佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控 第3巻 御金座破り」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約5分で読めます。
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

覚書/感想/コメント

シリーズ第三弾

今回の大きな事件は御金座の手代・助蔵が殺されたことに端を発する。助蔵は極秘裏に動いている小判改鋳のための新小判の意匠を京の職人と打ち合わせをしているのだ。

もしかしてその新意匠を狙った犯行なのか?もし新意匠がわかってしまうと偽の小判が大量に出回ることになる。

必死の捜査が始まる。

金座は現在の日本銀行本店にあったそうだ。

金吹所(鋳造工場)、金局(事務所)、世襲の御金改役である後藤庄三郎光次の役宅があった場所で、これらを総称して「金座」と呼んでいた。

金座は、勘定奉行の支配下にあり、御金改役を長官として、幕府から大判を除く金貨鋳造に関する独占的な特権を与えられていた。構成されていたのは金座人と呼ばれる町人によってであり、半官半民の事業団体だった。

金座の他には銀座、銭座、大判座がある。

一方で金座裏でも大きな動きがあった。

それは松坂屋の手代・政次が宗五郎の手先として入ってきたのだ。宗五郎の手先の中には、政次が金座裏にやってきた理由を感づくものもいる。

他に、豊島屋の主人・清蔵をはじめとして、金座裏をよく知る人物は皆感づいていた。

一人、兄弟のように育った亮吉だけはその事に気が付いていなかった。

だが、そのことを教えられた亮吉は、思い悩み、そして姿を消してしまう…。

よく知る人物が同じ職場にやってくる。それも幼馴染である。当然比較されることになる。

それだけでも、大きなストレスになるだろうが、亮吉の場合さらに状況が複雑になっている。政次が金座裏にやってきた理由というのが問題なのだ。これで苦悩しなければ、よほどに鈍い人間ということになる。

普段は尻軽が信条で、軽薄な一面もある亮吉だが、さすがにこたえているようだ。

姿を消した亮吉はどこへいってしまったのか?そして、再び鎌倉河岸へ戻ってくるのか?

さて、品川の海晏寺。佐伯泰英の他のシリーズでも度々登場する寺である。

建長三年(一二五一)に創建された古刹。土地の漁師の網に鮫がかかり、その腹から観音像が出てきた。

それを知った鎌倉幕府の執権・北条時頼が寺を建て、観音を祭ったのが始まり。鮫洲観世音が本尊で、この辺の海が平穏になったところから海晏寺と称されるようになった。

名物は紅葉狩りである。

スポンサーリンク

内容/あらすじ/ネタバレ

寛政十年(一七九八)初夏。金座裏の宗五郎を後藤家の用人後藤喜十郎が訪れた。十代目金座長官の後藤庄三郎が呼んでいるというのだ。

いぶかしげな事が起きたという。手代の助蔵が死体で発見されたという。

極秘の事項だが、幕府は小判改鋳を考えている。助蔵は新小判の意匠を京の職人と考えるために京へ向かったという。その帰りに死体で発見されたのだ。

板橋宿へ向かう宗五郎は土地の岡っ引き女男松の銀蔵に死体をみせてもらった。銀蔵の手先・仁左が手伝いをしてくれた。銀蔵はこの仁左と娘のはるを結婚させて跡目を仁左に譲るつもりのようだ。

この板橋宿へ出張った時に、宗五郎は亮吉を呼び、政次の身柄を松坂屋から貰い受けたと告げた。亮吉は喜んだが、一緒にいた兄分の常丸は心配していた。

その後もどると、縄張り内で殺しが起きていた。若い屋台のてんぷら屋が殺されたのだ。聞き込みをすると、稼ぎの良い屋台の職人に声をかけ回っている野郎がいるという。

政次の最初の仕事は北町奉行所へ出かける宗五郎の供だった。常丸らの手先は政次が松坂屋から貰い受けられたのは、金座裏の後継者として教育するためだと直感していた。

政次は朝の七つ(午前四時ころ)前に赤坂田町の直心影流神谷道場に向かって走っていた。寺坂毅一郎の口利きで神谷丈右衛門道場に入門したのだ。

金座裏の勤めに支障がないように朝早くの修行である。

修行から帰ると、政次は常丸と一緒に品川へ向かった。助蔵殺しの手がかりをつかむためである。分かったことがある。助蔵は道中で妙な男につきまとわれていたようだ。

松坂屋の隠居・松六がやってきた。

諸商学塾と開いている五十嵐弦々斎というのがいる。その弦々斎の妾に生ませた娘が行方しれずになっているようだという。

この弦々斎、評判が悪い。

この調べの中で、亮吉は政次が金座裏にやってきた本当の理由を聞かされた。そして、事件が片づくと、しほに小雀を預けて消えてしまった…

板橋宿の仁左とはるが金座裏を訪ねてきた。

この中、試し斬りを受けたと見られる紀伊藩の侍の死体が発見された。そして、別の辻斬りが起きた…。

亮吉がいなくなって一月がたつ。

おえいという女に目がくらんだ男が懐の金をそっくり抜かれるという事件が頻発していた。宮大工の彰五郎の弟子・磯次もその一人だった。問題は盗まれた銭ではなかった。五百二十五両の証文が盗まれたことであった。

そしてその証文を持った金貸しの讃岐屋善兵衛と名乗る男がやってきて支払いを督促してきたというのだ。

その頃、亮吉はあてもなく江戸の町を突っ切り、板橋宿に迷い込んでいた。亮吉はそこで意外なことを聞く…。

本書について

佐伯泰英
御金座破り
鎌倉河岸捕物控3
ハルキ文庫 約三七〇頁
江戸時代

目次

序章
第一話 屋台騒動
第二話 塾頭弦々斎
第三話 仁左とはる
第四話 外面似菩薩
第五話 ほたるの明かり
第六話 御金座破り

登場人物

後藤庄三郎…十代目金座長官
後藤喜十郎…後藤家用人
助蔵…手代
女男松の銀蔵…岡っ引き
はる…娘
仁左…手先
新六…てんぷら屋
勝兵衛…大家
青吾郎…香具師
おぎん…料亭一ノ瀬の女将
秋世…品川女郎
梅次…手配師
結城市呂平…日向延岡藩の藩士の次男坊
五十嵐弦々斎
喜美
優太郎
俊次郎
睦美角之進…代教
ひめこ
たんぽ槍岩松
小俣新十郎…紀伊藩御納戸役
今川町の千吉親分
為三…千吉の手先
捨松…千吉の手先
おえい
彰五郎…宮大工
磯次
讃岐屋善兵衛
種三
嬋永…谷中小円寺の副住職
眼斎…了念寺の住職
歳太郎
市兵衛
藤吉
おくら
征左衛門
みよ
瓢箪の猪左衛門
平岩宣十郎
江吉…金座の警護役
保次郎…金座の金吹き職人
丹三…金座の刻印方

タイトルとURLをコピーしました