佐藤雅美の「縮尻鏡三郎 第2巻 首を斬られにきたの御番所」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

婿となった三九郎。これが太平楽を絵に描いたような男で、小普請入したまま就職活動に熱心でない。挙げ句の果てに色々なトラブルに巻き込まれる。隙が多すぎるのだ。

だから、娘の知穂は半分愛想を尽かしている。当然、鏡三郎としても娘夫婦のことはハラハラと心配している。

だが、鏡三郎は三九郎が嫌いでも憎いわけでもないらしい。それなりに飲み食いに誘ったりしており、かわいがっている感じでもある。

さて、この娘夫婦は今後どうなっていくのだろうか?

入れ子というものがある。旗本御家人にかぎってのことのようである。

相続権のある子供が死んだとして、死亡届を出さずに生きたままにしておく。子供を武家にしたいと思っている裕福な町人から金を受け取り、子供を受け入れることのようである。

もちろん、受け入れる子供は町人である必要はない。冷飯食いの旗本御家人の二男三男なども多かっただろう。

将軍も知っていたようで、半ば公認のようだ。十一代将軍家斉のエピソードを集めた「文恭院殿御実紀付録卷五」にある記述や勝海舟の父小吉の自伝「夢酔独言」の記述などが本文中にあり面白く読める。

江戸の料理についての記述は興味深い。

田沼時代から江戸の味文化は磨きがかかり頂点を究めた。

だが、天保の改革時の奢侈禁止令で最初の打撃を受け、安政の大地震での不況、さらに、文久期の参勤交代緩和で武家が国許に戻ったため、江戸に金が落ちなくなり不景気に追い打ちをかける。

だめ押しは、御一新後に味の分からぬ薩長の田舎侍が闊歩するようになったことだそうだ。

江戸の味文化は今に至るも復活していない。珍重されているのは、江戸に輸入された京の味文化だという。

となると、江戸の味文化がどんなものだったのか、興味津々なのは、私が食いしん坊だからだろうか?

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内容/あらすじ/ネタバレ

非番で釣りをしている拝郷鏡三郎は馴染みの旗本の隠居から変わった話を聞いた。釣り船に乗っていた客が土左衛門を釣ったというのだ。その土左衛門に手には死んでも放さなかった見事な竿が握りしめられていたそうだ。

大番屋に車力の親方・捨蔵が来て倅の六助がここに入れられているので早く出して欲しいという。虚偽を言いふらすのが度々重なるので、懲らしめのために入れられているようだ。

聞いてみると、六助はせんみつの六の渾名を持つ。信用できるのは千に三つということだ。この六助が殺しを見たという。同心の黒田幸兵衛がその手がかりを探したが、見つけられなかった。六助が嘘をついたようなのだ。

一方で、鏡三郎は隠居から聞いた土左衛門の身元を探してもらっていた。すると、金貸しの惣兵衛が消えており、惣兵衛らしいことが分かった。

年が明け、三枝能登守に呼ばれた席で、豊島屋を強請った男はどうしていると聞かれた。鏡三郎には何のことかわからない。

昨年末に五十ばかりの客が勘定を済ませて出て行き、戻ってきたと思ったら何やら探している。小判五両を入れた巾着をなくしたというのだ。

どうみても小判と縁のあるような風に見えない。ははぁ、これは強請だなと思った豊島屋は追い出し、あまりにもしつこく粘るので、御用聞きを呼んだという。それで大番屋に放り込まれているのだとか。

娘の地穂が相談があるという。婿の三九郎が毎晩酔っぱらって遅く帰って来るという。金がないはずなのに。当の三九郎に聞くと、不思議な出来事だったという。

小普請組の馴染みに御家人坂東宏三郎がいる。その坂東が会うたびに奢りだといって三九郎を誘っての酒席となった。だが、ある日店から勘定を請求された。体よく坂東にたかられたようだ。合計四十三両を超えた。

三九郎は坂東に詰め寄ったが逆に言い負かされる。その坂東が三九郎にいい手があると教えてくれた。出生届をだしておくのだという。すると、その幽霊の子供の株が売れるという。それで精算すればよいというのだ。

この話を聞き、入れ子をこまめに世話をして、半ば商売にしている朋輩がいたのを鏡三郎は思い出していた。

加賀前田家の門前で商売をしていた麹屋に移転命令が出た。だがこれに不服として北町奉行に訴えた。移転先の環境が悪く、このままでは麹屋の商売がたち行かなくなり餓死してしまうと。これを聞いた、奉行は眉をつり上げて、ならば餓死をしろといってしまう。

翌日麹屋の一人が門前に座り込みを始めた。首からぶら下げた札には、御奉行の指図により餓死するのだ、と書かれている。この清吉が大番屋に身柄を移された。

だが、鏡三郎は入牢させる理由がないとはねのけたが、結局大番屋の前を貸すことにした。清吉は頑張り、人々の噂になっていった。

ある日、羽鳥誠十郎という剣術遣いが人を殺したので、首を斬られにきたと北の当番所に現われた。

神道者という生業がある。平田恭之助もそんな一人である。裏店では吝嗇之助と呼ばれる程のケチだった。その平田恭之助が羽鳥誠十郎の道場の門を叩いた。応対に出たのは拝郷三九郎である。一体平田恭之助はなぜ入門をしたのかが分からなかった。

この平田恭之助と昔から親交のある家族に、加代、佐知の母子がいる。

三枝能登守を訪ねた時、十日ほど間に赤羽橋で起きた妻敵討ちの話となった。滅多にない事件だ。鏡三郎の耳にも入っていた。

これが正当な妻敵討ちなら、妻敵を殺した竹蔵はお咎めなしとなる。だが、竹蔵は婿で持参金を持って家に入っている。これを舅の徳兵衛は貰っていないと言い張る。となると、事件はややこしくなる。以前これに似た事件を鏡三郎は調べたことがあった。

この事件が起きた頃、鏡三郎の娘・地穂は頼りにならない夫・三九郎を見放し、手習い塾を開いて自分で稼ぐ道を選ぼうとしていた。

鏡三郎と三九郎、羽鳥誠十郎、北の臨時廻り梶川三郎兵衛とで高級料理屋八百善で食事をした。食べきれないほど食べて帰ろうとすると、店は二十両の釣りを寄こした。

八百善で食べたのは三枝能登守が料理切手をくれたからなのだが、とすると、あの料理切手は五十両はしたのかも知れない。これはまずいとおもい、鏡三郎は釣り銭と供にことの次第を三枝能登守に報告しにいった。

後日、鏡三郎のところに越前鶴浜酒井右近将監の家来・飯山助左衛門という者がきた。

本書について

佐藤雅美
首を斬られにきたの御番所 縮尻鏡三郎2
文春文庫 約三二五頁
江戸時代

目次

天に口無し
護持院ガ原逢魔が時の大捕物
舞う桜
首を斬られにきたの御番所
吝嗇之助は吝嗇之助
妲己のおせん
いまどき流行らぬ忠義の臣
春を呼び込むか、百日の押込

登場人物

拝郷鏡三郎…大番屋元締
おりん…矢車屋の女主人
拝郷三九郎…婿
知穂…鏡三郎の娘
嘉助…下男
(大番書)
佐吉…書役小頭
三枝能登守…公事方勘定奉行
於柚…三枝の奥方
秋山半四郎…北の吟味方与力
梶川三郎兵衛…北の臨時廻り
捨蔵
六助…捨蔵の倅
黒田幸兵衛…南の定廻り同心
勘八…岡っ引き
惣兵衛…金貸し
政次郎
徳兵衛…釣竿屋
仁兵衛…青物の振り売り
おとよ…娘
瀬兵衛…家主
北村忠右衛門…南の臨時廻り
仙造…御用聞き
安兵衛…豊島屋の番頭
疾風の千次…巾着斬り
坂東宏三郎…御家人
田川栄之助
篠原主計頭…北町奉行
清吉…麹屋
秋山半四郎…北の吟味方与力
羽鳥誠十郎…剣術遣い
島田虎次郎
平田恭之助…浪人
加代
佐知
高野小太郎
竹蔵
徳兵衛…酒屋兼銭屋
おせん
鞠川秀之進
飯山助左衛門
山野越前守

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