藤沢周平「用心棒日月抄 第1巻」の感想とあらすじは?

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人気シリーズの第一弾です。

本作では常に主人公の近くで「忠臣蔵」の赤穂浪人側や吉良側の人間が動いています。

その「忠臣蔵」の進行具合に合わせて、青江又八郎の近辺の状況も進行します。

最初の頃は犬の用心棒のようなしがない仕事をしているので、今ひとつ物語を読む上で身に入りません。

しかし、徐々に危険度の高い仕事もこなすようになるので、終盤に行くに従ってだんだんと物語が面白く感じるようになります。

最初の用心棒が犬から始まっているのがミソなのかもしれません。

やがては老中クラスの用心棒をするまでになる青江又八郎が、最初は犬だったというギャップが物語を面白くしているように思います。

この部分の巧みさが藤沢周平の特長であり、また、このシリーズが人気が出た理由でしょう。

シリーズは次のようになります。

  1. 用心棒日月抄
  2. 孤剣 用心棒日月抄
  3. 刺客 用心棒日月抄
  4. 凶刃 用心棒日月抄

このシリーズに設定もよく似ており、また雰囲気もよく似ているシリーズがあります。

似ているのは、佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙」シリーズです。

「用心棒日月抄」シリーズは巻数が少ないので、欲求不満の方は是非とも読むのをおススメします。

佐伯泰英の「居眠り磐音江戸双紙 第1巻 陽炎ノ辻」を読んだ感想とあらすじ(映画の原作)
坂崎磐音が豊後関前藩を出て江戸で暮らさなければならなくなった事件から物語は始まる。居眠り磐音の異名は、磐音の師・中戸信継が磐音の剣を評した言葉である。

また同じく佐伯泰英の「密命」シリーズの第1巻は、作者が語るように「用心棒日月抄」を意識して書かれました。

ただし、シリーズとしては「用心棒日月抄」の雰囲気はありません。興味がある方は「密命」シリーズもおススメです。

佐伯泰英の「密命 第1巻 密命-見参!寒月霞斬り」を読んだ感想とあらすじ
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忠臣蔵・赤穂浪士もの

忠臣蔵ゆかりの地

映像化

  • 1992年にNHKの金曜時代劇で「腕におぼえあり」の原作の一つとしてドラマ化されました。「腕におぼえあり」はシリーズ3まで放送されました。
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内容/あらすじ/ネタバレ

犬を飼う女

青江又八郎は訳あって許嫁の父を斬って脱藩した身である。江戸に逃げたはいいが、日々の暮らしに事を欠き始め、相模屋・吉蔵に仕事を斡旋してもらうことになった。その仕事は、田倉屋の妾の飼っている犬の用心棒だった。徳川綱吉の治世、生類憐みの令が出て、犬を飼う事自体に慎重にならざるを得ない。まして、飼っている犬が襲われたことがあった場合には尚更である。

さて、犬の用心棒を務める又八郎に、田倉屋が教えたのは、播州赤穂の浅野内匠頭が吉良上野介を斬ったというものだった。

娘が消えた

前回目の前で仕事を攫われ、犬の用心棒をやる羽目になった又八郎。その仕事を攫ったのが、細谷源太夫である。細谷と知り合いになった又八郎は、播州赤穂の浪人が吉良上野介を襲うという噂があると教えてくれた。又八郎は、対して興味を持たずに、相模屋から紹介された用心棒の仕事に精を出す。今度は清水屋という商人の娘の用心棒である。

梶川の姪

相模屋が幕政を仕切っている柳沢出羽守保明から人を頼まれたという。その紹介にあずかって、又八郎はこの仕事を引き受ける。今回の仕事は細谷源太夫と一緒である。二人の仕事は梶川与惣兵衛という旗本の用心棒である。一度、梶川は襲われているらしい。そう教えてくれたのは、梶川の姪の千加で、二人が用心棒を始めてからのことだった。

夜鷹斬り

又八郎と同じ長屋に住んでいるおさきという夜鷹の用心棒をすることになった又八郎。おさきは何者かに尾行されているらしい。そのおさきが殺された。仲のよかったお杉という夜鷹に聞くと、ある日武家二人を誘おうとして駄目だったことがあった。その時におさきは「大石」という人の話をちらっと聞いていたらしい。大石とは播州赤穂・浅野家の家老・大石内蔵助のことだった。

夜の老中

相模屋が提示した条件はよかった。飛びついた又八郎だが、実は細谷源太夫がこの仕事で斬られていたことが判明した。かなり危険な仕事らしい。その仕事は小笠原佐渡守が外出する際の用心棒ということだった。この小笠原佐渡守が外出する先では、なにやら秘密めいた会合が開かれているようで…

内儀の腕

又八郎が用心棒として働く事になったのは、備前屋徳兵衛の店だった。この店の内儀おちせが外出する際の用心棒というのが仕事である。今回は塚原左内という男が又八郎と組むことになっている。この塚原左内は頼りない感じがする。しかし、又八郎はあることで塚原左内に不審を抱く。

代稽古

用心棒でなく、道場の代稽古の仕事が来た。手当はよくないものの、性分に合う仕事のため、又八郎はいそいそと働きに出かける。道場主は長江長左衛門という。この長江は道場を又八郎に任せっきりで、外出することが多い。

内蔵助の宿

相模屋の紹介してくれた仕事は、少し離れたところだった。川崎宿の北西にある平閒村にやってくる垣見五郎兵衛という男の用心棒だった。平閒村に赴いた又八郎は、そこが播州赤穂の浪人どもの巣窟であることに気が付く。

吉良邸の前日

青江又八郎と細谷源太夫は気が進まぬものの、吉良邸の用心棒を務めることになった。吉良邸にいる又八郎を土屋清之進が尋ねてきた。そして又八郎に手紙を渡した。手紙には藩に戻ってこいという内容と供に、許嫁の由亀が又八郎の祖母と暮らしていると書かれていた。

最後の用心棒

細谷源太夫と相模屋・吉蔵に見送られ、藩に戻った青江又八郎。中老の閒宮に呼ばれてある事を聞かれる。又八郎が許嫁の由亀の父を斬って、脱藩した理由となった事柄である。

本書について

藤沢周平
用心棒日月抄
新潮文庫 約三九五頁
連作短編
江戸時代 徳川綱吉の治世

目次

犬を飼う女
娘が消えた
梶川の姪
夜鷹斬り
夜の老中
内儀の腕
代稽古
内蔵助の宿
吉良邸の前日
最後の用心棒

登場人物

青江又八郎
細谷源太夫…作州浪人
吉蔵…相模屋

平沼喜左衛門
由亀…又八郎の許嫁

大富丹後…家老
閒宮中老

【各短編の登場人物】
犬を飼う女
 おとよ…妾
 田倉屋徳兵衛
 新吉

娘が消えた
 およう
 芳之助…小唄の師匠
 喜八

梶川の姪
 梶川与惣兵衛
 千加…姪
 石黒滋之丞

夜鷹斬り
 おさき…夜鷹
 お杉…夜鷹

夜の老中
 小笠原佐渡守

内儀の腕
 塚原左内…用心棒
 備前屋徳兵衛
 おちせ…内儀
 土屋清之進

代稽古
 長江長左衛門…道場主
 おりん…小唄師匠

内蔵助の宿
 垣見五郎兵衛
 おりん…小唄師匠

吉良邸の前日
 土屋清之進

最後の用心棒
 大富静馬
 佐知

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