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山本一力の「はぐれ牡丹」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

江戸時代頻繁に行われた改鋳。その都度、幕府は多額の利益を得ていた。仕組みは簡単である。貨幣に含まれる金の含有量を減らすのだ。例えば一両小判が十枚ある。つまり十両である。

仮に、この一両小判は純粋な金だとする。改鋳する時には、一両小判が十枚を溶かす。これに金以外の金属を含ませることによって、量を増やす。そして、一両小判を十一枚作る。これで、一枚分が浮き上がる。幕府のもうけである。

この改鋳を行うと、改鋳前と改鋳後の貨幣に含まれる金の含有量が大幅に異なることになる。市中では当然嫌われることになる。

貨幣に関しては洋の東西を問わず、この様な改鋳に関しては様々な出来事がある。だが、金本位制の時代の話であって、現在のような信用経済の世の中とはだいぶ違う時代の話である。

さて、本書は一言で言えば大味な物語である。痛快時代劇と捉えることも可能かも知れないが、設定に無理がある。山本一力の作品としては残念な内容である。

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内容/あらすじ/ネタバレ

深川冬木町の八兵衛店に住む一乃は息子・幹太郎をつれて野菜の担ぎ売りをしている。今日も仕入に出かける。仕入先はおせきの所と決めている。おせきの子供が夫・鉄幹のやっている寺子屋に通っている関係で親しくなったのと、おせきの作る野菜がとてもよいからなのだ。

おせきの所に着くと、おせきが待っていた。そして、筍掘りを手伝うことになった。手伝っている最中、一乃は一分金を拾った。なぜこんなところで。疑問に思った一乃はおせきには黙ることにした。

担ぎ売りの仕事を終えて家に戻った一乃は一分金を眺めた。一乃の実家は両替商である。実家を飛び出して鉄幹と夫婦になったのだが、それまでは実家でよく一分金を見ていた。だからこの一分金が見慣れた一分金とは違う気がした。

一乃は実家の人間に見てもらうことにした。この数年間実家には足を向けていないが、こういうものは実家に頼るしかなかった。もしこれが贋金なら大事であるからだ。

ただ、自分で実家にいくのは憚れたので、八卦見師の白龍に託した。白龍は実家の本多屋に出入りしていたからだ。

両替商・本多屋で主の木三郎が難しい顔をしていた。娘・一乃が持ち込んだ一分金である。この一分金は一昨年から通用が始まった文政一分金である。一乃が持ち込んだのはこの文政一分金の贋金だった。一体何者が?何のために作ったのか?

一方、裏店では産婆・お加寿の所におかねが出産のためにやってきた。夫は清吉という印判師である。もうすぐ生まれそうという時になっても清吉が現れないので、お加寿は手伝いのおあきとその兄・分吉に迎えに行ってもらうことにした。

だが、この清吉の家で待っている間に、おあきは何者かに連れ去られてしまった。そして、清吉の家は至る所がひっくり返されていた。一体何を探していたのか?そして、さらわれたおあきの運命は?

本書について

山本一力
はぐれ牡丹
ハルキ文庫 約二六〇頁
長編
江戸時代

目次

はぐれ牡丹

登場人物

一乃
鉄幹…夫
幹太郎…息子
分吉…左官職人
おあき…分吉の妹
お加寿…産婆
清吉…印判職
おかね
本多屋木三郎…両替商、一乃の実家
静乃…妻
嘉兵衛…番頭
安次郎
白龍…八卦見師
おせき…農婦
富蔵…おせきの夫、婿養子
松次郎…花火師
庄次郎…板前
寅吉…賭場の元締
松前屋平兵衛…商人
弥五七