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平岩弓枝の「平安妖異伝 第1巻」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

西域の血が混じった不思議な少年・秦真比呂と藤原道長が、平安時代を舞台に起きる様々な怪異に挑みます。

平安時代を舞台にした怪奇ものというと、陰陽師に代表されますが、本作は楽士を主人公としています。

音楽が祭礼など、神事に用いられたことを起源に持っており、かつ、古い楽器には命が宿ると信じられてきたことからも、音楽と怪異とは見事に調和するのです。

ですから楽士が主人公というのは斬新なようでいて、とても納得できる設定でした。

怪異の矛先が向けられるのは、道長の藤原一族に対するものから始まって、やがては天皇に対するものへと変化していいきます。

キーとなるのは「猨道士」「猨行者」として登場してくる「猨(えん)」でしょう。「猨」とは「猿」のことです。

物語では語られませんが、「猨」とは、「役行者(えんのぎょうじゃ)」=「役小角」を指しているのかもしれません。ちなみに、役行者は平安時代より前の、飛鳥・奈良時代の人物です。

この物語には続きがありますので、そこで語られるかもしれません。

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内容/あらすじ/ネタバレ

一条天皇の御代。永祚二年の春。

二城京極第で観桜の宴が摂政・藤原兼家によって催された。桜は五百年を超える五百桜である。

そこでの楽舞はなにかもののけに襲われたような感じになるものだった。それに気がついたのは一人だけだった。

翌日、大内楽所の楽頭をつとめる秦真倉が左大臣源雅信に呼ばれた。雅信は兼家の息子・道長の妻・倫子の父にあたる。真倉には十五歳になる真比呂という息子がいる。

真比呂は先日の異変を怪異と断じた。

このところ、摂政・藤原兼家の御殿に若く美しい女が入って行き、夜明けになって退出していくという。女は髪が銀色に輝いて見える。

兼家の息子・藤原道長は秦真比呂にどうするのかと聞いた。すると、真比呂は今晩、庭の隅で宿直をするという。道長もそうすることにした。

真比呂は五百桜の前に立ち、亀滋と名付けられた篳篥を吹いた。すると…。

道長は真比呂に琵琶の名手を探していた。中宮定子が探しているのだ。

真比呂は源頼光の姫・光子が名手だといった。光子は召しだされた。

数日後、道長は大原野神社の祭りに出かけた。そこでなかなか見事な黒毛の牛が繋がれていた。光子の牛で若狭麿と名付けられていた。

夜。道長の前に大きな男が立っていた。着ているものはすべて黒だった。突き飛ばされた道長の意識が戻ったのは夜明け前だった。

真比呂がいた。真比呂は道長が冥界に向けて飛ばされたと聞いてやってきたのだった。

道長の妻の一人明子の兄・源俊賢の家人・三宅広元が遺体で見つかった。旧西宮殿の中にあった池のほとり、槐の大木の根元だった。

しかも見つかったのは骸骨となった姿であった。せいぜい一日しかたっていないというのに…。

道長がその槐の大木のところに行った。そこで道長は不思議な世界へ連れて行かれる…。

源雅信は自分がどこを歩いているのかがわからなった。辺りが明るくなって、心配そうにのぞきこんでいるのは、婿の道長だった。

雅信は牛車に乗ったが、道長のそばで真比呂が念のために一緒した方がいいと助言した。

朝議で楽制の改革がひと段落し、楽器の再編成がおこなわれた。それ以来、怪異が起き始めた。

真比呂は道長を連れ、楽器のおさめられた蔵に向かった。真比呂は怪異といってしまうのは気の毒だといった。

兄・道隆の嫡男・伊周が近頃熱心にある女のところに通っているという。源俊賢の妹だという。

源俊賢は安和の変で失脚した源高明の子であり、妹・明子は道長の妻である。

俊賢にそのことを聞くと、そんな妹がいるとは初めて聞いたという。

その女のところには兄・道兼も通っていることが分かった。女の名を綾子という。

明るい時にその場所に行ってみると、人気がない。もしかして怪異か…。

道長は宿直だった。なんとなく催馬楽の歌詞を書きとめたりしていた。そこに倫子がやってきて、越後に行った清原時輔の話をした。

時輔は向こうで妻を見つけた。前任の国司の娘だという。

数日後、内裏で催馬楽の催しがあった。すると不思議なことにどこからともなく田中井戸が見事な声量で聞こえてきた。

その声を聞いたものは丹波貞信の声によく似ているといった。だが、その貞信はすでに盗賊に殺害されていた。

道長は兄・関白藤原道隆に随行して賀茂社に詣でた。祭事がつつがなく終わり、道長の前に真比呂が座った。

翌日、道長は鹿ヶ谷に向かった。

いつのまにか牛車の中に子犬がうずくまっていた。黄色のふさふさした巻き毛の愛らしい犬だ。

そのまま道長は大木成の法師の御堂に向かった。すると、道長の耳の中でしゃがれた声が響きだした。我を内裏に案内せよ…。

犬は狛麿と名付けられた。

冬眠しているはずの蟇蛙の口から白っぽい水のようなものが吹きかけられた。それを浴びた伶人は腹が蛙のように膨らみ、二日間苦しんで死んだ。

同じことが続いた。

安南人・洪青は二十余年の歳月を費やしてようやく四天王寺にたどりついた。その洪青を蟇が飲み込んでしまった…。

洪青の噂を道長が聞きつけた。対面してみようと思った。

その年の暮れ、内裏の後宮で怪異が現れた。

新年、内裏では様々な行事が続く。

河内に西唐寺がある。そこから出火し、蔵が一つだけ焼け残った。中には巨大な太鼓が入っていた。

不思議なことに、どう打っても鳴らない太鼓だった。藤原道隆は不機嫌になった。そして打ち鳴らしたものに褒美を与えるといった。

それを聞いた一人の行者が太鼓を見事に鳴らした…。

太鼓は鳴り続いた。誰も打っていないというのに。

正月十六日、内裏で踏歌節会が催された。

源俊賢が道長に相談があると連れ出した。亡き父が寵愛した女が北山の奥に住んでいるという。源高明が死んでから十年はたっている。

実は住んでいたのはその娘だったという。つまり俊賢の妹になるのだが、どうしていいか途方に暮れているのだ。

本書について

平岩弓枝
平安妖異伝1
新潮文庫 約三五五頁

目次

花と楽人
源頼光の姫
樹下美人
孔雀に乗った女
狛笛を吹く女
催馬楽を歌う男
狛麿の鼓
春の館

登場人物

秦真比呂
藤原道長
明子
倫子
遠野則光
秦真倉
秦真冬
秦真忠
源雅信…左大臣
源俊賢
源高明
藤原兼家
藤原道隆
藤原伊周
藤原道兼
源頼光
光子
猨道士
藤原公任
綾子
清原時輔
丹波貞信
大木成の法師
洪青