『真田太平記』ではなじみとなっている城です。
この沼田城を舞台にした物語が、本書になります。
そういう意味で、『真田太平記』の外伝として読めば一層面白いと思います。
『真田太平記』では、沼田城を鈴木主水が城代となって守り、やがては豊臣秀吉が北条征伐するための口実として利用される舞台となるところが詳しく描かれています。
沼田城は、沼田氏から始まり、真田家の城になり、江戸時代に真田分家の城となります。
沼田城を中心に考えると、池波正太郎の作品の中では、本書⇒『真田太平記』⇒『獅子』の順で読むと面白いかも知れません。
内容/あらすじ/ネタバレ
上州沼田を本拠とする沼田万鬼斎は、周囲を上杉、武田、北条に囲まれつつも、領土の拡大に野望を燃やしていた。その万鬼斎が金子新左衛門という地侍の娘・ゆのみを気に入り、側妾として城へ連れて帰る。
金子新左衛門は一介の地侍としてではなく、侍大将となることを考えていた。そのために娘を差し出したようなものだった。
やがて、ゆのみは平八郎と名付けられる息子を生む。しかし、上には武将としても優秀な弥七郎朝憲がいる。このままでは万鬼斎の亡き後は自分の身の上が心配になったゆのみは、いつしか平八郎を跡継ぎにと考える。
一方、金子新左衛門もより強い権力を手に入れるために娘と孫を利用しようと考える。
戦国の世も終盤にさしかかり、天下は織田信長を中心に回り始め、沼田の周囲の状況も大幅にかわりつつあった。しかし、沼田万鬼斎や金子新左衛門はそのような状況にかかわらず、一種の権力闘争に追われていた。
本書について
池波正太郎
まぼろしの城
講談社文庫 約二四〇頁
戦国時代 真田もの外伝
目次
まぼろしの城
登場人物
沼田万鬼斎
沼田弥七郎朝憲…三男
沼田平八郎…四男、ゆのみの息子
金子新左衛門
ゆのみ…新左衛門の娘
和田十兵衛光政…沼田弥七郎の家来
上杉謙信
北条氏康
真田昌幸