佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第28巻 照葉ノ露」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第二十八弾

いつもとは異なった始まり方に少々驚いた。

今回は、仇討ちをメインにした話しから始まる。そして、鵜飼百助宅での事件や、別の所での変死事件など、今回も盛りだくさんの内容となっている。

さて、でぶ軍鶏こと重富利次郎が旅路につくことになる。ただし、これは痩せ軍鶏こと松平辰平の修行の旅とはちがって、土佐への帰郷の旅である。重富家は土佐山内家中なのである。

だが、この度の中で重富利次郎も大きく成長しそうな予感である。大きな転機が訪れようとしているようだ。

転機といえば、前作で転機の訪れそうな気配のあった竹村武左衛門に転機が訪れる。詳細は本に譲ることにする。

そして、佐々木磐音にも一つの転機が。

それは、徳川家基を守るために西の丸に剣術指南として出仕することになったのだ。

家基の将軍就任を阻止したい田沼意次一派との熾烈な闘いが始まろうとしている。

磐音の周りでも、霧子などの登場回数が増えており、弥助の登場も目立つようになってきた。

転機繋がりで言えば、定廻り同心の木下一郎太と瀬上菊乃の関係がほんの少しだけ進展しつつあるようである。

身分を越えた恋路。はてさて、どのようになっていくのであろう。

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内容/あらすじ/ネタバレ

十三歳の直参旗本二千五百五十石設楽小太郎貞綱が船の上から実母・お彩の姿を見ていた。側で佐々木磐音がこれから起るべき事への覚悟を小太郎に確かめた。お彩は佐江傳三郎とともに逃げたのだ。

事の起こりは小太郎の父・貞兼の酒乱の癖による。

貞兼の酒乱はお彩が嫁いできたことによってしばらくはおさまった。小太郎が五歳の時、佐江傳三郎が奉公人として上ってきた。佐江は安房一心流の剣を遣い、棒術の達人でもあった。

誰が言ったか、お彩と佐江傳三郎が所帯を持つ約束の仲だったと吹き込み、貞兼の酒乱が再び始まった。

安永七年(一七七八)、城中で失態を犯した貞兼が酒で暴れ始めた。それを止めに入った佐江傳三郎が誤って貞兼を刺し殺してしまった。その手をお彩が取り、二人で屋敷から姿を消した。

設楽家は南町定廻り同心木下一郎太の先祖からの出入りの屋敷だ。設楽家の用人・隈田三太夫から知らせを受けた一郎太は、事情を知ると佐々木磐音を訪ねた。

佐々木玲圓が速水左近に即刻目通り願い、相談せよという。その夜に相談した三人は、翌日江戸から姿を消した。

武家の習いに従えば、佐江傳三郎は主殺しをしたことになり、お彩は姦婦ということになった。設楽家の家名を保つためには、非情な行動を取らざるを得なかった。

木下一郎太は佐江傳三郎とお彩が安房から浦賀水道を渡る船の手配を済ませたことをつかんできた。

一行は先んじて勝山に向かい、安房北条の湊に着いた。佐江傳三郎が手配した播州丸はまだ着いていない。そして天候が悪化して、播州丸が着いたとしてもすぐの出航はなさそうである。

佐々木玲圓はいつもより早く道場に出た。するとそこには重富利次郎の姿があった。

でぶ軍鶏こと利次郎は、父とともに土佐に行くことになったという。利次郎は土佐藩山内家の家中である。利次郎は此度の土佐への旅に迷いを感じているようだった。

そんな利次郎に道場の仲間たちが送別会を開くことになった。

安房から戻ってきた磐音は久しぶりに利次郎の稽古の相手をした。わずか数日の間に利次郎の中で何かが変わったようだった。
その利次郎の父・百太郎が尚武館を訪ねてきた。

天神鬚の百助こと御家人鵜飼百助を訪ねた磐音は異変に気づいた。百助の預かっている刀を狙って、直参旗本佐手平八郎が押し入っていたのだ。

百助の拝領屋敷を辞した足で、磐音は竹村武左衛門宅を訪ねた。すると、武左衛門は品川柳次郎の所に行ったことが分かった。

柳次郎は武左衛門のために安藤対馬守家下屋敷の門番の口を探してくれたのだ。下屋敷用人猿渡孝兵衛と柳次郎が飲み仲間というところから来た話だ。

その猿渡が注文を出した。それは磐音が武左衛門の身許引受人になるならという条件付きである。磐音は了解した。

門番になるということは武左衛門が士分を捨てるということを意味している。

安藤家の下屋敷を磐音たちが訪ねた時、安藤対馬守信成が来ていた。安藤信成と磐音とは日光社参、尚武館道場改築記念の大試合の時以来である。

でぶ軍鶏こと重富利次郎の最後の稽古の朝がやってきた。この日は朝稽古を早めに切り上げて、重富利次郎壮行勝ち抜き試合を行うことになった。

そして、この後、利次郎のたっての願いで、磐音と真剣での稽古を行うことになった。それは道中で真剣を抜くような事態に遭遇するかもしれないことを考えた稽古である。

重富利次郎が土佐に旅立った翌々日、竹村武左衛門一家が小梅村の磐城平藩安藤家の下屋敷に引っ越した。

磐音の身にも変化が起きようとしていた。それは速水左近の命で、西の丸に出向き、家基、近習衆に剣術指南をすることになったのだ。

速水左近の要請は切迫していた。それは家基の将軍位を阻止しようと動いている田沼意次一派の策動が険しさを増したと考えているからだ。

そこで、磐音を直に西の丸に入れて、田沼一派の攻撃の盾にすることにしたのだ。

今津屋の由蔵の耳にある話しが届いた。それは田沼意次が磐音を葬るために送った五人の刺客の内、残っている独創二天一流橘右馬介忠世、薩摩示現流愛甲次太夫新輔のうち、橘が江戸に戻ってきたというのだ。この話しは吉原の四郎兵衛会所からもたらされたものだった。

だが、磐音の前に姿をあらわしたのは、愛甲次太夫新輔だった。

徳川家基は初めて磐音に対面する風を装った。

本書について

佐伯泰英
照葉ノ露
居眠り磐音 江戸双紙28
双葉文庫 約三三〇頁
江戸時代

目次

第一章 酒乱の罪
第二章 仇討ち
第三章 大川の月
第四章 真剣のこつ
第五章 四番目の刺客

登場人物

佐々木磐音
おこん…磐音の妻
佐々木玲圓道永…養父、師匠、直心影流
おえい…玲圓の妻
(佐々木道場関係)
依田鐘四郎…師範
重富利次郎…通称・でぶ軍鶏
霧子
田丸輝信
早苗…竹村武左衛門の長女
白山…犬
季助…老門番
井筒遼次郎
重富百太郎…利次郎の父
(幕府関係)
徳川家基…将軍家後嗣
速水左近…御側御用取次
弥助…密偵
安藤対馬守信成
猿渡孝兵衛…安藤家下屋敷用人
(田沼一派)
橘右馬介忠世…独創二天一流
愛甲次太夫新輔…薩摩示現流
(南町奉行所関係)
木下一郎太…定廻り同心
瀬上菊乃
地蔵の竹蔵…御用聞き
おせん…竹蔵の女房
(品川家、竹村家など)
品川柳次郎
幾代…柳次郎の母
竹村武左衛門
勢津…竹村の女房
鵜飼百助…研ぎ師、天神鬚の百助
(今津屋関係)
由蔵…番頭
宮松…小僧
設楽小太郎貞綱
お彩…小太郎の母
佐江傳三郎
設楽貞兼
隈田三太夫…用人
勝山の源五郎
げじげじ眉の虎八親分
壱助…播州丸の船頭
佐手平八郎
辰弥
聡次
鐘撞きの道七
鐘撞き役の金三郎
おかつ

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町
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