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宮城谷昌光「玉人」の感想とあらすじは?

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覚書/感想/コメント

6つの短編からなる短編集です。恋物語が中心です。

文庫の解説をしている宮部みゆき氏は、6作品にそれぞれミステリーの要素があると書いています。

宮部みゆき氏によると、「雨」はヒュー・ウォルポールの「銀の仮面」を連想させ、「風と白猿」は宮城谷版シャーロック・ホームズ、「桃中図」はポーの「黄金虫」、「歳月」は暗号ミステリーになります。

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内容/あらすじ/ネタバレ

叔孫豹は兄の討手恐れていた。従者は70人ほどいた。

雨にうたれての亡命だった。行き先は斉である。

叔孫豹には2人の兄がいる。長兄が魯の名門である叔孫家の当主だった。

合性が悪い。思想の対立もある。豹は礼を重んじるが、兄の叔孫僑如は武を尊び、叔孫家だけが繁栄すれば良いと思っている。

魯の桓公が3つの家を建てた。仲(孟)孫家、叔孫家、季孫家である。魯の宰相にあたる上卿ほとんどは季孫家からである。仲孫家と叔孫家は次卿が多く、魯は3家で運営され、君主には実権はなかった。

兄の叔孫僑如は魯の実権を一手に握りたいらしい。

亡命の道中は杜洩に任せていた。この年は孔子が生まれるおよそ35年前だった。

女に出会って、一晩の雨宿りをお願いした。叔孫豹は初めて他人の同情を受けた。そう思った途端に張ってきた肩や肘が落ちた。

叔孫豹が斉に入ると宰相の国佐邸へ向かった。国佐はすぐに叔孫豹の保証人になり、妻を与えた。

叔孫豹は夢を見た。夢で牛という名の男が己を助けてくれた。

魯の政争に兄の叔孫僑如が敗れて斉に亡命してきた。

叔孫豹は魯へ戻った。魯で絶えかけた家を興すことは難しかったが、叔孫豹は往時の威勢を取り戻した。

かつて亡命の途中で出会った女が訪ねてきた。子を連れてきたという。少年は夢で見た牛だった。

晩年になり、叔孫豹は満足していたが、季札が不吉なことを言った。

叔孫豹は牛をそばに置いて可愛がっていたが…

疾の前にいる子朝は天下の美男子だった。

疾は南子と子朝を恐れていたが、その子朝が近づいてきたのだ。

子朝の娘を娶ってほしいと言うのだ。疾の足が凍りついたようになった。

断ったらどうなるか…、ゾッとした。疾は妻と離別することにした。

疾の臣下だった者が外州に空き家を持っていた。そこに妻と侍女を移した。

そうしてから子朝の娘を妻として向かい入れた。妻は妹を連れてきた。娣という。

3年が経ち、外州に移した前妻をたちを訪ねた。

政争で子朝が敗れた。宰相になった孔圉が子朝の娘と離別して、己の娘と娶れと迫ってきた。

疾は娣との別れを惜しんだ。そして別邸に移した。

新しい妻に疾は興味を覚えなかった。そして頻繁に元妻たちを訪ねた。それを知った妻は父の孔圉に告げた。

孔圉は思案した。衛に孔丘(孔子)が住んでいる。孔丘が頷いてくれれば疾を殺しても非はない。だが、孔丘は逃げ、孔圉の考えを知った疾は宋へ亡命した。

しかし、宋で疾は政争に巻き込まれ、衛へ戻った。君主が荘公にかわり、孔圉も亡くなっていた。

風と白猿

斉は威王の代に飛躍的に国力が増大するが、原々斎が臨淄に居を構えたのはまさに威王の時代だった。原々斎は謎の人物であった。

ある夜、李奄に連れられて田肦将軍が忍びで訪ねてきた。原々斎はすぐさま田肦将軍であることを見抜いた。

田肦将軍が原々斎を訪ねてきたのは妻が消えたからであった。二十日前のことである。

その日、威王が田肦将軍を訪ねる予定の日だった。だが、大風だったので、ご来駕は取りやめとなった。知らせてきたのは宰相の鄒忌だった。

鄒忌は斉で一、二を争う美男だった。それが事件の当日に田肦邸を訪れている。原々斎はその事実にこだわりをみせた。

原々斎は弟子の滑斗と盾屯に、今年になってから女のゆくえが分からなくなった家がないか調べさせた。そして、姚も田肦邸に赴かせた。

あの日、窓の近くで白く光る大きなものが風に乗るように急上昇したことがわかった。そして、その現場に毛が残されていた。

同じ毛が三か月ほど前に娘が消えた商家からも見つかっている。その時も大風が吹いていた。

原々斎は娘をさらった者が分かっていた。白猿である。

事件は毎年晩春から夏の間に起こっていた。

桃中図

15歳の李秀は病弱だった。

この日、庭の土塀を崩していた。隣の家の者が、こちらの家に入ってきてしまう。李秀は隣の家にどのような人が住んでいるか知らなかった。

客が来た。司馬遷である。隣家を買収して、家を取り壊していたところ、壁から書物が出てきた。今の皇帝は劉邦の曾孫にあたる武帝である。司馬遷は壁から出てきた書物を読みふけったそうだ。

隣家に桃の老木があった。その桃の木に空虚があった。そして中から地図が出てきた。

歳月

小娥の父は商人だった。盗賊が出ているという話を聞き、父の謝氏は武装した者も連れて行かなければならないと思っていた。

段居貞が良いと思った。腕がたつ上に男ぶりがよい。謝氏は段居貞に娘を貰ってもらいたいと思っていた。

段居貞と謝氏の長女との結婚がなったが、長女はほどなく亡くなってしまう。

段居貞は小娥を妻にしたいと言ってきた。段居貞は謝氏の家に入って商売を継いでも良いというのだ。

ある夜、一家で船に乗り込んでいたところ、賊に襲われた。小娥は斬りつけられ、夫や父と離ればなれになってしまった。

小娥は一人変える道すがら、父と夫の霊に会って、仇の名を知った。父を殺したのは車中猴、門東草であり、夫を殺したのは禾中走、一日夫だった。

小娥は父と夫の菩提を弔ってもらうために妙果寺をくぐり、浄悟という尼僧に面会した。

小娥が二十歳になったころ、李公佐が父と夫を殺した者の本当の名を告げた。父を殺したのは申蘭、夫を殺したのは申春だった。

小娥は仇を討つと誓って旅に出た。

玉人

崔信の家で李章武は玉でできた燭台を見ていた。燭台は戦国期のもので、千年以上前のものだった。

李章武は燭台に女の影を見た。

李章武が華州を散策するため、連日外出していると、6日目に人影を見て、なつかしさが胸にわいた。女だった。李章武は誘われるように女をつけた。

女の家は旅館ではなかったが、旅人を泊めているようである。李章武も泊まってみることにした。

そして李章武は女を自分の妻にしようと思った。李章武は女を玉人と呼んだ。

本書について

宮城谷昌光
玉人
新潮文庫 約二七〇頁

目次



風と白猿
桃中図
歳月
玉人