藤沢周平「橋ものがたり」の感想とあらすじは?

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橋を舞台にした十の短編で構成されている短編集です。

それぞれに出会いと別れの場所になっているのが「橋」です。

この橋を印象的にかつ効果的に使っている優れた短編集です。

重要な舞台装置になっている「橋」は次の通りです。

  • 「約束」では小名木川の萬年橋
  • 「小ぬか雨」では親爺橋
  • 「思い違い」では両国橋
  • 「赤い夕日」では永代橋
  • 「小さな橋で」では名もない橋
  • 「氷雨降る」では大川橋
  • 「殺すな」では永代橋
  • 「まぼろしの橋」では笄橋、鳥越橋
  • 「吹く風は秋」では猿江橋
  • 「川霧」では永代橋

三作品中に出てくる永代橋です。

現在は、欄干に照明があてられ、夜には風情のある橋となっています。

大川(隅田川)に架かる橋の中で、最も夜景に映える橋の一つでしょう。

一度訪れてみるといいかもしれません。

本作に影響を受けた作品として、あさのあつこの「弥勒の月」が知られています。

オススメの藤沢周平7作品+1シリーズ

  1. 蝉しぐれ
  2. 三屋清左衛門残日録
  3. よろずや平四郎活人剣
  4. 秘太刀馬の骨
  5. 「彫師伊之助捕物覚え」シリーズ
  6. 霧の果て-神谷玄次郎捕物控
  7. 橋ものがたり 本作
  8. 風の果て

ここから先はネタバレがあります。

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内容/あらすじ/ネタバレ

約束

幸助は錺師の年季奉公が明けたばかりで、家の戻ってきたのである。この日、幸助は女に会うために出かけた。女とは五年ぶりに会うことになる。

奉公している幸助のもとにお蝶がたずねてきたのは五年前のことだった。お蝶は深川に引っ越すからという別れを言いに来たのだった。その時に五年たったら会おうという約束をしたのだった。

しかし、約束の時間になってもお蝶は現れない。五年も前の約束である。その間に人は変わるのだ。現に幸助も変わっているのだ…

小ぬか雨

裏口を閉めに行ったおすみは思わず叫びそうになった。男がうずくまっていたからだ。男は追われているという。おすみは男を匿うことにした。男はなぜ追われているのかは言わなかった。

おすみには勝蔵という職人と所帯を持つことになっていた。男を匿っている時に勝蔵がやってきて、おすみはヒヤリとする。その後、男は出て行こうとしたが、出て行けなかった。まだ見張りがいたからである。
一体男は何をしたのか?

思い違い

源助は両国橋にかかると、きょろきょろとみる。いつもこの時間に擦れ違う女がいるのだ。朝と夕方に会う。きっと、川向こうに家があって、両国広小路界隈か神田のあたりに通い勤めをしている娘だろうと思っていた。この娘と思いがけないことがもとで源助は言葉をかわすようになった。

この思いがけないことがあった後、親方から呼ばれた。そして切り出されたのは、親方の娘・おきくとの縁談だった。しかし、源助の心の中には橋で擦れ違うおゆうという娘への思いがあった。

赤い夕日

夫の新太郎に女がいると言ったのは、先日辞めさせられた七蔵であった。おもんはこのことを最近気にするようになった。おもんは十八の時に新太郎には言えない秘密を抱いたまま若狭屋の嫁になった。

そこに斧次郎からの使いという男がおもんを訪ねてきた。斧次郎はおもんが物心ついた頃から一緒に暮らしていた。実の父親だと思っていたが、ある時斧次郎自らそれを否定した。だから、おもんは嫁にはいる時孤児として育ったことにしていたのだ。その斧次郎が病に倒れているという。おもんは意を決して会いに行くことにした。しかし…

小さな橋で

広次は朝吉の遊びの誘いを我慢して、台所仕事をしていた。これが一段落すると、広次は店で働いている姉・おりょうを迎えに行くのだ。迎えに行くのは、おりょうが重吉という手代とできているから、夜遊びをしないように連れて帰るためだった。だが、広次にはまだ”できる”ということが解らないでいた。こうして、広次が遊びたいのを我慢して姉の迎えに行かなくてはいけないのは、ひとえに父親が突然姿を消したからだった。

ある日、広次がいつもより少し遅くなって、姉を迎えに行ったら、姉はいなかった。というよりも、店に来ていないのだという。急いで重吉を訪ねてみると、重吉もいない。二人は”駆け落ち”をしたのだと回りが言う。広次にはよく解らないが、大変なことが起きたのだけはわかった。

氷雨降る

吉兵衛は最近、家に居場所がなくなりつつあるのを感じていた。一所懸命働いたのは何だったのかとも思うのだ。吉兵衛と、おまさ、息子の豊之助の間の溝は深まっていくばかりである。そんなときは昔からの馴染みのおくらのところへ飲みに行くのだ。

おくらのところで飲んだ帰り、吉兵衛は橋の上で川を見下ろしている女に出会う。この女はおくらの店に行く時にも見ている。それからずっといたらしい。吉兵衛はその女を放っておけなかった。女はおひさといった。このおひさには何かがあるらしく…

殺すな

吉蔵が帰ると、家に入る前に小谷善左エ門のところにより、吉蔵がいない間のお峯の様子を聞いた。吉蔵は三年前、小さな船宿の抱え船頭だった。その時の船宿のおかみがお峯だったのだ。お峯が吉蔵を誘って、駆け落ちをしたのだった。それからは、人目につかないような生活をしてきたのだが、近頃お峯がもしかしたら、もとの家に戻りたいのではないかと思い始めていた。

だが、吉蔵はそんなことはさせたくなかった。お峯に未練がたっぷりあるのだ。

まぼろしの橋

おこうは呉服屋美濃屋の娘だったが、美濃屋のもらい子であった。そのことはべつに隠しだてをしなかったので、美濃屋と親しいものは皆知っていた。おこうが美しい娘に育った十八の時に美濃屋の跡取り息子・信次郎の嫁になることになったのだ。

最近おこうは実の父親の顔が思い出せそうになることがある。そのおこうを実の父親・松蔵の知り合いだという弥之助という男が訪ねてきた。おこうはこの弥之助と話している内に弥之助が実の父親ではないかと思えてきた。しかし…

吹く風は秋

弥平が江戸に戻ってきたのは足かけ七年ぶりのことだった。弥平は賭場でいかさまをやり、このいかさまを承知している親分の喜之助まで騙して金の一部を掠め取ったのだ。このことがばれて、弥平はすぐに江戸を離れたのだった。

江戸に戻ってきた弥平は弟分の徳次のところに行く途中である女に出会った。女は女郎屋で働いていたのだ。弥平はこの女と寝て、身の上の話を少し聞いた。そして、弥平はこの女の亭主という男に会ってみたのだが…

川霧

おさとが新蔵のもとから突然消えて一年半たつ。おさとと出会ったのは六年前のことだった。橋で倒れたおさとを介抱したのだ。

おさとは酌取りをしている女だった。新蔵は一度覗いてみるつもりで、おさとの働いている店に行ってみた。そして、しばらく通った後、ある出来事をはさんで二人で暮らすようになった。しかし、おさとが突然消えた。最近、新蔵にはその理由がわかってきていた。

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本書について

藤沢周平
橋ものがたり
新潮文庫 約三三〇頁
短編集
江戸時代

目次

約束
小ぬか雨
思い違い
赤い夕日
小さな橋で
氷雨降る
殺すな
まぼろしの橋
吹く風は秋
川霧

登場人物

約束
幸助
お蝶
お近

小ぬか雨
おすみ
勝蔵
新七

思い違い
源助
おゆう
友五郎
おきく

赤い夕日
おもん
新太郎
七蔵
仙助
斧次郎

小さな橋で
広次
おりょう…姉
おまき…母親

氷雨降る
吉兵衛
おまさ
おくら
おひさ

殺すな
吉蔵
お峯
小谷善左エ門
利兵衛

まぼろしの橋
おこう
信次郎
弥之助

吹く風は秋
弥平
徳次
喜之助
おさよ

川霧
おさと
新蔵

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