牧秀彦の「剣豪全史」を読んだ感想

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覚書/感想/コメント

第一章で念流と三大流派。第二章から江戸時代に入り、第二章では幕府、第三章では藩、第四章では市井での剣豪たちの果たした役割を考察している。第五章では新選組を取り上げている。

なお、筆者は剣豪を、次のように区分して分類している

第一世代(室町時代)…剣術流派のパイオニアとなることで、組織化を実現

第二世代(戦国時代)…個人として、権力者(足利将軍、戦国大名)と結びつく

第三世代(江戸時代初期)…流派として、権力者(徳川将軍、大名)と結びつく

本書の見方というのは一つの考え方である。

ここで述べられている諸流派については同じ筆者による「剣豪 その流派と名刀」に詳しいので、そちらを確認頂きたい。

以下に詳細な目次を記す。

第一章 ジェネレーションで読む剣豪
 剣術流派のパイオニアとは
 鹿島の太刀と関東七流
 京八流
 真のパイオニアは念流と三大流派
 あまりにも生々しいモチベーション
 支流の発生
 剣豪を世代に分けると
 剣豪たりとてサラリーマン
 ケース1 組織に殉じた剣豪・松本備前守政信(鹿島神流)
 名家ゆえの悲劇
 ケース2 組織を脱した剣豪・塚原卜伝(新当流)
 エリート生まれのエリート育ち
 フルタイムの剣豪
 生涯の半分を修行に費やす
 サラリーマン・政信とフリーター・卜伝
 ケース3 ただひとり、剣豪大名と呼ばれた男・北畠具教(新当流)
 秘剣「一の太刀」を伝授される
 無惨に果てた剣豪大名の大誤算
 ケース4 剣豪大名ならぬ剣豪将軍・足利義輝(新当流)
 名刀と共に巨星墜つ
 ケース5 第二の人生を全うした上泉伊勢守信綱(新陰流)
 父祖から受け継ぐ剣豪のDNA
 上杉氏から長野氏へ転職
 武田信玄から「信」の一字を授かる
 ケース6 徳川家専属になり損ねた疋田豊五郎(疋田陰流)
 頑固一徹、家康に屈せず
 ケース7 足利将軍家と栄枯を共にした吉岡憲法(吉岡流)
 憲法の名は最高のステータス・シンボル
 剣豪稼業から染物業に転身
 足利幕府と徳川幕府の違い
 ケース8 成功した権力者選び・冨田治部左衛門景政(冨田流)
 朝倉家を見限り、前田利家のもとへ
 越後に根を張った安定志向
 ケース9 就職活動に失敗した宮本武蔵(二天一流)
 武蔵と小次郎を結ぶ細川家
 イメージだけの武蔵像
 虚のなかに生まれた実
 第二世代再考
 ケース10 第二世代と第三世代の橋渡し・柳生石舟斎宗巌(柳生新陰流)
 剣豪の役割転換
 時代を動かした、剣聖との出会い
 すべてはわが子のために

第二章 幕府の剣豪
 第三世代の二大流派
 家康にヘッドハンティングされた柳生家
 とんとん拍子で大名まで出世
 将軍と剣豪の理論武装
 徳川幕府のサポーター
 徳川家、第二の御流儀
 名を捨てて実を取った小野派一刀流
 一二四センチの綱吉、一八〇センチの吉宗
 徳川家康 戦国乱世を生き抜いた、剣術実戦派
 理想のスタイル・家康体型
 徳川家光 剣術上覧を好んだ、見取り上手
 徳川吉宗 知勇兼備の八代将軍
 吉宗夜話
 刀に対する、吉宗の異常な愛情
 吉宗以降の将軍武勇伝
 幕府にとって剣豪とは何ものだったのか

第三章 藩の剣豪
 幕府と藩
 諸藩の大名を骨抜きに
 武蔵に挑んだ猛き藩主
 独眼竜は衰えず
 島津の気構え、前田の軍備、木下の武芸
 御三家も負けず
 度が過ぎたサムライの切ない往生際
 ダメダメになった直参
 御流儀の日本地図
 藩外不出の秘密兵器、御留流
 藩にとって剣豪とは何ものだったのか
 忠臣蔵に何を見たか
 そもそも忠臣蔵とは…
 大名も羨むサムライ
 赤穂浪士たちが修めた剣術
 藩の剣豪、その真価

第四章 町道場という名のベンチャー
 剣術界のビッグバン
 木刀の来し方
 竹刀と防具の普及
 他流試合
 リトマス試験紙にスタンプラリー
 道場の定義
 屋外にあった道場
 町道場は浪人の収入源
 浪人の大量発生を生んだ徳川人事
 剣術指南のバブル期
 江戸に根付いた剣術流派
 稽古方法
 身長二一〇センチの道場破り
 道場に入門するためには…
 免許皆伝のしきたり
 スポンサー探し
 すぐに辞めていく直参たち
 町人の剣術志向
 藩士と直参の決定的な差
 藩校という名の剣豪教育システム
 独立国家の抑止力
 遅すぎた幕府講武所
 維新の手助けをした町道場
 まったく役に立たない直参

第五章 剣豪たちの幕末維新
 幕末維新の舞台裏を覗く
 新選組が愛された止まない理由
 将軍直属の農民たち
 キレて刃を抜く無宿人
 農民相手の田舎剣術
 梁山泊としての試衛館
 仕事と夢の狭間で葛藤し続けた土方歳三
 最年長の隊士
 いざ、京へ!
 技、技、技、し尽くせよ技
 生粋の武士より純粋なモチベーション
 名を残したサムライたち

終章 剣豪ヒエラルヒーの大逆転
 剣豪史への招待
 本書の内容をおさらいすると
 抑止力論を再考する
 町道場が果たした剣術の民営化
 剣術の実用性が問われた幕末の世
 内憂外患で露呈した直参の無能ぶり
 剣合ヒエラルヒーの大逆転

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本書について

牧秀彦
剣豪全史
光文社新書 約二八五頁
解説書

目次

はじめに
第一章 ジェネレーションで読む剣豪
第二章 幕府の剣豪
第三章 藩の剣豪
第四章 町道場という名のベンチャー
第五章 剣豪たちの幕末維新
終章 剣豪ヒエラルヒーの大逆転
あとがき
主要参考文献
剣豪・流派名索引

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