佐伯泰英「居眠り磐音江戸双紙 第6巻 雨降ノ山」の感想とあらすじは?

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シリーズ六弾。

涙もろい人は、本書の途中からハンカチやティッシュを側に置いて読まれるといいです。

今回は、今津屋吉右衛門の内儀・お艶の大山詣でが大きな話の筋です。これはお艶が死を覚悟した最後の旅になります。

目頭を押さえながら読むことになるのは、お艶が倒れてからのことです。

磐音のなすことに目頭が熱くなります。もともと人のよい磐音ですが、磐音の本当の心根の優しさが表れているのが本書だと思います。

さて、上記のあらすじでは紹介していない話がもう一話あります。

旗本が偽の大判をつかませ、金を巻き上げるというものですが、こんな汚い手を使ったのは白鶴を身請けするためであるといいます。奈緒にまつわる話です。

この、白鶴に絡んで、白鶴の浮世絵を出した北尾重政が、おこんに絵を書かせてもらえないかといいます。絶世の美女と評されている白鶴を描いて評判となった北尾重政。

その重政がおこんを描きたいというのです。至る箇所でおこんは美人として書かれていますが、これにて、どの程度の美人であるかがわかろうというものです。

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内容/あらすじ/ネタバレ

涼み船が出るようになれば、江戸も本格的な夏の到来である。

坂崎磐音は今津屋が接待役で屋形船を仕立てることになり、その手伝いをお願いされる。あやかし船と呼ばれる嫌がらせをする連中がいるらしい。それを追い払ってもらいたいというのだ。なにせ、今回の接待は勘定奉行所のお役人やら町方である。勘定奉行と南北両奉行所の役人が新顔になったこともあり、その顔合わせの席でもある。品川柳次郎も一緒にやることになった。

この話とは別に今津屋では関前藩の物産の卸先に乾物問屋の若狭屋を用意してくれていた。

磐音が長屋に戻る途中で女の悲鳴が聞こえた。駆けつけると、同じ長屋のお兼である。この時にもめていたのは、お兼の元亭主だった。
そして、今津屋の接待の日、はたしてあやかし船が出没した。

今津屋で挨拶をすると、めずらしく内儀のお艶がいた。体が丈夫でなくいつもは離れにいることが多い。

この日は中居半蔵と一緒に乾物問屋の若狭屋に行き、関前藩の品物を吟味してもらうつもりである。その結果、極上品というわけではないが、工夫をすれば江戸でも売れそうだということをいわれた。中居半蔵はほっと安堵した。

磐音が先日の礼をかねて今津屋にいくと、お艶が倒れたという。

さて、磐音が長屋に戻ると、幸吉がはつね婆さんが首をくくったという。安五郎という一見実直そうな出入りして、その内、有り金をかっさらっていったというのだ。幸吉は余程このことを据えかねていたのだろう、鰻捕りの仲間を指図して安五郎を追い始めた。

釜崎弥之助は越後高田藩十五万石榊原政敦の家臣だった。三ヶ月前、国家老宇﨑信濃が剣術大会を催すと企てた。これは次男坊の宇﨑喜重郎を藩剣術指南役に就かせるための運動である。この剣術大会で釜崎弥之助は喜重郎を破り、しかも死に至らしめてしまった。そして、やむなく脱藩となる。

今津屋ではお艶の病の平癒を願って大山詣でに出かけることになった。お艶の希望でもある。お艶の身の回りの世話におこんが同行し、念のための用心にと磐根も同行することになった。

この一行を狙う輩がいる。その一人が釜崎弥之助に誘いをかけた。

旅の途中でお艶は倒れた。お艶も知っている医師の今村梧陽の世話になった。今津屋吉右衛門は今村梧陽にお艶の容態を聞いた。すると、胃の腑にしこりがあり、しかも腫瘍ではないかという。死の病に取り憑かれているのだ。そして、お艶自身もそのことに気がついているらしい。だから今回の大山詣でを希望したのだ。

吉右衛門は覚悟を決め、お艶の望み通りにさせることにした。女人禁制の大山参りも、不動前までは女も行ける。磐音はそこまでお艶を背負っていくという。

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本書について

佐伯泰英
雨降ノ山
居眠り磐音 江戸双紙6
双葉文庫 約三五五頁
江戸時代

目次

第一章 隅田川花火船
第二章 夏宵蛤町河岸
第三章 蛍火相州暮色
第四章 鈴音大山不動
第五章 送火三斉小路

登場人物

新三郎…今津屋の振場役
お兼
雷の丑松
小吉…船頭
お艶…今津屋の内儀
若狭屋利左衛門…乾物問屋
大蛇の黒三郎
速水左近…御側衆
北尾重政…絵師
安五郎
釜崎弥之助
伊東八十吉
今村梧陽…医師
赤木儀左衛門…お艶の兄
中津川の愛吉
弓場播磨守雪岳…旗本
宇野源平…用人
荒木応助
津田石見守定鉦…御書院御番頭

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町
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