ここでは個人的にNHKの大河ドラマで取り上げてほしい人物やテーマなどをつらつらと書いています。(※随時更新します)
個人の好みのせいで、どうしても戦国時代に偏ってしまいます…。
上泉伊勢守
NHKの大河ドラマで是非取り上げて欲しい人物です。
歴史上、剣聖と呼べる人物は多くありません。
しかも、そのほとんどは孤高の人であり、本人の剣名は高くとも、後進が育つことがありませんでした。
そうした中、上泉伊勢守は現在にも連なる剣の流派を残してくれた人物であり、他派への影響というものを考えれば、『唯一の剣聖』と言ってよい人物です。
単なる武芸者ではなく、その前半生は武将・城主としての活躍もあります。
上州(現在の群馬県)の大胡の城主であり、長野業政と強い結びつきを持ちながら、領地を守っていまぢた。
ですが、北条氏康、武田信玄、上杉謙信といった若い武将の出現とともに、城主は合戦の中心になり、上泉伊勢守も苦戦を強いられるようになります。
一度は大胡城を捨てざるを得ない羽目になり、城を明け渡すことになりますが、これを取り戻す時に単身一騎で殴り込みをかけています。そのすさまじさに「上州一本槍」の異名をとりました。
ですが、この後に長野業政が死んで、周辺の小豪族が武田の軍門に下ることになって、上泉家も武田家の軍門に下ることになります。
この時に上泉伊勢守は一介の武芸者として生きることを決め、上泉家の家督を譲ることになります。
武田信玄に拝謁して、他家に仕官しない約束と、信玄から一字をもらい信綱に名を改め、まさに新たな人生の出発となります。ここから『剣聖』上泉伊勢守になるのです。
上泉伊勢守は若いときに鹿島(現在の茨城県)で松本備前守政信から鹿島神道流を学んでいます。塚原ト伝との接点もあったようです。
その後、愛洲移香斎久忠から陰流の教えを受け、自らの中で昇華して流派を「新陰流」と名付けます。
新たな人生を歩み始めた上泉伊勢守には有名な剣客が弟子となっています。基本的に弟子の流派には「陰」か「影」の名が付きます。
- 柳生石舟斎宗厳:柳生新陰流
- 疋田文五郎景兼(虎伯):疋田陰流
- 神後伊豆守宗治(意伯):神陰流
- 松田織部助清栄:松田方新陰流
- 丸目蔵人佐長恵:タイ捨流
- 奥山休賀斎公重:神影流
- 宝蔵院覚禅房胤榮:宝蔵院流槍術 など
後半生に関してはよく分からない部分があるらしいですが、その頃の逸話として有名なものとして、農家に人質を盾に立て籠った盗賊を、握り飯で誘い出して捕まえるというものがあります。
黒澤明監督の「七人の侍」のワンシーンとして記憶している人もいるでしょう。これは上泉伊勢守の逸話です。
そもそも「七人の侍」の勘兵衛のモデルが上泉伊勢守なのですから、ぴったりの逸話を映画に入れただけの話です。
このように上泉伊勢守は前半生と後半生という違った人生を送った人物であり、そのそれぞれの時点で多彩な人間との関係のあった人物です。
原作としては海道龍一朗「真剣」、池波正太郎「剣の天地」などがあります。
【済】真田一族(→2016年ドラマ化)
真田昌幸、信幸、幸村の親子。特に幸村は人気が高いのでドラマ化したら、人気が出そうです。
原作となる作品は多いですが、ここはやはり池波正太郎の「真田太平記」を推したいです。これに「獅子」を加えれば完璧といったところです。
「真田太平記」は昌幸、幸村よりというよりは、信幸への作者の目が温かい作品です。この「真田太平記」のエピローグ的なものが「獅子」であり、主人公は晩年の信幸です。
ここでの信幸はさすがに真田昌幸の息子というべき働きを見せます。
この「真田太平記」と「獅子」をあわせてこそ、真田一族の物語となります。
本来ならば、昌幸の父・幸隆から描けば完璧ですが、そんな本はなさそうなので、この二作品を原作にして真田家をドラマ化してはどうでしょうか?
真田一家に関してはクダクダと言いません。
いまなら絶対に人気の出る大河ドラマになるのは請け合います。
池波正太郎「真田太平記」は一巻から十二巻まであります。
後北条氏(北条早雲~北条氏康)
大河ドラマで戦国時代の関東出身の大名や武将をあつかったことがありません。
戦国時代の関東といえば後北条家。
初代の伊勢宗瑞(=北条早雲)から三代目の北条氏康までを扱ってほしいです。
北条早雲については、漫画ですが、ゆうきまさみ氏による「新九郎、奔る!」がおススメです。
最新の研究成果を踏まえて物語が構成されています。
北条氏康は武田信玄、今川義元との三国同盟を果たして、関東での勢力を広げていきます。
配下には猛将で知られる「地黄八幡」の北条綱成がいます。
上州を舞台にしては、北の長尾景虎(=上杉謙信)との合戦もあり、一時期はその軍勢に小田原城が囲まれ、窮地に陥ります。
息子・氏政が食事の際に二度汁をかけたのを見て、「毎日の食事にもかかわらず、飯にかける汁の量も量れないとは、北条家もわが代で終わりか」と嘆息した逸話があります。
このように逸話にも事を書かない人物であり、また、戦国時代を通して有数の民政家でもありました。人によっては戦国随一ともいわれるようです。
ただし、原作が乏しいのが欠点です。現役の作家ですぐに思い当たるのは海道龍一朗「後北條龍虎伝」しかありません。
細川藤孝
文武両道というのを地でいくような武人です。そういう意味では2009年NHK大河ドラマの主人公となる直江兼続と同類といえるかもしれませんが、こちらの方が格が上です。
足利十三代将軍義輝の兄ともいわれる細川藤孝。その義輝を支えたのが藤孝でもありました。義輝亡き後、義昭を還俗させ担ぎ出したのも藤孝らです。
若い頃の逸話として、突進する牛の角をつかみ、投げ飛ばしたといいます。怪力の持ち主であったようです。
その一方、歌自体は決して上手くはなかったようですが、古今伝授を受けるほどの教養も身につけていました。
教養の高さと家柄から、信長、秀吉と主君を変えつつも独自の存在感をはなちます。信長時代には、同じように、教養の高さから重宝された明智光秀とは親交があつかったといいます。
ですが、よりしたたかだったのは細川藤孝の方であり、明智光秀に味方しませんでした。
教養だけではなく、権謀術数にもたけ、時の権力者を敏感にかぎ取る能力に秀でていたようです。明智光秀に味方しなかったのは、そうした嗅覚が働いたのでしょう。
豊臣政権下でも、地場を上手く固め、その後、徳川家康に権力が移っても所領を減らすことがありませんでした。それどころか、かえって所領を増やすことになり、息子・忠興の代には肥後五十四石の領主となっています。
藤孝の晩年は、京で悠々自適の生活を送っていたようです。息子・忠興も父の訓戒を受け育ち、父以上の老獪さを見せていたので、安心して隠居していたのでしょうか?
原作としては佐藤雅美「幽斎玄旨」があります。
他にも安部龍太郎「関ヶ原連判状」があります。
【済】黒田官兵衛(→2014年ドラマ化)
豊臣秀吉の懐刀。軍師として竹中半兵衛と比べられる人物です。
黒田家の家系は大体において信用できるらしく、近江源氏佐々木氏の庶流だったようです。江州伊香郡黒田郷に居住したので黒田の苗字としています。
黒田家がおそろしく貧乏をしている時期がありました。如水の祖父の時代で、目薬売りをしていたといいます。
ですが、これで財をなし、黒田家が復興します。やがて地場での勢力が高まると、小寺家に帰服することになります。
如水は父・職隆、祖父・重隆の豊かな愛情のもとに育てられたようです。そして、幼い頃から賢く鋭い子で、これが彼の生涯の特質ともなります。
元服して官兵衛と名乗りますが、初陣以来官兵衛は幾度も戦場に出て、巧妙な作戦を立て、自ら槍をふるっての功名は一度もありません。すべて采配をとっての働きです。終生そうでした。
武人というより、軍師としての評価が高いのも当然です。秀吉もこの系統です。
官兵衛の身に不幸が落ちてきたのは、荒木村重が信長に謀反したときです。
この時、囚われ、一年の後に開放されたときには、肉が落ち、骨が枯れ、全身虱と蚊に食われ、そのあとが瘡となり満身をおおっていました。瘡は頭と膝にひどく、頭はジャリ禿になり、膝は曲がったままついに伸びなかったそうです。この瘡は唐瘡であったというから梅毒性のものです。
ともかくも、救出され秀吉のもとで働くことになります。
秀吉が天下を取ってからは、疎んじられたように見えますが、これは秀吉の昔からの部下も同様であり、ただ単に時代が武将の時代から官僚の時代へと移り変わったことにともなうもので仕方のないことでした。
この時期は比較的おとなしく過ごしていますが、むくむくともたげる野心が噴出するのは、関ヶ原の合戦の時です。
名は黒田如水とすでにかわっており、隠居もしていましたが、家康に代わって西軍についた九州の諸大名を鎮圧するという、名目で九州を平定しかけています。
これがなされなかったのは、関ヶ原の合戦が1日で終わってしまったからであり、如水にとっては残念なことだったに違いありません。
戦国武将らしくギラギラとした野心を隠そうとしなかった黒田官兵衛は、様々な作家が描いています。魅力ある人物であるのは確かです。
原作としては吉川英治「黒田如水」などがある。
柳生3代(柳生石舟斎、柳生宗矩、柳生宗冬)
剣豪一族であり、かずかずの伝奇ものの主役、準主役、黒幕、悪役・・・となっている一族です。
- 上泉信綱から新陰流を相伝された柳生宗厳(石舟斎)。
- その息子、柳生宗矩から台頭し始める柳生一族。
- 宗矩の子ら(柳生十兵衛、宗冬、列堂義仙の兄弟たち)
魅力的な人物がそろっています。真田一族と同じくらい面白いです。
ですが、あまりにも伝奇的な色彩が強いので、そこをどのようにアレンジするかが課題と言えます。
北方太平記(北方謙三氏による南北朝もの)
原作でオススメなのが、北方謙三氏の南北朝もの。まさに「大河」にふさわしい作品群です。
それぞれの原作をミックスして、時代の混沌とした姿を描ければ、これはとんでもないドラマになります。
撮影は大変ですが、東北から九州まで、幅広い地域を舞台にすることができます。