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海音寺潮五郎の「乱世の英雄」を読んだ感想とあらすじ(面白い!)

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覚書/感想/コメント

あとがきで荻生徂徠の言葉「いり豆をかじりつつ古今の英雄豪傑を罵倒するは人生最上の快事である」を引用している。

もっともこうできるのは荻生徂徠程の学識がなければできないことで、相応の知識や見解を持たなければならない。

本書は歴史の蘊蓄が色々と詰まっているので、こうした楽しみを味わう一つの手助けにはなるだろうと思うし、そうでなくとも面白く読める本である。

【ピックアップ】
兵法者:無数にある流派でどれが優れているかを論じるのはあまり意味がない。というのも、優れた天才が出てくればその流派が名高くなり、天才が何人もでればなおさらである。

だが、剣術家は互いに自派の優秀を主張する。でないと飯が食えないからだ。そのため、積極的に宣伝をし、消極的には自流の名を落とさないように気を配ってきた。彼らが他流試合を嫌ったのもここいらに起因する。

面白いことに一流の剣客には人を斬ったことのない人が多い。維新志士の中でも一流の連中は斬っていない。

玉の輿物語:将軍家には直接に百姓の女に手がついて生まれた子が時代の将軍になっている例がある。四代将軍家綱、五代将軍綱吉。

お大名:徳川吉宗の時代。薩摩の世子島津宗信。将軍のお目見えは六歳の時だが、この時から剛胆である。尾張家での出来事や、柳営での狂言の出来事など、大胆な所行である。

戦国英雄の性格解剖:謙信は高血圧、信玄は低血圧ではなかったか。死に方もその可能性を示している。そして、これがそれぞれの性格にも強く表れているように思われる。謙信は平生兵の訓練をしないが、信玄は念入りに訓練をする。謙信は戦争をするが領土拡大にはあまり役立たないことがある。対して信玄は確実に土地を獲得しいく。

この二人が旧時代の英雄であるとするなら、信長は新時代の英雄である。秀吉は身分の高い女性を好み、家康は身分の低い女性を好んだ。
鶏肋集:歴史文学において、現代人の常識を当てはめて歴史を解釈して書く方法は、日本では芥川龍之介、菊池寛、吉川英治氏等で終わっている。これからは現代人としての常識を具えながら、その当時の歴史をふまえて書く方法が新しい道である。

国文学に造詣のある谷崎潤一郎氏ほどの作家が、古典、文学、普通史学の目では読んでいても、社会史、民俗学的に読むことはしなかった。

…短くて、なぞめいた方がありがたそうなのは文章の上にもいえる。文学青年に神様のようにありがたがられる評論家の文章の秘術は「所々、三四行ずつ消すんだ。消したって、もともと一貫した文章だから裏の脈絡はあるが、表面的には断層ができる。だから、読者は、そこまで読むと戸惑い、考える。そして切られた脈絡を発見する。難解を超えた喜びが感じられるのだ。」。(注:おそらく小林秀雄のことを言っていると思われる)

物語武勇伝:一九〇〇年前後に生まれた人々とそれ以後に生まれた人との考える豪傑は違う。前者は鎮西八郎為朝、加藤清正。後者は立川文庫の影響で真田十勇士、後藤又兵衛、塙団右衛門。それ以後になると、今度は大衆文学と映画の影響で、丹下左膳、鞍馬天狗、宮本武蔵となる。

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本書について

海音寺潮五郎
乱世の英雄
文春文庫 約二四五頁
随筆

目次

兵法者
玉の輿物語
お大名
戦国英雄の性格解剖
鶏肋集
乱世の英雄
物語武勇伝
正宗と村正
西郷南洲の悲劇
西南戦争遺聞
狂気の武蔵
最初の電話と日本人
王朝時代の幽霊
明治維新史管見
あとがき