司馬遼太郎の「竜馬がゆく」第2巻の感想とあらすじは?

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第二巻では坂本龍馬二十四歳から脱藩するまでの二十九歳までを描いています。

この「竜馬がゆく」は単行本五冊、文庫八冊です。ここで取り上げているのは文庫版であるため、単行本との話しの流れが若干異なることになります。

世の中はアメリカとの通商条約問題に絡んでの開国と攘夷、幕府と朝廷、将軍の後嗣問題と大騒動が持ち上がっている時期です。

そしてこの後には安政の大獄が始まり、そして井伊直弼が桜田門外で暗殺されるという未曾有の事態が発生します。

幕府の維新が一気に地に堕ちた瞬間で、以後、各藩勤王派の若者たちの幕府軽視が一挙に広まりました。

まさに幕末動乱の時代へと突き進むのです。

江戸には若い論客の巣窟が三つあったといいます。

  1. 神田お玉が池・桶町の千葉道場:塾頭坂本竜馬
  2. 麹町の神道無念流の斎藤弥九郎道場:塾頭桂小五郎
  3. 京橋アサリ河岸の桃井春蔵道場:塾頭武市半平太

いずれもが剣術道場であり、幕末の三大流派の道場です。そしてその塾頭を務めたのが奇しくも回天の志士たちでした。

この頃には既に倒幕の立役者となった西郷隆盛や桂小五郎らは活発な動きを始めています。

ですが、もう一人の倒幕の立役者である坂本龍馬は何もしていません。司馬遼太郎氏に言わせれば、前の二人は既に舞台に上がっているのに、龍馬だけは舞台にも上がっていないということになります。

ですが、その龍馬も本書の最後で土佐藩を脱藩します。

土佐という狭い所には合わない男が、そして当時の常識を遙かに超えた所で生きた男が、いよいよ世に出ます。

小説(文庫全8巻)

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内容/あらすじ/ネタバレ

安政五年。竜馬二十四歳。

今年早々から千葉重太郎は因州鳥取池田藩の剣術指南役になることになっていた。一方で竜馬は今年の秋に帰国する。藩で許されている江戸留学期限が切れるからだ。

外国からの圧迫が強くなるに連れ、諸藩は有為の者を江戸に集めて武芸、学問をさせていた。その傾向は長州と土佐に強い。

その土佐において、武市半平太は秀才の代表、竜馬は鈍才の憧れであった。そしていつの間にか「武市党」というべきものが出来つつある。竜馬は違っていた。

安芸郡北川郷の大庄屋のせがれで中岡慎太郎というのがやってきた。理屈っぽいというものではない。理屈が人の皮を来て歩いているような男だった。

この中岡と武市は竜馬を仕込もうと考えた。武市の教育壁である。あれだけの男を仕込めば、土佐藩だけでなく、天下の大物になる。

武市のような鋭敏な男にとって、うすらぼんやりしている竜馬は謎だったに違いない。この頃、維新の元勲といわれる西郷隆盛や桂小五郎らはすでに活躍を始めている。

当時の日本の政界、論壇は開国と攘夷、幕府と朝廷、将軍継嗣問題などで割れるような大騒ぎだったのである。

その中で、何もしていないのは竜馬だけだった。時代は動いているが、二十四歳の竜馬だけは動いていなかった。

武市は時勢を竜馬に教えた。
アメリカからハリスという男がやってきた件、そのハリスの強談に屈して昨年に通商条約の協議が終わり勅許を松だけになっていること、などなど。

武市は月に二、三度は桶町千葉道場にやってきて竜馬を教育した。

安政五年四月。井伊直弼が大老になって、勅許を得ずに調印した。尊王攘夷論が燃え上がる瞬間である。

その後、安政の大獄が始まる。竜馬は帰国の途につこうとしていた。

竜馬は無銭旅行で帰ろうと考えていた。この竜馬を寝待ノ藤兵衛が追いかけてきた。
途中で二人は京訛りの武士と一緒になる。内大臣三条実万の家臣で水原播磨介と名乗った。三条家と土佐の山内家は姻戚である。田鶴が奉公している家でもある。

水原は京まで竜馬たちに守ってもらうつもりでいるようだ。そして水原を追いかけてきた者達がいる。
水原は万が一に備え、竜馬に水戸家から三条家への密書を渡した。そして水原の予感通り、水原は捕らえられてしまう。

京に入った竜馬は水原から預かっている密書をどのように渡そうかと苦慮している。三条家には田鶴がいるが、会うのが難しい。そこで寝待ノ藤兵衛の盗技に頼ることにした。

この寝待ノ藤兵衛に目をつけたのが猿の文吉といわれた目明しである。

竜馬は水原播磨介の捕らえられた時の態度を見て、男はあれだと思った。この感激から尊王回天の運動に入ったといっていい。

竜馬は寝待ノ藤兵衛とわかれて土佐に帰った。江戸出発以来二度目の帰国である。

北辰一刀流千葉門の免許皆伝を得て帰ってきたのだ。城下では大変な人気である。
武市半平太も帰国しており、「瑞山塾」を開いていた。

帰国した竜馬は学問をしようと考えていた。そのことを武市に相談した。武市は、ほどほどにしろといった。そうでないと、竜馬の生まれつきの珍しさが学問で薄れるかもしれない。竜馬の考えや行動は独創的なのだ。

また、洋学も学ばなければと思った。そのために絵師の河田小竜老人を訪ねた。ここには饅頭屋の倅で後に上杉宋次郎または近藤長次郎と名乗ることになる海援隊士の若者がいた。小竜老人からは海外の新知識を聞いた。

これとは別に竜馬は蘭学者の講義も聴いていた。気に入っていたのは法律概論の書を使っていた点である。そのため、オランダに議会というものがあり、剣法があるということを知った。これは竜馬にとって大驚異であった。

三月四日。
城下がひっくり返るような刃傷事件が起きた。上士の山田広衛が若い郷士の中平忠一郎を斬り、その山田広衛を中平の実兄・池田寅之進が斬ったのだ。

土佐郷士たちの不満が爆発しようとしていた。竜馬は郷士の代表として仲裁に乗り出すことになった。

万延元年。竜馬二十六歳。
大老井伊直弼が桜田門外で暗殺された。ありうべきことではない。これを聞いた竜馬は大変な世の中になるぞと思った。

武市半平太は剣術詮議の名目で江戸に立つと言った。江戸には薩摩、長州、水戸の錚々たる若い連中が集まっている。その動静を探り、土佐の今後の行く先を考えなければならない。

武市の不在中、本町筋一丁目の坂本屋敷が土佐七郡の若者の集会所になった。

この頃には、大公儀と呼んでいたのが単に幕府になり、御老中が単に老中、大樹が将軍と呼び捨てにされるようになっている。桜田門外の変以降、意識がそれほどまでに変わったのだ。

こうした中、水戸藩士の住谷寅之助と大胡聿蔵が土佐を訪ねてきた。

文久元年八月。武市半平太が江戸から戻ってきた。武市家は白札である。上士と郷士の間のような身分で、殿様にお目見えできる。

武市は薩長土の有志で倒幕実施を計画してきた。実施は明年。それまでに自藩に戻り重役を説き、藩主を説き、藩論を勤皇倒幕へまとめる事が決まっていた。

そのために武市は土佐勤王党を作ることにした。首領は武市である。竜馬も参加した。

こうした動きを探っているのが岩崎弥太郎だった。弥太郎は竜馬から聞き出そうとしたが、どうも竜馬が苦手である。

那須信吾が同志を代表して参政・吉田東洋を斬ると言った。それを武市半平太は黙認した。そのことを竜馬は感心しなかった。

竜馬は藩体制を崩さねば事が出来ぬと思っている。例え吉田東洋を排除できても、殿様がその上にいる。その意向でいっぺんに崩れてしまう。しまいには殿様まで殺さなければならなくなる。

竜馬は讃州丸亀城下に剣術詮議のために旅行に出かけた。表向きは剣術詮議だが、真の目的は丸亀から長州に飛び、萩城下で長州の勤王党の連中と会い、藩の討幕運動の実際を見ることであった。

竜馬が萩に入ったのは正月の十四日だった。久坂玄瑞を訪ねた。この年二十三歳。竜馬より五歳年下である。

それがいきなり、だめだ、長州はもう駄目だ、という。そして薩摩藩もだめらしいといった。

久坂は三藩密約が危機に瀕している時に武市半平太は妙な奴を寄こしたと思っていた。一方で竜馬も久坂に失望していた。錐のような鋭い男だが、ただそれだけである。

久坂が奸物という長井雅楽の意見は、幕府を助けて多いに開国主義を採り、西洋の文物を取り入れて、船を盛んに造って国を富ませた後に日本の武威を張るというものである。

竜馬はその通りではないかと思う。

ただ、幕府を助けてというのがいけない。竜馬は一にも二にも倒幕論者である。幕府どころか薩長土をはじめ三百諸侯を潰して日本を一本にしたい。そのための中心に天皇を置く。それが竜馬の尊王であった。武市には叱られるかもしれないが、当今流行の宗教的な天皇好きではなかった。

竜馬は土佐と長州では状況が違うと認識していた。長州の勤王派はみな上士階級に属している。それに身分の低い者にしても、土佐ほど階級にうるさい藩ではない。

その土佐では吉田東洋を襲うための計画が着々と進んでいた。竜馬は武市はいよいよやるかと思っていた。

実行したのは那須信吾、安岡嘉助、大石団蔵であった。

薩摩の島津久光が兵を率いて上洛するという話しが伝わってきた。伝えてきたのは吉村寅太郎である。

この吉村と武市は袂を分かつことになる。武市は吉村ほどの人物が土佐を脱藩して愚にもつかぬ義挙に加わることを惜しみ、吉村は武市を脱藩させたがっていた。

竜馬が脱藩した。このため、竜馬の姉である乙女は岡上家を去り、もう一人の姉・お栄は自害に追いこんでいる。

竜馬が脱藩したのは吉田東洋が暗殺される十四日前のことであった。脱藩の手引きをしたのは沢村惣之丞だった。

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本書について

司馬遼太郎
竜馬がゆく2
文春文庫 約四四〇頁
江戸幕末

目次

若者たち
旅と剣
京日記
風雲前夜
待宵月
頑固家老
萩へ
希望
土佐の風雲
脱藩

登場人物

坂本竜馬
武市半平太
富子…武市の女房
中岡慎太郎
岡田以蔵…土佐の足軽
河田小竜…絵師
長次郎…後の上杉宋次郎、近藤長次郎
馬之助…焼継屋、後の新宮馬之助
池内蔵太
那須信吾
間崎哲馬
平井収二郎
土方楠左衛門
吉村寅太郎
沢村惣之丞
中平忠一郎
池田寅之進…中平の実兄
山田広衛
乾退助…後の板垣退助
福岡田鶴
水原播磨介
お登勢…寺田屋の女将
千葉貞吉
千葉重太郎…貞吉の息子
お八寸…重太郎の内儀
千葉さな子…貞吉の娘
久坂玄瑞
桂小五郎
岩崎弥太郎
吉田東洋
鹿田伝兵衛…竜馬の兄弟子
渡辺金三郎…京都西町奉行所与力
猿の文吉…目明し
お初
松木善十郎
寝待ノ藤兵衛…泥棒
赤蔵
坂本乙女…竜馬の姉、坂本家三女
坂本権平…竜馬の兄、坂本家嫡男
春猪…龍馬の姪、権平の娘
源爺ちゃん
お美以…下の才谷屋の娘

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