佐伯泰英「鎌倉河岸捕物控 第12巻 冬の蜉蝣」の感想とあらすじは?

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シリーズ第十二弾。

豊島屋でのしほの奉公が終わろうとしています。いよいよ金座裏の嫁になるのです。

ですが、今回も色んな事件が金座裏を待っていた。

まず初めに。永塚小夜の息子・小太郎の実の父親が小太郎を連れ去ろうと画策します。

永塚小夜が登場したのはシリーズ第九弾の「道場破り」でした。「道場破り」で経緯は書かれているので、今一度読み返してから本書を読まれるといいと思います。

次に板橋宿の銀蔵の不幸があります。

亮吉はかつて政次が金座裏の十代目を継ぐと告げられ、驚きのあまり金座裏を逃げ出したことがありました。

これはシリーズ第三弾の「御金座破り」に書かれているので、これもあわせて読まれるといいでしょう。

その時に世話になったのが銀蔵親分の一家。ですから、亮吉は銀蔵が死んだと聞いて強い衝撃を受けます。

『頷いた亮吉の両目から、
「ぽろり」
と大粒の涙が零れて
「おりゃ、迷惑かけたばっかりでよ、銀蔵親分が倒れなさったという知らせの時も七日正月の酒を酔い食らってよ、二階で寝込んでいたんだよ。真っ先にいた橋に駆けつけなきゃあならないのは、この亮吉だったんだよ、若親分、仁左親分」』

その亮吉を見て、宗五郎がこういいます。

「あいつはおっちょこちょいだが、義理と人情には人一倍厚くてな。」

最後に。佐伯作品としては珍しく、というより初めてではないかと思うが、主人公達が猫を飼います。

今まで登場してきたのは犬ばかり。それは作者が犬を飼っているのが大きく影響したようですが、それでは同じように、猫を飼い始めたのでしょうか。

今まで佐伯作品に登場してきた犬は幾度となく活躍してきました。菊小僧と名付けられた猫は今後どのような活躍を見せるのでしょう。楽しみです。

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内容/あらすじ/ネタバレ

寛政十二年(一八〇〇)の年の瀬。

鎌倉河岸の豊島屋に最近金座裏の連中が顔を出さない。兄弟駕籠の弟・繁三が口を挟んだ。金座裏の連中が蝋燭町の赤提灯に入り浸りだというのだ。

その時、彦四郎が現われて金座裏の面々は御用の筋だという。裏付けるように亮吉らが姿を現した。

そして、むじな亭亮吉による、蝋燭町裏路地の煮売り酒場の酌婦あふゆにまつわる事件が語られた。

それは、この夏に富士講の一行に起きた事件だった。

政次はいつものように神谷丈右衛門道場に稽古に通った。

生月尚吾との激しい稽古が終わると、尚吾が政次が通うようになったと思ったら今度は永塚小夜が来なくなったという。

金座裏に仔猫が迷い込んできた。菊小僧と名付けられ、金座裏で飼うことになった。

政次が永塚小夜を訪ねた。小夜は最近誰かに見張られている気がしているようだ。

ある時、小太郎の子守に雇ったおいねに、その子供は永塚小夜の子だなと尋ねてきた者がいたそうだ。

永塚小夜の父親は陸奥伊達藩で町道場を開いていた。小夜に大金の蓄えなどはない。すると仙台がらみなのか…。

見張っていた武士は亮吉と波太郎がつけ、筑前秋月藩黒田家五万石家臣お石ヶ谷七郎太夫ということがわかった。

小夜は政次に八重樫七郎太と秋田数馬の二人を覚えているかと聞いた。秋田数馬こそが小太郎の父親だ。二人の生国は西国としか分かっていないが、八重樫がいつか秋月陣屋に小夜らを連れて行きたいと洩らしたことがあったという。

政次は一旦金座裏に移ってこないかと小夜にすすめた。

宗五郎は北町奉行所を通じて秋月藩黒田家を探ることにした。意外な所から糸がほぐれた。

神谷丈右衛門道場に福岡藩黒田家の添田泰之進がいるのに政次が気がついたのだ。その添田が支藩筋の秋月藩のことを調べてくれた。そして、八重樫と秋田の二人は秋月藩士であったことが判明した。

添田は秋月藩目付の諏訪九平次を政次に紹介した。そして四年前に秋月領内で起きた騒ぎのことを話し始めた。

先に小夜を見張っていた石ヶ谷は秋田数馬の叔父に当るという。今、秋田家には跡継ぎがおらず、数馬が跡継ぎになることになるそうだ。これに絡んで小太郎を連れ去ろうというのか。

石ヶ谷から小夜らに手を出さないという念書をもらって一段落した。

だが大晦日に子守のおいねが殺されて、小太郎が攫われた。一段落したと思っていた秋月藩の件は秋田数馬が暴走することによって再燃してしまった。

板橋宿の女男松の銀蔵の使いが金座裏に飛び込んできた。銀蔵が倒れ、今晩か明日が峠だという。

宗五郎はそれを聞きすぐに見舞いに駆けつけた。そして銀蔵が亡くなった日に火付けが起きた。

神谷道場に新入りが入った。長州萩藩の家臣で俵左膳常安という。

しほらが呉服屋松坂屋を訪ねた。そこでしほは反物を万引きしている一組の女客がいるのに気がついた。これがとんでもない一味であった…。

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本書について

佐伯泰英
冬の蜉蝣
鎌倉河岸捕物控12
ハルキ文庫 約三一五頁
江戸時代

目次

第一話 迷い猫
第二話 暮れの入水
第三話 小太郎の父
第四話 銀蔵の弔い
第五話 鱸落としの小兵衛

登場人物

政次…金座裏の十代目
しほ(志穂)…政次の許婚
亮吉…宗五郎の手先
彦四郎…船宿綱定の船頭
宗五郎…金座裏の九代目親分
おみつ…女房
常丸…手先
伝次…手先
波太郎…手先
菊小僧…仔猫
永塚小夜
永塚小太郎…永塚小夜の息子
おいね…子守
力…小夜の弟子
義平…青正の隠居
清蔵…豊島屋の主人
庄太…小僧
繁三…駕籠屋
梅吉…駕籠屋
松六…松坂屋隠居
神谷丈右衛門…直心影流神谷道場
生月尚吾…住込み弟子
俵左膳常安…長州萩藩士
寺坂毅一郎…北町奉行所定廻り同心
おふゆ…酌婦
富吾郎…屋根職人親方
種造…左官
淀之助…蒔絵職人
石ヶ谷七郎太夫…筑前秋月藩黒田家五万石家臣
八重樫七郎太
秋田数馬
諏訪九平次…秋月藩目付
宮崎譲忠晃…秋月藩江戸家老
添田泰之進…福岡藩黒田家
銀蔵…板橋宿の岡っ引き、女男松の親分
仁左…女男松の手先
はる…銀蔵の娘
一石の重造
赤鞘の蛸八
松五郎…船頭
鈴木喜作…北町奉行所定中役同心
小骨のおくま
鱸落としの小兵衛

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