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鳥羽亮の「はぐれ長屋の用心棒 第10巻 孫六の宝」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十弾。このシリーズも大台に乗った。

今回スポットが当たるのは孫六である。いままで孫六だけにスポットが当たったことがないので、初となる。前作同様に、身内への危機をなんとか避けようと奮闘する。

孫六は還暦を過ぎた元腕利きの岡っ引きである。七年ほど前に中風をわずらい引退した。少し足が不自由である。娘のおみよ夫婦の世話になっている。

おみよは魚屋をやっていた又八と所帯を持ったが、魚屋がもらい火で焼け、やむなく伝兵衛店(はぐれ長屋)に越してきて、以来ぼてふりをやって暮らしを立てている。孫六が娘たちと伝兵衛店に越してきて四年になる。

おみよは孫六が長屋を出ようとすると、決まって行き先を訊いたり、酒を飲んではいけないとか、早く帰ってこいとか口やかましくいう。きついことを言うが、根は優しく、親思いの娘だった。

このおみよが懐妊した。長いこと待ち望んだ出来事だった。又八も孫六も大喜びである。

だが、その幸せの矢先に、又八が辻斬りの一味と思われる人間を見てしまい、さらにはその一人の名前を聞いてしまったから大変だ。

又八を何とか消そうとする動きがあり、源九郎らはぐれ長屋の用心棒らが又八を守るために動き出す。そして、この辻斬りは単なる辻斬りではなく、ある目的があったのだ…。

最後におみよに子が生まれる。男の子だ。題名はここから来ている。

内容/あらすじ/ネタバレ

孫六は普段と違うおみよの優しさが気になった。又八の態度もいつもと違う。不安を抱えて華町源九郎の部屋に邪魔していると、お熊がやってきて、孫六におみよのお腹に赤ちゃんがいるんじゃないかねといった。

孫六は驚くのと同時に嬉しさがこみ上げてきた。おみよの普段とは違う優しさとはこのことだったのだ。

長屋の近くで辻斬りがあった。殺されたのは相模屋の番頭で重造という。下手人は手練れのようだ。この場に岡っ引きの栄造がおり、これで二人目だという。半月ほど前に松村屋の番頭が斬り殺されたのだ。

又八が仕事から帰ってくる途中で、大柄な大店の旦那風の男とぶつかった。その男の後方に人影があり、旦那風の男が「倉田、こいつを斬っちまえ!」と言った。

又八は深い傷を負いながら何とか長屋に逃げ帰ってきた。そして又八が二人組に襲われてから五日。長屋に住む政吉が又八のことを根掘り葉掘り聞こうとする男に痛めつけられた。

どうも又八を始末するために探しに来たようだ。又八はなぜ狙われる?倉田という男が辻斬りで、その名を聞かれたためなのだろうか?

孫六は七兵衛という元地まわりを訪ねた。もしかしたら、辻斬りの見当が付くかも知れないと思ったからだ。そして、女郎屋に人相のよくない牢人者が出入りしているという話を聞いたことがあるという。

それに、と付け加えたのが、辻斬りは一人じゃないかもしれないということだった。

源九郎が大川端を歩いていると、同門だった安井半兵衛と久しぶりに出会った。安井は御家人風の格好だが、なかなかの拵えでいい大小を差していた。内証もいいようだ。昔は籠手斬り半兵衛といわれるほどの籠手打ちの名手だった。

又八は仕事に出たがっていたが、依然として危ない。だが、源九郎や菅井らに頼んで帰り道だけ同行してもらうことにして、仕事に出るようになった。

やがて、倉田と呼ばれた男が倉田左之助という三十がらみの総髪の男ということがわかった。

辻斬りを追っていた岡っ引きが殺された。籠手斬りでやられている。この殺された岡っ引きは松村屋と相模屋を探っていた。

この二つの店を探っていたのは、店の規模といい、景気が悪い様子といい、そっくりなのが気になっていたようだ。ただの辻斬りとは思っていなかったのだ。

源九郎らも相模屋と松村屋の内情を探ってみることにした。そしてわかったのが、二つとも金貸しから金を借りていたということである。

松村屋と相模屋の番頭を斬った人物と岡っ引きを斬った人物とは一致しないように源九郎には思えた。どうやら、倉田の他に職人風の若い男と、大店の旦那ふうの男がおり、さらには大柄な侍がいるようだ。

源九郎は松村屋に出かけ、主の岩右衛門と掛け合った。そして金貸しの名が銀蔵というのを知る。職人風の男の名は助次というらしい。

金貸しの銀蔵は、ほとんど表に姿を現さないため、居所が把握しづらい。だが、松村屋に銀蔵自身が姿を現した。そして、源九郎らに手を引けと脅しをかけた…。

本書について

鳥羽亮
はぐれ長屋の用心棒10
孫六の宝
双葉文庫 約三〇〇頁
江戸時代

目次

第一章 帯祝い
第二章 籠手斬り
第三章 金貸し銀蔵
第四章 野良犬たち
第五章 攻防
第六章 剣鬼たち

登場人物

華町源九郎
菅井紋太夫
茂次…研師
孫六…元岡っ引き
三太郎…砂絵描き
又八…おみよの亭主
おみよ…孫六の娘
お熊…長屋の住人、助造の女房
お梅…茂次の女房
政吉…長屋の住人
元造…飲み屋「亀楽」の主
栄造…岡っ引き
村上彦四郎…南町奉行所定廻り同心
七兵衛…元地まわり
銀蔵…金貸し
助次(小助)
倉田左之助
安井半兵衛
石丸
池井
岩右衛門…松村屋主