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佐伯泰英の「古着屋総兵衛影始末 第2巻 異心!」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

物語は花見をしている時に起きた事件から始まります。

江戸の花見は、五代将軍徳川綱吉治世下での名所は不忍池を見下ろす上野の山。

江戸時代の花見としては、他に飛鳥山、隅田川堤、品川御殿山、小金井などがありますが、これらは八代将軍徳川吉宗の時代を待たなくてはなりません。

この物語の舞台となるのは元禄十五年。忠臣蔵で有名な赤穂浪士の討入りがあった年です。

第一弾で播磨赤穂藩の藩主浅野内匠頭長矩が高家筆頭吉良上野介義央を斬りつけるという事件を描いており、第二弾となる本作では討入りを軸とした展開となっています。

忠臣蔵という有名な物語を軸に考えれば、ずいぶんと早く物語が進んでいることになります。

さらに、今回「影」が総兵衛に命じる内容というのも、この赤穂浪士の討入りに深く関連しています。

赤穂浪士の動きと、「影」の命、これに三代目江川屋彦左衛門を表にしての柳沢保明との対決が複雑に絡み合わさって、エラク大変な事態になっているのが本作です。

段々と窮地に追いつめられているような気がする鳶沢一族。今後の展開で、挽回できるのでしょうか?次作以降が気になります。

さて、小僧の駒吉も元服し、一人前の鳶沢一族の男となりました。綾縄小僧の異名を持つ駒吉ですが、これからどのような男に成長していくのでしょう。楽しみです。

忠臣蔵・赤穂浪士もの

忠臣蔵ゆかりの地

内容/あらすじ/ネタバレ

元禄十五年(一七〇二)春。上野の山に花見に来ていた総兵衛と千鶴、小僧の駒吉。その目の前で老按摩が五、六人の浪人に囲まれ襲われそうになっていた。

この事件があった後、「影」から呼び出しがあった。「影」は赤穂藩士が徒党を組んで江戸に入るようならば、入る前に阻止して討ち果たせという。

大山参りの代参で荷運び頭の作次郎らが大山へお参りに行った。その帰り道、貞吉という医師見習いに助けてもらう事態が発生した。貞吉も江戸に行くというので、作次郎は誘い合わせて江戸に戻った。

この帰り道、どうやら貞吉を狙ったと思われる襲撃を受けた。大黒屋に戻った作次郎は事の顛末を笠蔵に伝えた。

貞吉が大黒屋に作次郎を訪ねてきてくれた。そして、仕事をさせてくれないかと頼み込む。作次郎は笠蔵らと相談の上、貞吉を雇うことにして、長屋も貸し与えた。ただし、見張りつきであるが。

その頃、北町奉行所の筆頭与力犬沼勘解由は御家人の新堂鬼八郎と十手持ちの黒烏の勘平を呼んでいた。そして、二人に大黒屋総兵衛を牢に入れるためのあら探しをしてこいと命じていた。

京から戻ってきた国次が新しい情報をもたらした。それは、柳沢保明が新たな動きを始めようとしているということ、そして鳶沢一族によって壊滅させられた道三組の頭領・隆円寺真悟が柳生の庄に籠り再起を懸けた修行をしているということであった。国次は手代の磯松と清吉を下ろして、柳生に潜入させてきたという。

柳生が動くとなることは幕府そのものを敵に回すことになりかねない。

新惣代となった松太郎こと三代目江川屋彦左衛門が大黒屋に現れた。そして、新物の呉服を大黒屋と堀を挟んで商うという。

柳生から戻ってきた磯松は、柳生願念寺道場と呼ばれる道場に柳生連也斎が妾に生ませた柳生宗秋が訪ねたことを告げた。そして、隆円寺真悟の名も出たという。

その一方で、大黒屋を筆頭とする古着問屋をめぐる環境が厳しくなっていた。それを相談するために総兵衛は問屋六軒の主を呼んだ。そして、この中にどうやら江川屋彦左衛門とつながる裏切り者がいると睨んでいた。

江川屋彦左衛門だが、磯松と分かれ京へ潜入している清吉からの手紙で、京にいた時代のじゅらく屋で不義理をしていることが判明した。

総兵衛は秘かに江戸を抜け、鳶沢村に籠った。それは、「影」の命が正しいのか、鳶沢一族はどうすべきなのかを自らに問うものであった。

この間に、駒吉からもたらされた知らせが総兵衛の覚悟を決めた。これまで総兵衛が推測していたように、柳沢保明の手が「影」におよんでいたようだ。

柳生願念寺一党が江戸へ向かって出発し始めた。率いるのは隆円寺真悟ではなく、柳生宗秋である。そして、赤穂藩士たちの動きもあわただしくなってきているようだ。

こうした中、京から清吉が戻り、一緒にじゅらく屋番頭の佐助、それに中納言坊城公積の次女・崇子を伴っていた。江川屋彦左衛門との対決も近い。

本書について

佐伯泰英
異心! 古着屋総兵衛影始末
徳間文庫 約四〇五頁
江戸時代

目次

序章 花見
第一章 代参
第二章 同志
第三章 仮眠
第四章 帰還
第五章 急転
第六章 討入
終章 本懐

登場人物

吉次
虎三
貞吉(奥田貞右衛門)…医師見習い
高田郡兵衛
堀部安兵衛
吉田忠左衛門
新堂鬼八郎
黒烏の勘平…十手持ち
朝太
笹村啓之進…米沢藩士
深沢美雪
柳生宗秋…連也斎の子
青天陣ノ典
日向龍弦
井筒屋久右衛門…古着問屋
佐助…じゅらく屋番頭
崇子…中納言坊城公積の次女
(船宿幾とせ)
うめ…女将
千鶴
勝五郎…老船頭

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前作で「影」が下した指令は、播磨赤穂藩の藩主浅野内匠頭長矩が高家筆頭吉良上野介義央を斬りつけるという事件に端を発していました。総兵衛は「影」の意に反して動きます。「影」の指令が徳川家の安泰のためには逆に動くものと思ったからです。しかし、そのことによって「影」との対立が表面化しようとしていました。
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物語は花見をしている時に起きた事件から始まります。江戸の花見は、五代将軍徳川綱吉治世下での名所は不忍池を見下ろす上野の山。江戸時代の花見としては、他に飛鳥山、隅田川堤、品川御殿山、小金井などがありますが、これらは八代将軍徳川吉宗の時代を待たなくてはなりません。
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