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スサノオはどういう神様?スサノオを主祭神としている神社は?

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スサノオノミコトとは

日本神話の神です。

アマテラス、ツクヨミ、スサノオの三柱は、イザナギが自ら生んだ神です。

イザナギが生んだ神の中で最も貴いとしたところから三貴子と呼ばれます。

三貴神とも呼ばれます。

スサノオは表記が様々です。

「古事記」では

  • 建速須佐之男命(たけはやすさのおのみこと)
  • 速須佐之男命
  • 須佐之男命。

「日本書紀」では

  • 素戔男尊
  • 素戔嗚尊等
  • 須佐乃袁尊

「出雲国風土記」では

  • 神須佐能袁命(かむすさのおのみこと)
  • 須佐能乎命

他にも神社によって当てる漢字が微妙に異なることがあります。

三貴子の産まれた順番

「古事記」によれば

神産みにおいてイザナギが黄泉の国からもどり、筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原(江田神社のある宮崎市阿波岐原町)で禊を行った際に生まれます。

左目をすすぐとアマテラス、右目をすすぐとツクヨミが産まれ、鼻をすすぐとスサノオが産まれました。

「日本書紀」によれば

イザナギとイザナミの間に産まれアマテラス、ツクヨミ、ヒルコの次に産まれました。

スサノオの治めるところは

文献によって異なります。

そのため、ツクヨミとスサノオの逸話が被るところもあります。

  • アマテラス:高天原(=天)
  • ツクヨミ:天、滄海原(あおのうなばら)または夜の食国(よるのおすくに)
  • スサノオ:夜の食国または海原

ですが、スサノオは治めることを拒否してしまうので、スサノオが治めている所はありません。

天は太陽をアマテラス、月をツクヨミが治め、地上はスサノオではなく、アマテラスの孫(=天孫)ニニギが治めることになります。

のちにスサノオは 根の国(根之堅洲国) に住み着きますが、根の国は黄泉の国ではありませんので、冥界を治めているわけではありません。

なお、イザナギが黄泉の国から逃げ帰る際に、境界を封鎖したので、黄泉の国との行き来はできません。

黄泉の国には今もイザナミがいますが、イザナミが冥界を治めているのかは分かりません。

スサノオが統治することから外されたのは、子孫のオクニヌシの国譲りへの隠喩となっています。

出雲系は、その始まりのスサノオの時から統治者ではなかったということです。

神の国から追い出された神でもあるので、正統の流れから外れています。

しかし、祇園信仰や津島信仰、氷川信仰の中で多くの神社で祀られています。

そして、子孫も多くの神社で祀られています。

代表的なのが稲荷信仰のウカノミタマ(宇迦之御魂神)や、出雲系のオオクニヌシ(大国主命)、宗像信仰の宗像三女神などです。

スサノオの逸話

古代の神・英雄のなかで、スサノオやオオクニヌシ、ヤマトタケルなどはジョーセフ・キャンベル「千の顔をもつ英雄」の英雄の構造に従って逸話を見ていくのが面白いです。

基本の構造は「分離(セパレーション)⇒通過儀礼(イニシエーション)⇒帰還(リターン)」となります。

神逐まで

「古事記」によればスサノオは治めることを断り、母神イザナミのいる根の国に行きたいと願い、イザナギの怒りを買って追放されてしまいます。

なお、古事記ではイザナギの禊の中で生まれたので、イザナミが母神というのは変です。

日本書紀の記述の通りであればつじつまが合います。

根の国へ向う前に姉のアマテラスに別れの挨拶をしようと高天原へ上りますが、アマテラスは弟のスサノオが攻め入って来たのではと思い武装して応対します。

スサノオは疑いを解くために誓約(うけひ)を行いました。

我の潔白が誓約によって証明されたとして高天原に滞在するスサノオは、乱暴を働き、アマテラスは天の岩屋に隠れてしまいます。

そのため、スサノオは高天原を追放されました(神逐)。

ヤマタノオロチ

出雲の鳥髪山(現在の船通山)へ降ったスサノオは、ヤマタノオロチの生贄にされそうになっていたクシナダヒメ(櫛名田比売命)と出会います。

スサノオは、クシナダヒメの姿形を歯の多い櫛に変えて髪に挿し、ヤマタノオロチを退治します。

その退治の時にヤマタノオロチの尾から出てきたのが草那藝之大刀(くさなぎのたち、日本書紀では草薙剣(くさなぎのつるぎ))です。

この太刀をアマテラスに献上し、三種の神器の一つとなります。

草那藝之大刀は熱田神宮(愛知県名古屋市)の御神体です。

根之堅洲国で最初の和歌

櫛から元に戻したクシナダヒメを妻として、出雲の根之堅洲国の須賀(すが)に住みました。

そこで、詠んだ歌が、日本最初の和歌とされます。

古事記 : 夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁微爾 夜幣賀岐都久流 曾能夜幣賀岐袁

日本書紀: 夜句茂多菟 伊弩毛夜覇餓岐 菟磨語昧爾 夜覇餓枳都倶盧 贈廼夜覇餓岐廻

やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを
(八雲立つ 出雲八重垣 妻籠に 八重垣作る その八重垣を)

この歌から八雲は出雲を象徴する言葉になります。

ヤマタノオロチの別記

ヤマタノオロチ退治には別の記述もあります。

「日本書紀」の一書第4では、高天原から追放されたスサノオは、新羅の曽尸茂梨(そしもり)に降り、息子のイソタケル(五十猛神)と共に出雲国斐伊川上の鳥上の峰へ到った後、ヤマタノオロチを退治しました。

一書第5では、スサノオは子が困らないように体毛を抜いて木に変え、木の種類ごとに用途を定め、イソタケル(五十猛命) 、娘のオオヤツヒメ(大屋津姫命)、ツマツヒメ(枛津姫命) に命じて全国に植えさせています。

子供たち

クシナダヒメとの間に産まれた八島士奴美神の子孫がオオクニヌシです。

6代後の子孫とされます。

オオクニヌシも呼び名が多い神です。

また、カムオオイチヒメ(神大市比売)との間にオオトシ(大年神)とウカノミタマ(宇迦之御魂神)がいます。

ウカノミタマは伏見稲荷大社を筆頭にした稲荷信仰につながります。

オオクニクシとの関係

オオクニヌシの神話において、オオクニヌシはスサノオの婿になります。

葦原色許男神(アシハラシコヲ)と呼ばれていたオオクニヌシは、根の国のスサノオの所にやってきて、スサノオの娘・須世理比売(スセリヒメ)と互いに一目惚れの仲となります。

スサノオはオオクニヌシに様々な試練を与えますが、スセリヒメの助けを得ながら試練を乗り越え、二人は結ばれます。

スサノオが寝ている間にオオクニヌシはスサノオの髪や髭を柱などに縛り付けて動けないようにし、その間に駆け落ちします。

スサノオは葦原色許男神に、須世理比売を妻とすることを認め、生大刀、生弓矢、天詔琴を譲り、大国主という名を贈りました。

妻子

嫡妻:クシナダヒメ

  • 「古事記」では櫛名田比売(くしなだひめ)
  • 「日本書紀」では奇稲田姫(くしいなだひめ)、稲田媛(いなだひめ)、眞髪觸奇稲田媛(まかみふるくしいなだひめ)
  • 「出雲国風土記」では久志伊奈太美等与麻奴良比売命(くしいなだみとよまぬらひめのみこと)

子:ヤシマジヌミ

  • 「古事記」では八島士奴美神(やしまじぬみのかみ)
  • 「日本書紀」では清之湯山主三名狭漏彦八嶋篠

子:オオナムチ

  • 「日本書紀」では大己貴神(おおなむちのかみ)

妻 :カムオオイチヒメ

「古事記」では神大市比売(かむおおいちひめ)

第一子 :オオトシ

「古事記」では大年神(おおとし の かみ)

第二子 :ウカノミタマ

「古事記」では宇迦之御魂神(うかのみたま の かみ)

妻 : サミラヒメ

「八坂神社」では佐美良比売命(さみらひめ の みこと)

子:宗像三女神

  • 「日本書紀」では化生順が4通りに異なる
  • 長女 :「古事記」では多紀理毘売命(たきりびめ の みこと)
  • 次女 :「古事記」では市寸島比売命(いちきしまひめ の みこと)
  • 三女 :「古事記」では多岐都比売命(たきつひめ の みこと)

子:イソタケル ほか

  • 長男 :「日本書紀」では五十猛神(いそたける の かみ、いたける の かみ、五十猛命)
  • 長女 : 「日本書紀」では大屋津姫命(おおやつひめ の みこと)
  • 次女 : 「日本書紀」では枛津姫命(つまつひめ の みこと)
  • 須勢理毘売命(すせりびめ の みこと、「出雲国風土記」では和加須世理比売命/わかすせりひめ の みこと、「先代旧事本紀」では須世理姫/すせりひめ) – 「古事記」
  • 国忍別命(くにおしわけ の みこと)「出雲国風土記」
  • 青幡佐草日古命(あおはたさくさひこ の みこと) – 「出雲国風土記」、八重垣神社の社家佐草氏の始祖
  • 磐坂日子命(いわさかひこ の みこと) – 「出雲国風土記」
  • 衝桙等番留比古命(つきほことおるひこ の みこと) – 「出雲国風土記」
  • 都留支日古命(つるぎひこ の みこと) – 「出雲国風土記」
  • 八野若日女命(やのわかひめ の みこと) – 「出雲国風土記」
  • 天逆毎(あまのざこ) – 「和漢三才図会」

習合

茅の輪くぐり行事の由来

蘇民将来は「備後風土記」に見える説話の主人公です。

神に宿を貸した善行により茅の輪(ちのわ)の法を教えられ、子孫に至るまで災厄を免れることを約束された説話上の人物です。

貧しい兄と裕福な弟とがおり、神(=スサノオ)が一夜の宿を求めたとき、弟の巨旦(こたん)将来は応ぜず、兄の蘇民将来は宿を貸し粟飯などでもてなしました。

神はお礼に「蘇民将来之子孫」といって茅の輪を腰に着けていれば厄病を免れることができると教えました。

その後、弟の子孫は疫病で滅び、兄・蘇民将来の子孫は疫病を免れたそうです。

この説話が現在各地の神社などで行なわれる茅(ち)の輪くぐり行事の由来になっています。

牛頭天王との習合

神(=スサノオ)は牛頭天王と習合しています。

八角柱の木片に「蘇民将来之子孫也」などと書いた護符を蘇民将来といっています。

護符は、国津神系の神(おもにスサノオ)を祀る神社で授与されています。

スサノオを主祭神としている神社

祇園信仰、津島信仰、氷川信仰などに基づくものが多いです。

※古代社格・中世社格による

  • 八坂神社(京都府京都市東山区)…二十二社
  • 氷川神社(埼玉県さいたま市大宮区)…式内社、一之宮

なお、神仏習合の影響により、日本独自の仏教神の牛頭天王が本地とされます。

神仏習合については、義江彰夫「神仏習合」に詳しいです。