記事内に広告が含まれています。

佐藤賢一の「傭兵ピエール」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約5分で読めます。
スポンサーリンク

覚書/感想/コメント

史的な事実に即して書かれている部分だけを要約してみた。また、前半のハイライトの一つとしてシャルル七世の戴冠式があるので、きりがよかったのも一つにある。

だが、本書の話はこの後から本格的に始まる。

いわゆる”もし”の世界史であり、佐藤賢一の想像力は縦横無尽である。物語は意外な結末を迎えるものである。どのようになるのかは、是非本書を読んでご確認頂きたい。

話の骨格となるのは英仏百年戦争である。本書に登場するジャンヌ・ダルクが活躍したのは、この百年戦争の末期である。そのジャンヌ・ダルクを主役クラスの一人にし、架空の人物ピエールを主人公としている小説である。

佐藤賢一の百年戦争を舞台にした小説は「双頭の鷲」があるため、これが二作目(書かれた順番は逆である)となる。時代区分から考えると、先ずは「双頭の鷲」から読むことをお薦めする。

英仏百年戦争の概略には「英仏百年戦争」が詳しい。

英仏百年戦争を舞台にした映画。
映画「ジャンヌ・ダルク(1999年)」
映画「タイムライン」

スポンサーリンク

内容/あらすじ/ネタバレ

ピエールは傭兵になって十年がたつ。時は乱世。フランス王国にイングランド王の侵略が行われてから、百年がたとうとしている。後に百年戦争とよばれる戦いである。

ピエールはかつて名誉ある軍旗持ち騎士の従者として戦列に加わっていた。騎士の名をアルマン・ドゥ・ラ・フルトといった。

ピエールはこのドゥ・ラ・フルトの私生児として成長してきたのだ。だが、この初陣は敗北に終わり、ドゥ・ラ・フルトと生き別れてしまった。

それ以来、ピエールは生きていくために傭兵に身をやつしてきたのだ。傭兵こそがフランスに根付く最も残虐で最悪な集団だった。だから、傭兵になってからのピエールはあらゆる悪列なことに手を染めた。

そして、そのことに何の良心の呵責を覚えることもなかった。そして、ピエールはあることをさかいにシェフ殺しのピエールと呼ばれるようになる。

今となっては注目の傭兵隊長の一人となっていた。ピエールの一隊をアンジューの一角獣という。

ピエールはこの日今ひとつ気が乗らないでいた。それも、ピエールの傭兵隊が貴族の師弟を襲った時のことを思い出したからだ。

男だと思っていた一人が女であり、これ幸いと手籠しようと思った矢先に、自分は神の遣いであり、フランスを救わなければならないというのだ。

使命があるからそれまでは処女を守らなくてはならないが、使命を果たしたら処女を捧げる。だから、今回は見逃してくれというのだ。女は名をジャンヌ・ダルクと名乗った。

ピエールの一隊はオルレアンに向かっていた。オルレアンでは方々で閲兵が行われていた。ピエールの一隊も閲兵を済まし、また、傭兵の世界での英雄であるラ・イールとも再会を果たした。

ピエールの一隊はラ・イールの部隊の下に置かれ、ピエール自身は中隊長として戦陣を指揮することになった。

オルレアンについて閲兵等の諸手続が終わったため、アンジューの一角獣の面々は街に繰り出した。傭兵の遊郭遊びである。

だが、その楽しい時間をぶち壊しにした輩がいた。ピエールは舌を鳴らしたが、なんとその相手がジャンヌ・ダルクだった。そして驚くことに、ジャンヌ・ダルクは救世主ラ・ピュセルと呼ばれる有名人だった。

そのジャンヌ・ダルクが演説をするという。演説はまさに神がかり的だった。集まった傭兵達はジャンヌ・ダルクの声に酔い、勝利を疑わなかった。

オルレアンを取り返す戦いが始まった。だが、決して楽な戦いではない。しかし、ジャンヌ・ダルクの声に励まされ、砦を一つずつ落としていくことに成功する。

そして最大の激戦、トゥーレル砦を巡る攻防が始まる。一四二九年、五月八日。ついにオルレアンは解放された。

オルレアン解放後、フランス軍はランスまで進軍し、ついに王太子シャルルは戴冠式を終え、シャルル七世として正式に即位することになった。

だが、この即位式後ジャンヌ・ダルクにあったピエールはジャンヌ・ダルクのひとみの中から光が消えているのに気が付いた。神の使命はランスの戴冠式で終わったのだ…

本書について

佐藤賢一
傭兵ピエール
集英社文庫 計約935頁
フランス15世紀

目次

一の巻、傭兵も生きていかねばならない話
 夜/出会い/朝がきて/いざ出陣
二の巻、悪辣非道の傭兵が十字軍になる話
 閲兵/父の肖像/入城/宿舎/再会/ルイーズ/救世主は女/波紋/開戦/十字軍の巷では/休日/攻防/捕虜/決戦前夜/トゥーレル決戦/オルレアン解放/燃えない連中/進軍/ランスの戴冠式/展開/サン・ドニ/ヴィベット/ラ・ピュセルがおかしい/犬の目/パリ/戦い終えて/荷造り/北風
三の巻、根無し草の傭兵が、ねぐらを得る話
 帰還/俺たちにまかせろ/作戦会議/準備万端/戦い/小さな救世主/家
四の巻、下賤の傭兵が偉大な神のご意志を全うする話
 無駄話/ふた冬がすぎて/不意の客人/北へ/ルーアン潜入/再会/司教の女/奈落/魔手/牢/鉄槌/ラ・ピュセル昇天/仮面の騎士/昔話/ジル・ドゥ・レの城/明るいきざし/秘密/怒りおさえられず/青髭/逃亡/思わぬ失敗/故郷/ソフィー/嘘/神がみえた日/ジャン/旅の終わり
五の巻、傭兵が死にかけたところで貴族になる話
 死人/トマ登る/みえたもの/襲え/急転/ヨランド・ダラゴン
六の巻、後の話
 四年がたって/ルイの話/仕事/笑み

登場人物

ジャンヌ・ダルク…救世主、ラ・ピュセル
ピエール…傭兵隊長、本名をドゥ・ラ・フルトの私生児ピエール
ジャン…シェフ代理
トマ…会計係
アンリ…馬係
ニコ…馬係の助手
オリヴィエ…馬係の助手
マルク…カワセミ・マルクの異名を持つ駿足
ロベール…托鉢修道士
ジャック…弩の名手
ギョーム…弩の名手
ガストン…弩の名手
ヴィベット
ルイーズ
ソフィー
ジロー…旅籠の親爺
マリー…旅籠の娘
ドニ
ラ・イール…傭兵隊長
アントワーヌ・ドゥ・ジャバンヌ…傭兵隊長
ジル・ドゥ・レ元帥
シャルル…王太子
ジョルジュ・ドゥ・ラ・トレムイユ…筆頭侍従官
リッシュモン大元帥
アルマン・ドゥ・ラ・フルト…大貴族
ドゥ・ラ・フルト夫人