乙川優三郎の「かずら野」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

江戸時代も末期にさしかかる時代である。黒船の来航がそろそろの時代に、菊子という女性を主人公にした物語である。

菊子は度々、幼馴染の菅井静次郎から救いの手をさしのべられているが、その手を握る事はなく、泥沼の人生を歩む事になる。

この泥沼は、富治という金の価値しか認める事が出来ない男のために引き起こされたものである。菅井静次郎の好意を受け取れば、この泥沼から這い出る事ができたはずである。この点がもどかしく感じられるところである。

悲壮感漂う設定のはずだが、菊子の真っ直ぐな生き方がその悲壮感を和らげ、唯一希望を感じさせる。これは、富治という真っ逆さまの人生転落を経験している者との対比もあるから尚更そう感じるのだろう。

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内容/あらすじ/ネタバレ

松代・真田藩の足軽の娘・菊子は、一家の生計を助けるために奉公に出される事となった。奉公先は山科屋という糸師である。

菊子は山科屋に着くと、別室を与えられ、他の奉公人とは扱いが違っていた。やがてその理由が知れる。菊子は妾奉公というかたちで山科屋に売られたのである。

そのことを知り、愕然とする菊子。主人の山科屋彦市を殺そうかと思っていたら、息子の富治が彦市を殺してしまった。

その富治に攫われるようにして、菊子は山科屋を逃げ出した。そして、彦市を殺した共犯的な心情を持ちつつ、富治と夫婦になるのだった。

二人は、追っ手が来ないうちに江戸の深川に逃げ込んだ。そして、身を潜めるように生活をしていた。

富治は、一山を当てるつもりで商売にはげむ。しかし、金が出来ると仲間であったはずの男に裏切られてしまう。菊子は、凶状持ちの身になってなお、日の当るところを目指し、市井に埋没するつもりのない富治に愛想を尽かしていたが、富治から離れる事はしなかった。

やがて、二人は江戸も逃げるようにして出て行った。二人の行方には待っているのか、希望なのか、それとも絶望か。

本書について

乙川優三郎
かずら野
幻冬舎文庫 約三〇五頁
長編
江戸時代

目次

かずら野

登場人物

菊子
富治…山科屋若旦那
山科屋彦市
いち…御上
はま…女中
きい…女中
つや…富治の妻
音蔵
徳右衛門
恒吉…徳右衛門の息子
女将…「志からきや」女将
のぶ…女中
寿右衛門…網元「きのや」
菅井静次郎…菊子の幼馴染
佐久間象山

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