佐藤雅美の「啓順地獄旅」啓順2を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

聖天松の倅を殺したとして、聖天松に追われる啓順。

本当は逃げる必要はなくなっているのだが、真犯人が死んでしまったために申し開きが出来ない。好まずと逃げるしかない。

今回はそうした啓順に大八木長庵が手をさしのべるところから始まる。手をさしのべるといっても、啓順をこき使うだけなのだが…

その大八木長庵が啓順に命じるのが、「医心方」という医学書を見つけ出せということである。これが今回の物語の大きな筋の一つである。
和気清麻呂の末裔、半井氏。曲直瀬道三の末裔、今大路氏。中国後漢の霊帝にいきつくというわれる多紀家。

この多紀家にとって、二百年に及ぶ半井氏への怨念がある。それは、多紀氏の先祖である丹波康頼が述べた全三十巻からなる一大医学全書で、円融天皇天元五年(九八二)に朝廷に献上された我が国最古の医書である「医心方」が、信長の時代にこともあろうにライバルの半井氏に下賜されてしまった。

多紀家としてはこれを奪い返さなければ気が済まないというわけだ。そのおはちが啓順に回ってきたということになる。

この多紀家にとっての半井氏。詳しくは本書に述べられているので、省略するが、血筋がややこしい。

さて、最後に。江戸時代。中国の後漢時代に張仲景という人が記した「傷寒論」という医学書をかじっていれば、医者のまねごとができたそうだ。

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内容/あらすじ/ネタバレ

啓順は甲州街道の八王子で三十六針を縫う大怪我をしたいきさつで、そのまま居座っていた。問題は聖天松。追っ手がいつ嗅ぎつけるか分からない。

だが、啓順が世話になっている俵屋孫兵衛が、最近亡くなった医師の倅で宗太郎に会ってくれという。出来れば関わり合いになりたくない。

その宗太郎の母親もやってきて、宗太郎に医師としての修行を積ませたいという。それも大八木長庵の内弟子としてだ。この母親は江戸まで足を伸ばし、大八木長庵に掛け合ったという。その条件として、啓順自ら親子を連れて来ることとなってしまっていた。

関わり合いになりたくないが、仕方がない。それに、大八木長庵には別の魂胆があるようだ。

果たして、医学館を興した多紀家が元来所有していた「医心方」を半井氏から取り戻せ。半井氏は京の家において焼けてしまったというが、そんなはずはないだろう。だから、「医心方」の隠されている場所を探し出せという。

…船で一気に上方に行くはずが何の手違いか、途中で陸路を採らざるを得なくなってしまった。

聖天松は知恵者の並木の勘助を東海道に配している。それを避けるようにして京を目出していたが、途中で気になる話を聞いた。

医者として聞き逃すことが出来ず、ふと立ち寄った場所で、医学館で机を並べた小野碩道と出会う。そして、啓順は碩道の誘われ、碩道の仮住まいのある沼津へ向かった。

だが、ここでとんでもない事件にに巻き込まれてしまう。

…沼津をぬけ、京へすぐに向かいたかったが、路銀もなく、また、牢内で知り合った水神の新三郎から頼まれた言付けもある。啓順は甲府へと向かうことにした。以前世話になった三井楼に上がり込むことにしたのだ。

だが、今度は新三郎の言付けをしたために、鰍沢で竹居村の安五郎と津向の文吉との争いに巻き込まれてしまう。

そして、挙げ句の果てに、京にほとんど近づけていないがために、大八木長庵に見捨てられてしまう。自業自得であった。

進退窮まった啓順だが、何とか金の工面を附けながら、京へと向かった。

…再三、啓順を追いつめながら寸前で逃げられてしまう並木の勘助に、聖天松は激怒していた。

聖天松は倅を殺したのは啓順だと決めつけているが、並木の勘助にはどうも違うのではないかという思いがある。それもあり、出来れば啓順には上手く逃げて欲しいという気持ちもある。だが、聖天松の手前、追っている振りはせねばならない。その内聖天松も諦めるだろう。

その頃、啓順は道中で様々なことに遭遇して、もう一度医者としてやりなおそうと心を入れ替えることにした。そのためにも京へ行こう。

本書について

佐藤雅美
啓順地獄旅
講談社文庫 約三七五頁
江戸時代

目次

第一話 浦賀番所の小役人
第二話 後の祭り
第三話 千本松原春まだ遠し
第四話 自業自得
第五話 甲府の朝靄
第六話 水子供養
第七話 遠くに聞こえる祭り囃子
第八話 三界に家なし

登場人物

啓順(啓次郎)
俵屋孫兵衛
おかね
宗太郎
たね…宗太郎の母
小野碩道
磯川武左衛門…郡奉行
原田猪兵衛…横目
金沢玄蕃…城代
水神の新三郎
清太郎
みち
宇吉…三井楼主人
嘉六…船頭
安五郎…竹居村の親分
文吉…津向の親分
久右衛門…日野屋主人
彦三郎
おきぬ
九二蔵
おこま
大八木長庵…奥医師
聖天松五郎
並木の勘助

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