそれを助け、有り金を渡すが、この助けられた母子は熊蔵の後をくっついて、熊蔵の家に居座ってしまった。

熊蔵はその悪人面を利用して、賭場で借金をした人間の取立を行っている。その熊蔵が母子に付きまとわれ、右往左往することになってしまった。

冬の潮

市兵衛は息子の嫁・おぬいを実家に戻すことにした。妻を亡くし、息子の芳太郎も川に落ちて水死した後、嫁と舅だけになり、口さがないある種の噂が流れ始めたためである。

おぬいを実家に戻すに当たっては百両を渡した。これで当座困ることはないだろうという市兵衛の配慮である。

だが、一年近くたって、おぬいが両国の水茶屋に出ていることを知った。市兵衛は思いがけないことを聞いた気分だった。

本書について

藤沢周平
暁のひかり
文春文庫 約二九〇頁
短編集 江戸時代

目次

暁のひかり
馬五郎焼身
おふく
穴熊
しぶとい連中
冬の潮

登場人物

暁のひかり
市蔵
おこと
小梅の伊八

馬五郎焼身
馬五郎
お角
おつぎ

おふく
造酒蔵
おふく
おなみ
宗左

穴熊
浅次郎
お弓
赤六
塚本伊織

しぶとい連中
熊蔵
みさ
竜吉
勢五郎

冬の潮
市兵衛
おぬい
滝蔵
大納言の吉
伊作…岡っ引