佐伯泰英の「密命 第14巻 遠謀-密命・血の絆」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十四巻。

今回は末娘の結衣がトラブルの元になる。本人はただただ女役者になりたいという気持ちだけがあるのだが、これにつけ込まれる形で、父・惣三郎、兄・清之助に迷惑をかけることになる。

だが、このお陰で、久方ぶりの惣三郎・清之助親子の再会となる。

修行途中の清之助がいつになったら、江戸に戻り、惣三郎に修行の成果を見せるのだろかと思っていたら、こうした思わぬ形での再会となった。

修行の成果は、この後親子三人で訪れる柳生の里で分かるのだろう。

本作の結衣で、金杉家の一員は一通り主要な役割を物語の中で演じる格好になった。

さて、久しぶりに伝奇的な要素がある物語となっている。伝説の剣客が登場するのだ。

密命シリーズの初期はこうした伝奇的な要素が多かったが、最近は鳴りを潜めていたので、少し懐かしい気持ちになった。

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内容/あらすじ/ネタバレ

五十歳を迎えた金杉惣三郎はその年齢に感慨にふけることがあった。

荒神屋の台所事情は苦しく、一筋縄でいかない四軒のとりっぱぐれの店からの掛け取りを惣三郎が行うことになった。

最初は、料理茶屋巽屋権八の十七両分。女将のおくまは火事で焼け出された際に借りた銭屋金兵衛の利息があり、払えないという。この銭屋の貸し付けは無法なものだった。

惣三郎はここで一肌を脱ぐことにした。荒神屋の台所事情を考えるとここは是が非でも頑張らねばならない。

次は火口卸問屋大黒屋孫三郎の十一両分。だが、これは意外な結果に終わった。そして、履物問屋下野屋万五郎の七両分。

最後に大物の品川宿の春扇楼。ここには二十八両一分。そして最も手強い掛け取り相手であった。

石見道場に武者修行の若者が稽古をと訪ねてきた。新神陰一円流の八戸鶴太郎忠篤と名乗る若者に惣三郎も石見銕太郎も訝しい気持ちを持っていた。というのも、実力を隠しているように思われるのだ。

この変った若者が訪れた稽古の帰り、昇平から結衣の様子がおかしくないかと言われる。同じことを惣三郎はお由にも言われていた。
そして結衣が突然いなくなった。

結衣はこれまで中村座を訪ねたり、芝居小屋を訪ねたりしていたようだ。そこで中村座を訪ね、結衣が訪ねた折の様子などを聞くことにした。どうやら、結衣は女役者を夢見ていたようである。

紫市乃丞一座という旅廻りの芝居一座の芝居を見にいったことを思い出していた。その紫市乃丞一座は名古屋からの一座だそうだ。惣三郎の胸に黒い不安がよぎる。

そして、探索の結果、この一座に結衣が加わったのは確かなようである。だが、不審なことにこの一座は神奈川宿から千石船にのったという。一介の旅廻りの芝居一座が千石船に乗るなどあり得る話ではない。

惣三郎は、結衣を追って東海道を上ることにした。

金杉清之助が柳生道場に寄宿して三ヶ月が過ぎようとしていた。

ここに尾張柳生の門弟が五人訪ねてきた。大和柳生と尾張柳生の交流が絶えて久しい。だが、もともとは同じ柳生である。その訪問を断る理由もない。この訪問者の中で不気味なのは柳生連也斎の血筋だという柳生小連也斎光厳である。

彼らの目的は一体何なのか?折しも柳生の里を訪ねてきた大和屋吉兵衛はこの訪問者のことを聞き、大和柳生の殲滅と、清之助の暗殺が目的ではないかという。

不気味な尾張柳生の五人の訪問者を迎えながら、稽古の日々は続いていた。

その中、父・惣三郎からの早飛脚が清之助の元に届いた。妹の結衣が失踪し、その陰には尾張がいるようだという。惣三郎も東海道を上っている。清之助も合流して二人で結衣を助けようというのだ。清之助はすぐに尾張に向かった…

本書について

佐伯泰英
遠謀 密命・血の絆
祥伝社文庫 約三二〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 掛け取り屋
第二章 結衣の失踪
第三章 柳生の若武者
第四章 十兵衛杉の決闘
第五章 広小路親子舞

登場人物

巽屋権八
おくま
お糸
銭屋金兵衛
下野屋万五郎
参州屋千右衛門
百蔵
春扇楼左太郎
珠洲村凶四郎
市村羽左衛門(直次郎)
市川小十郎
市川団十郎
<紫市乃丞一座>
五月文字若
<柳生の庄>
小山田春右衛門重忠…柳生家陣屋家老
天野丹次…用人
笠間伝七郎…師範
百武善五郎
小山田五郎丸
黒鍬平兵衛
荘田常彦
大和屋吉兵衛


安濃屋彦兵衛…廻船問屋
金蔵…主船頭
<尾張柳生>
高麗村彪助
毛利親乃丞
三宅殿兵衛
柳生小連也斎光厳
嶋牧十蔵
八戸鶴太郎忠篤
姥堂の精次
柳生七郎兵衛厳包(連也斎)

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