佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控 第8巻 銀のなえし」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第八弾

題名にもなっている「なえし」とは「なやし」「萎し」とも呼ばれたり書かれたりする打ち物隠しの武器のようだ。鈎も鍔もなく、鉄製の短棒のようなもので、簡略化された十手の一種。

このなえしが銀で拵えているのだから贅沢なものである。

これで、金流しの十手に、銀のなえしと、金銀が金座裏にそろうことになった。金銀ときたから、まさか、次は銅ということは…。まぁ、そんなことはあるまい。

さて、前作で十代目の披露をされた政次。金座裏の跡継ぎも決まり、新たな鎌倉河岸捕物控の始まりとなった。…はずだったが、今回も、新たな展開が。

そのため、起きる事件もちょっとばかり小ぶりな感じである。

今回の主題は、金座裏に新たに加わる「銀のなえし」と、今後の物語に大きな影響を与える新たな展開を織り込むことにあるようで、そういう意味では前作同様にシリーズの転換期と位置づけてよいものかもしれない。

この新たな展開は、本作では完結はしないので、もう少しこの転換期が続くと見てよいだろう。

そして、転換期ということは新たな脇役の登場も期待できる。今度どういう人物がシリーズに加わるのかが楽しみである。

ちょっと話が戻るが、今回新たに金座裏の名物に加わった「銀のなえし」。

当面は政次が使うことになるが、政次が十代目宗五郎を継いだら、当然金流しの十手に持ち帰ることになる。とすると、銀のなえしはどうなるのだろうか。

あり得るパターンがいくつかあるが、個人的には亮吉に引き継いで貰いたいと思っている。出来れば、その頃には八百亀のあとを継ぎ、政次を助ける金座裏の番頭格になっていてもらいたいものだ。

だけど、そこまで亮吉が成長してくれるかねぇ…。

成長といえばしっかりものの庄太。

最近は鎌倉小町とも呼ばれているしほが目を見張るような精神的な成長ぶりである。

例えば次の言葉。

「うちは旦那に願えばいつでも休める。だからさ、普段休めない小僧さん方が町に出る今日くらい働いてもてなさないとな」

他にも、弟や妹にあげるお土産の飴や干菓子は自分が貰ったものを食べたいのを我慢して取っておくなど、心優しい面もみせている。

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内容/あらすじ/ネタバレ

寛政十一年(一七九九)。

神谷丈右衛門道場に道場破りが現れた。中国筋の大名家に仕えていた渡辺堅三郎と名乗る武術家である。草鞋銭稼ぎのための道場破りという。相手をしたのは政次だった。

この勝負政次が勝ったが、それは渡辺堅三郎が満足な食事をとっていなかったためのようである。

しほ、政次、亮吉、彦四郎の四人が集まって浅草寺から羽子板市の見物へと繰り出した。

その帰り、荷足船の船頭が船をすり替えられたと騒いでいる。積まれていたのは金無垢の仏像と仏具、それと金箔であったが、それがぼろぼろの古着になっている。どうやら狙われてすり替えられたらしい。

調べてみると、五隻の荷船が盗まれていた。となると、このすり替えは当分続く可能性がある。

過日の礼にと政次に銀のなえしが贈られた。それともうひとつ、細工も豪奢に凝った菊文金銀びらびら簪も贈られた。

こうしたことがあってすぐ、年越しとなった。

が、年も越すか超さないかのときに担ぎ蕎麦屋当たり矢の文吉が駆け込んできた。本石町の質屋中屋一家が皆殺しになっているというのだ。金座裏の年越しの宴が吹っ飛んだ。

中屋へは毎年年越しそばを文吉が送り届けている。犯人はどうやら文吉を装って入り込んだようだ。

年が明け、政次と亮吉は見回り方々町内の年始回りに出た。途中で、渡辺堅三郎に出会い、豊島屋で落ち合う約束をした。

渡辺堅三郎が豊島屋を去ると、今度はわ組の鳶の連中がなだれ込んだ。そして、この鳶の連中が騒ぎを起こし、政次と亮吉がその場をおさめた。だが、このことに収まりがつかない鳶が一人いた。唐獅子の鏡次である。

神谷道場の鏡開きの日。政次が道場に行くと渡辺堅三郎はいなかった。そして、東西勝ち抜き戦を終え、政次は若い道場仲間達と談笑をしている時に、一度金座裏に遊びに行きたいという話になり、十五日の小正月に集まることになった。

正月気分が残る中、政次達の目の前で巾着を斬って十五、六の少年少女六人ほどが逃げた。

正月の十五日、十六日は藪入りである。この日、約束通り政次の道場仲間が金座裏に姿を現わした。

そして、皆と話している中で渡辺堅三郎の話が出た。

本書について

佐伯泰英
銀のなえし
鎌倉河岸捕物控8
ハルキ文庫 約二九〇頁
江戸時代

目次

序章
第一話 荷足のすり替え
第二話 銀のなえし
第三話 唐獅子の鏡次
第四話 巾着切り
第五話 八つ山勝負

登場人物

渡辺堅三郎
龍吉
多助…荷足問屋の船頭
宇平…川浪の番頭
十左衛門…加賀屋の主
照蔵…加賀屋の番頭
山科屋長右衛門
文吉…担ぎ蕎麦屋
中屋光右衛門
盛右衛門
糸屋の金五郎
おはつ
唐獅子の鏡次
史吉…わ組の頭取、鳶の頭
生月尚吾…政次の道場仲間
青江司…政次の道場仲間
おしま
勘太郎
物詰丹後
寧々
歳三…高輪の親分
寛三郎

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