佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控 第10巻 埋みの棘」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十弾

いつもとちょっとばかり話の展開が異なる。

大きな事件が一つに、中くらいの事件が一つ軸になっている。

中くらいの事件は第一話と第二話に続く。そして、大きな事件は物語全般を通じている。

また、本書だけでなく、事の発端となる事件は「鎌倉河岸捕物控読本」の短編「寛政元年の水遊び」に詳しく書かれているので、あわせて読まれるとよい。

亮吉がなぜ金座裏の手先になったのかが書かれている。

青物市場に奉公に出れば食いっぱぐれがないという母親の薦めにも従わず、どうするかを政次と彦四郎に相談しているとき、若かった九代目宗五郎の鮮やかな手並みを見て金座裏の手先になると決めたのだ。

御用聞きの手先は銭にならないし仕事はきついからやめておけという宗五郎の忠告にもめげず、亮吉は何度も通い詰めようやく一年ほど様子を見ようかと許しを得た。

こうして、独楽鼠が誕生したのだ。

さて、本書に登場する高家。高家とは、いわゆる名門・名家のことであり、江戸幕府の役職のひとつである。幕府の老中配下にあり、儀式や典礼を司った。

主に公家の血筋を引く者、足利氏一門や旧守護などの家柄の者が選ばれ代々職を継承した。

江戸時代初期、第二代将軍徳川秀忠が石橋家、吉良家、今川家の三家を登用したのに始まる。その後増加し、宝永九年(一七八〇)に二十六家となり、幕末まで変わらなかった。

高家のうち、役職に就いている者は奥高家、役職に就いていない者を表高家と呼んだ。さらに奥高家から有職故実や礼儀作法に精通している三名を選び「高家肝煎」とした(俗に「三高」、”高家筆頭”は誤り)。なお、高家肝煎に選ばれる家は固定していないそうだ。

高家としては吉良、武田、畠山、織田、六角、石橋、品川など。

この織田家だが、三家ある。織田信長の七男織田信高の子孫、信長の十男織田信貞の子孫、信長の次男織田信雄の子孫。

吉良家は二家ある。三河吉良氏と武蔵吉良氏である。三河吉良氏は忠臣蔵で有名な吉良氏である。武蔵吉良氏は三河吉良家と祖が同じだが別系統。

武田家は武田信玄の次男海野信親の子孫。

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内容/あらすじ/ネタバレ

寛政十二年(一八〇〇)の初夏。

政次は北町奉行所の内与力・嘉門與八郎に呼ばれ、水戸家の家老・澤潟を知っているかという。政次にその名は覚えがない。だが、もしかしたら、十一、二年前のあの一件なのかもしれない。それは亮吉と彦四郎と三人だけの秘密であった。

この事があってすぐ、政次と亮吉は鎌倉河岸の東、龍閑橋で襲われた。

襲われたこともあり、政次は過去の一件を宗五郎に話した。

造園竹木問屋丸藤の手代・参吉が金座裏に駆け込んできた。番頭の佐兵衛が襲われたというのだ。だが、物取りではなかった。

聞いてみると、佐兵衛は女よりも男が専門だったという。そのもつれなのか。佐兵衛は専様こと美倉専太郎という若い男を囲っていたという。が、この専様も殺されていた。

もしくは、店の中の問題なのか。佐兵衛が光蔵という次席の番頭を叱責している場を目撃されている。

だが、この事件は行き詰まりの気配をみせていた。

初心に戻り、政次は丸藤の店に赴いた。すると、主から意外な話を聞けた。それは、佐兵衛も光蔵も店の金に手を付けていた。二人合わせて千両を超えていた。

一方、殺された美倉専太郎の線も手先達が当たっていた。

そしてもう一人、捜していた光蔵は死体で見つかった…。

嘉門與八郎が客を連れて金座裏にやってきた。客は澤潟五郎次、政次達が知っているのは三村五郎次と名乗っていた昔の澤潟だ。

やはり十一年前のことが再び蘇ったのだ。

澤潟は十一年前に成し遂げられなかった水戸藩の改革を今度は断固としてやる決意だという。そして、それがために、半澤立沖が前に立ちはだかるであろうともいう。澤潟は政次達に用心するようにと忠告にきてくれたのだ。

十一年前の事件の当事者の一人、富田新吾の妹・弥生が政次を訪ねてきた。どうやら、弥生は十一年前のことに絡んで政次を訪ねてきたようだ。訝しいことである。

この事があり、政次達は十一年前の事件の現場に向かってみることにした。

政次達が豊島屋に顔を出した時、兄弟駕籠の繁三が半刻前に辻斬りを見たという。三十くらいの若様風だったという。

この辻斬りは続いた。そして、この辻斬りに永塚小夜が出会う羽目になる。だが、この辻斬り、実は…
そして、いよいよ十一年前の事件の結末が近づこうとしていた。

本書について

佐伯泰英
埋みの棘
鎌倉河岸捕物控10
ハルキ文庫 約三一五頁
江戸時代

目次

第一話 迷宮入りの事件
第二話 二太郎の仲
第三話 喉の棘
第四話 夕間暮れの辻斬り
第五話 十一年後の決着

登場人物

嘉門與八郎…内与力
徳川治保…水戸藩主
澤潟(三村)五郎次…水戸家家老
半澤立沖
籐右衛門…丸藤の主
佐兵衛…造園竹木問屋丸藤の番頭
光蔵…番頭
参吉…手代
美倉専太郎
好太郎
草薙平四郎…水戸藩士
戸塚唯敦…水戸藩士
若葉登之助…水戸藩士
富田弥生
井筒精太郎
志之助…三河町の親分

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