佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第13巻 残花ノ庭」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十三弾。

なんとも盛りだくさんの内容である。

まず、徳川家治の養女・種姫の麻疹を巡り、御城(江戸城)内での権力闘争が表面化する。それに桂川国瑞や速見左近が巻き込まれる。

この権力闘争の背後にいるのは田沼意次であり、今後このシリーズでどのような関わり方をするのか注目である。このシリーズでの田沼意次は悪役になりそうだ。

次に、各美女達の身辺の変化である。おこんにはお見合いの話があるがどうなるのか。そして、磐音に惚れ込んでいる織田桜子にも変化があるようだ。

身辺の変化といえば、幸吉の幼馴染おそめが奉公にでる。最終的な奉公先が決まるまでは、しばらくは今津屋で奉公となりそうだ。

身辺の変化というわけではないが、豊後関前藩に再び暗雲が立ちこめ始めている。江戸家老・福坂利高が関前藩にとって獅子身中の虫となりそうな気配である。磐音の父・正睦が覚悟をもって上府してきたのは、この利高との対決もあるようだ。一波乱は間違いない。

可愛らしいのは、正睦が上府するときいて慌て狼狽するおこんである。その心中が察せられる。

さて、だんだんと板に付いてきた磐音の台詞が「それがし、南町の同心ではございませぬ」である。これはこのシリーズの決まり台詞の一つになりそうな気配である。

内容/あらすじ/ネタバレ

坂崎磐音と幸吉は谷中日暮里の高嶋屋の隠居宅へ鰻の蒲焼きを届けに行くところである。その途中で幸吉はおそめに奉公の話が来ていることを話す。おそめの希望は職人になることだそうだ。

高嶋屋の隠居百蔵のところにつくと、なにやら様子がおかしい。どうやら隠居を脅しに来ている輩がいるようだ。脅しの内容は、隠居の倅が茶屋の女将に手を出したとか。美人局のような脅しである。

このことはすぐに地蔵の竹蔵と南町奉行所定廻り同心の木下一郎太に知らせた。

帰りに今津屋によると、今津屋吉右衛門が用があるという。吉右衛門は勘定奉行の太田播磨守正房に呼ばれて御城に行ってきていた。日光社参の費用に関する相談である。

結局のところ、幕府の金蔵はすっからかんのため、商人から金を借りることになるのだが、その金を融通するに当たって条件を付けてきたという。その条件の一つに磐音を今津屋の後見として同行させることである。

美人局の一件、他に起きていたものを真似したものらしい。本星は淡賀佐井蔵と名乗る麹町の武具屋だそうだ。調べていくうちに、この仲間の一人が佐々木道場に関係のある人物のようだ。

おこんのお見合いが近々本決まりになったようだ。だが、本人には知らせていない。一抹の寂しさを感じていると、織田桜子が訪ねてきた。どうやら、こちらも何やら身の上の変化があるらしい。

それとは別に、桜子は将軍家治の養女・種姫が麻疹で臥せっているという話を聞かせてくれた。

おそめが磐音に相談をしたいといってきた。奉公の話である。おそめは上絵師か縫箔屋になれないだろうかという。このあたりは今津屋に相談すればよいことである。問題はおそめの父親のようだ。

江戸では阿蘭陀商館長フェイト一行の到着が噂に流れていた。

その中で、おそめが行方不明になったと幸吉が駆け込んできた。おそめの父・兼吉もいなくなったらしい。磐音は地蔵の竹蔵に使いを出し、自らは吉原の四郎兵衛会所を訪ねた。その一方で絵師・北尾重政が使いをよこしてきた。

磐音の父・坂崎正睦が上府するとの知らせがきた。中居半蔵の手紙には、なにやら極秘の任務を負うてくる書かれている。いったい何のことだろうか。

さて、種姫の病状に絡んで、御城では丁々発止やりあっているようだ。苦労しているのは桂川国瑞である。その相手となっているのが、漢方医の御典医池原雲伯である。池原の後ろには田沼意次がついている。その分、桂川は苦労を強いられることになる。

本書について

佐伯泰英
残花ノ庭
居眠り磐音 江戸双紙13
双葉文庫 約三五五頁
江戸時代

目次

第一章 花びら勝負
第二章 おそめの危難
第三章 夜半の待ち伏せ
第四章 正睦の上府
第五章 カピタン拝謁

登場人物

百蔵…高嶋屋の隠居
立田川の寅太郎
淡賀佐井蔵
雑色右馬之助
おねこ
太田播磨守正房…勘定奉行
おそめ
兼吉…おそめの父
違櫂の勘助
菅沼資寅(梅翁)
江三郎親方
池原雲伯…漢方医
林市太郎助
寿福寺兆竿
フェイト…阿蘭陀商館長
ツェンベリー…蘭医
伊藤忠伍…豊後関前藩士
種姫…徳川家治の養女

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町
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