佐伯泰英の「酔いどれ小籐次留書 第6巻 騒乱前夜」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第六弾。水戸藩主斉修にも認められ、評判が高くなった小籐次の行灯。それを水戸藩でつくる指導をするために水戸へ船で向かう。この船で一緒になるのが間宮林蔵。小籐次と会った時は四十三歳。

江戸時代後期の冒険家で、地理学者伊能忠敬に従って日本全国を踏破し、地図製作に携わっている。近藤重蔵、平山行蔵と共に「文政の三蔵」と呼ばれる。樺太が島であることを確認した人物として知られ、樺太と大陸間の海峡は間宮海峡と呼ばれる。

この間宮林蔵だが、水戸藩入はある目的がある。それは文化十五年(一八一八)四月十三日に死んだ伊能忠敬と関連する。ちなみに、この文化十五年の途中で改元され、文政元年となる。

ある目的がなんなのか…それは本書を読んでのお楽しみである。

そうそう、間宮林蔵は幕府隠密という風にもいわれているそうだ。

さて、久しぶりにというか、ご無沙汰というか。いや、ご無沙汰というわけではないが、何となく影の薄くなった観のある追腹組が小籐次を狙ってきている。ちょこまかちょこまか現われては小籐次を狙い、なんとも鬱陶しいハエのようである。

本書でこの追腹組は一つの転換期を迎える。今後どのような経緯をたどるのか。

小籐次は小籐次で、水戸藩の斉修に相当気に入られたようで、旧主の久留島通嘉に斉修が小籐次を貰い受けたいと言われたそうだ。

水戸家との関係が深くなる中で、今後ますます水戸家との繋がりが強くなりそうな気配である。もっとも、仕官はしそうにないが…。

小籐次が水戸藩との繋がりが深くなるとして、今後どのような展開が待ち受けているのだろう?

まだ、幕末というには時期が早く、次の水戸藩主徳川斉昭の時代には時間がある。従って藤田東湖らの登場というのも予想しにくい。

だが、もしかしたら、現藩主・斉修と歳の近い斉昭は近いうちに登場することになるのかも知れない。

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内容/あらすじ/ネタバレ

文政元年(一八一八)七月。久慈屋の女中・お花が連れて行かれそうだと小僧の国三が赤目小籐次の元に飛び込んできた。連れ去ろうとしているのは、佐州帰りの民次というちんぴらだ。

お花は今回の件に心当たりがないという。嫁いだ先の薬種問屋中松屋というわけではなさそうだ。

この件に関して、小籐次はお花が以前勤めていた天麩羅屋に出かけた。お花の弟・松之助が板前の見習をしているということもあり、何らかの事情を知っていると思ったからだ。

だが、当の松之助が店をやめていた。また、お花の実家も引き払っていた。さらに、お花自身も久慈屋に戻っていないという。一体どうしたというのか?

豊後森藩下屋敷用人・高堂伍平が小籐次を訪ねてきた。藩主・通嘉が小籐次に合いたいというので、迎えに来たのだ。

小籐次は旧主の前に呼ばれ、御鑓拝借騒動の礼を言われた。そして、通嘉は水戸家の斉修から呼ばれ、赤目小籐次の身柄を水戸家で申し受けたいと言われたという。斉修としては、水戸家で小籐次を引き取れば、小城鍋島藩も手を出さないだろうという心遣いであった。

この帰り、江戸家老の宮内積雲が小籐次に耳打ちした。小籐次を狙う追腹組は小城藩から放逐したという。つまり、小城藩とは関わりがないというのだ。この知らせの矢先、小籐次は刺客に襲われた。

小籐次は久慈屋の手代浩介とともに水戸へ出発することになった。水戸藩では小籐次が工夫した行灯をなんとしてでも製品化して江戸へ売り込もうと考えていたので、その教授に小籐次を水戸までよび、指導を願ったのだ。行きは水戸藩の御用船で行くことになった。

この船には他に二人同行者がいた。水戸藩目付の竹中正蔵と、間宮林蔵である。間宮林蔵は噂では幕府の密偵だとか…。それにしても、一体何の用で間宮は水戸藩へ赴くのか?

水戸藩の土を踏むなりいきなり刺客に襲われた。それは間宮林蔵を狙った者であった。そして、刺客は精進一派と呼ばれる者達であるという。

小籐次と浩介は小姓頭・太田拾右衛門の屋敷で寝起きすることになった。そして早速行灯作りの指導が始まった。

竹林にいるときに、小籐次らは追われる若侍二人を助けた。追っていたのは精進派の者だった。水戸では定府の家臣と国侍、城下商人と在郷商人の対立があり、さらに在郷下士の常陸在郷精進派が加わり複雑な対立模様となっていた。精進派の頭領は精進唯之輔である。

間宮林蔵の水戸入の狙いは水戸藩にも推測がついていないらしい。その中、精進派が間宮を狙っているという情報が入り込んだ。小籐次と太田静太郎、町奉行の嬬恋彦一郎はこれを阻止するために向かった。

小籐次と浩介が江戸に戻ったのは秋真っ只中のことだった。方々へ無沙汰をしたお詫びも兼ね仕事に出た小籐次は乳飲み子を抱えた浪人がどうやら小籐次を狙っているという話を聞く。

本書について

佐伯泰英
騒乱前夜 酔いどれ小籐次留書6
幻冬舎文庫 約三三五頁
江戸時代

目次

第一章 消えたお花
第二章 無花果つぶて
第三章 林蔵の貌
第四章 那珂川竿突き
第五章 子連れの刺客

登場人物

お花…久慈屋女中
松之助…お花の弟
梅吉…お花の弟
佐州帰りの民次
天元の萬吉
静右衛門…薬種問屋中松屋倅
おかる…静右衛門の母親
久留島通嘉…豊後森藩藩主
高堂伍平…用人
宮内積雲…江戸家老
竹中正蔵…水戸藩目付
間宮林蔵
太田拾右衛門…水戸藩小姓頭
太田静太郎…拾右衛門の息子
春村安紀…小納戸紙方
作田重兵衛…小納戸紙方
久坂華栄…水戸藩前之寄合
太田左門忠篤…国家老
今坂辰馬
嬬恋彦一郎…町奉行
細貝忠左衛門…久慈屋の本家
角次…職人頭
精進唯之輔…在郷郡奉行
大全寅太…金剛流
須藤平八郎光寿
駿太郎…須藤の息子
新渡戸白堂
播磨屋聡五郎

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