藤沢周平の「逆軍の旗」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

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覚書/感想/コメント

あとがきで「ありもしないことを書き綴っていると、たまに本当にあったことを書きたくなる」といっているように、歴史上の事件を扱った短編集である。

「逆軍の旗」は明智光秀を扱い、「上意改まる」「二人の失踪人」は藤沢周平の郷里の歴史を題材にとったものである。

最後の「幻にあらず」は上杉鷹山を主人公とした短編である。だが、この作品は今ひとつ納得がいかなかったらしく、藤沢周平は最晩年に「漆の実のみのる国」で再び上杉鷹山を取り上げている。

「幻にあらず」でチラと出ている、細井平州を巡るエピソードは「夜の橋」に収録されている「一夢の敗北」に詳しいので、そちらを読まれると良い。

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内容/あらすじ/ネタバレ

逆軍の旗

明智光秀は吉蔵からの報告を聞いた。その報告では、信長は信孝らの軍勢から離れ、本能寺に宿泊するようである。光秀を酩酊に近い誘惑が襲ってくる。信長が射程距離にいる。

そのころ、紹巴は光秀と過ごした句会での光秀の発句を思い出していた。「時は今あめが下しる五月哉」。これは光秀の志を述べたものではなかったのか。紹巴は信長と光秀の不仲の噂を俄に身近に感じていた。

光秀は明智秀満を呼んで、その決心を伝えていた。信長を討つ。信長を討つことは出来るだろう。その後が問題だった。やがてひと合戦あるだろう。その相手は秀吉になるに違いない。面白い。光秀はそう思った。

上意改まる

北条の娘・郷見からの手紙が片岡藤右衛門に届いた。女は大胆なことをするものだと思った。郷見の父・北条六右衛門と、藤右衛門の長兄で戸沢藩家老を勤める片岡理兵衛とは犬猿の仲である。それにも関わらず、藤右衛門と郷見の仲はよかった。

その郷見が寄こした手紙には大事のことがあると書かれていた。それは、片岡一族に対する容易ならぬ陰謀が張り巡らされているということであった。そのために密書が江戸に送られるという。

兄の理兵衛は相手をやりこめすぎる。そのため、回りには敵が多い。家老の戸沢伝右衛門、本堂右近とも反目している。何よりも、理兵衛は主君・正誠をやりこめてしまったことがある。

藤右衛門は密書を江戸に送ってはまずいと思った。殺意が動くのを感じた。

二人の失踪人

岩手郡雫石村は南部藩の盛岡から西に行ったところにある。この静かな村で旅籠を営んでいる孫之丞が殺された。殺したのは仙台浪人を名乗る村上源之進である。

発端は博奕を源之進が孫之丞の旅籠でやろうとしたことから来ている。孫之丞は博奕をやらせなかったが、それが気に入らなく、挙げ句の果て、村上源之進は孫之丞を殺してしまった。孫之丞の息子・丑太はその現場を見ていた。だが、何も出来なかった。

五年後、丑太が姿を消した。母は村上源之進を追ったのだと直感した。そして、今度は丑太を探しに兄の安五郎が家を出た。

幻にあらず

竹俣当綱は今さっき会った米沢藩・上杉家の養子となる直丸を思っていた。英明の素質があるとしても間に合うか。

米沢藩は破産寸前だった。もともと豊かでない藩の財政は藩祖・上杉景勝の時代からのことである。決定的な打撃を与えたのは、現藩主・重定の代になってからの幕府からの工事命令と、凶作であった。

その前に、藩を牛耳っている森平右衛門利真を排除しなければならない。森の政策で藩が立ち直ることはあり得ない。当綱は確信していた。当綱は森の排除に成功する。

そして、若い君主・上杉治憲を迎える。森を排除してから六年がたっていた。上杉治憲は米沢に入るに当たって、事前に倹約令等を出していた。だが、好意的に取られていたわけではなかった。改革は険しそうである。

本書について

藤沢周平
逆軍の旗
文春文庫 約二七〇頁
短編
戦国時代 明智光秀 他

目次

逆軍の旗
上意改まる
二人の失踪人
幻にあらず

登場人物

逆軍の旗
明智光秀
明智秀満
吉蔵
紹巴

上意改まる
片岡藤右衛門
片岡理兵衛…長兄
小林多兵衛…次兄
北条六右衛門
郷見…六右衛門の娘
戸沢伝右衛門
本堂右近

二人の失踪人
丑太
安五郎…丑太の兄
村上源之進

幻にあらず
上杉治憲
上杉重定…前藩主
竹俣当綱
藁科松柏
莅戸善政
森平右衛門利真

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