鈴木英治の「手習重兵衛 第3巻 暁闇」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約6分で読めます。
記事内に広告が含まれています。
スポンサーリンク

覚書/感想/コメント

シリーズ第三弾。このシリーズはだんだんと面白くなっていく。そして、本作で多くの事がわかってくる。

まずは、第一作目で重兵衛が国から追われるようにして逃げなければならなかった事件の真相がついに明かされる。

事件は、信州高島諏訪家三万石の目付である重兵衛が、国家老、国家老の屋敷に出入りしていた商家、富くじを主催した商家の関係を調べているところから始まる。不正があったのではないかという疑いだ。

だが、重兵衛は調べているうちに国家老の関与に疑問を抱くようになる。そうしているうちに、今度は重兵衛の方が思い当たることのない罪を着せられてしまう。そして江戸へ逃げてくることになるのだ。

もう一つわかることは、剣の達人という設定の重兵衛が遣う剣が、諏訪真伝流であること。そして地蔵割りという秘剣を重兵衛は遣うことがわかる。本作では重兵衛が怪しい集団を相手に地蔵割りをつかって暴れる姿が描かれている。

信州高島諏訪家にはもう一つ盛んな流派があるようで、重兵衛を兄の敵として登場する松山輔之進は妙貫流を遣う。
さらにもう一つわかることはこのシリーズの時代設定だ。

『七十年以上も前の宝暦年間に「二の丸騒動」と呼ばれる御家騒動があった』と書かれている。

宝暦年間は1751年から1763年までの期間であるから、その70年後というと、1821年から1833年までの期間ということになる。文政四年から天保三年ということになる。将軍は十一代将軍徳川家斉である。この期間ということになると、格別の事件は起きていないようである。

さて、本作で登場し、次作以降に大きく関わってくるのが遠藤恒之助と乙左衛門である。

遠藤恒之助の剣はすさまじく、重兵衛を苦しめる。次作以降でどう対峙していくのかが楽しみだ。

一方、乙左衛門は、第一作でチラリとだけ顔を出した手習師匠であり、その正体とは…。

スポンサーリンク

内容/あらすじ/ネタバレ

斬られた男が仰向けにされ、ひざまずいた男が懐を探っている。懐にはものがない。舌打ちとともに「誰に託した」と聞いてきたが、男は鼻を鳴らし、どのみち誰かはわかっている、という。本当なのか…。

興津重兵衛が村に来てから半年がたった。田左衛門は重兵衛におそのを嫁にとるつもりはないかと聞いてくる。重兵衛は侍であったことを忘れ、このまま老いてゆくのも悪くないなと思っていた。

松山輔之進が木挽町にある藩邸に入っていった。江戸家老の石崎内膳に面会した。本来なら仇討旅に出ることで、主家から離れることになるのだが、内膳の強い要望で上屋敷に滞在することができる。その礼を言った。

早速、仇である興津重兵衛らしき人物の話が聞けた。どうやら麻布付近にいるらしい。興津は剣の達人だ。おそらくは道場などで剣を教えているのだろう。

お律が泣きそうな顔をしている。おとっつぁんが変な場所に行ったまま帰ってこないのだという。

重兵衛は品川宿へ行き、女郎宿の川田屋から元吉を連れ戻してきた。だが、重兵衛は川田屋からすんなりと元吉を連れ戻せたのが解せなかった。元吉の五両という借金は消えていないのだ。

輔之進は実際のところ、興津重兵衛に強い憧れを抱いている。兄を殺された今もその気持ちは変わらない。だが、見つけたらやるまでだ。

翌日輔之進は麻布にいってみた。だが歩き回ってもその姿を見つけることはできなかった。

お律が手習に来ていない。重兵衛は危惧が現実のものとなったことを知り、川田屋へ向かった。お律は元吉に売り飛ばされそうになっているのだ。

重兵衛は川田屋からお律を連れ戻してきた。

鳴瀬左馬助は緊張で汗をかいていた。目の前にいるのはとんでもない遣い手だ。これで十七とは…。まぎれもない天才だ。若者は松山輔之進だった。

輔之進は左馬之助らに仇討ちの話をした。そして、その相手が興津重兵衛であることを知った。

手練れが追ってきている。自分では相手にならない。なぜばれたのか。高島からついてきたのだろうか…。

河上惣三郎が二十歳にも達していないような若者の酷い斬殺死体を見ていた。

一方そのころ、石崎内膳は恒之助と呼んでいる男に首尾の程を聞いていた。斎藤も殺し、俊次郎も殺した。遠藤恒之助は下がって、興津重兵衛を思っていた。家老からは待てをかけられている。自分の剣が通じるのか是非とも試してみたいと思っていた。

左馬助は松山輔之進が道場に来たことを重兵衛に告げていた。それを聞いたあと、重兵衛は巻き込まれた事件について左馬之助には知っておいてもらいたかったので、話した。

それは国家老が罠にはめられたと思われる事件についてのことだった。その探索の中で、重兵衛は怪しい集団に襲われたことも話した。

その後すぐに河上惣三郎が重兵衛を訪ねてきた。殺された二十歳くらいの若者は白金村を訪ねようとしていたらしい。おそらくは重兵衛に絡む者だろう。

こうした様子を松山輔之進は外から見ていた。左馬助をつけていたのだ。そして出てきたところで興津重兵衛に挑みかけようとした。

だが、それを河上惣三郎が止めた。今から見に行く仏がもしかしたら重兵衛の弟・俊次郎かもしれないからだ。それを輔之進は了解し、一緒について行くことにした。

やはり仏は俊次郎だった…。

重兵衛は輔之進に俊次郎の仇討が終わるまでの間、暫く待ってくれないかと頼んだ。輔之進はかまわないと言ってくれた。

内膳は輔之進が仇討を延期したことを知り、乙左衛門を呼んだ。乙左衛門は表の稼業として手習師匠をやっている。いい隠れ蓑となっている。実体は諏訪忍びの頭領である。

重兵衛は川田屋の彦七から呼び出された。だが、これは罠だった。重兵衛を襲ってきたのは、忍びのような者達だった。いや、忍者そのものである。

…重兵衛はやつらが張り巡らした幾重もの罠を打ち破ったのを信じられない気持ちでいた。

乙左衛門は内膳と組んでからどうもへまばかりしている気がしている。内膳の命脈が尽きかけているのだろうか。

重兵衛はばれないように藩邸近くに寄った。するとそこに山田平之丞の姿を見つけた。そして平之丞の口から、重兵衛がいなくなってから国許で起きたことのあらましを聞いた。

より詳しい話をしてくれる人物を平之丞が連れてきてくれることになった。その人物は遠藤恒之助だった。

重兵衛が初めて見る太刀筋だ。遠藤恒之助の太刀は伸びてくる。必死になって重兵衛は防戦に努めた…。

本書について

鈴木英治
暁闇
手習重兵衛3
中公文庫 約三〇〇頁
江戸時代

目次

第一章
第二章
第三章
第四章

登場人物

興津重兵衛
興津俊次郎…重兵衛の弟
鳴瀬左馬助
今井将監…江戸家老
堀井新蔵…道場主
奈緒…堀井新蔵の娘
河上惣三郎…北町奉行所の同心
善吉…河上の中間
竹内…北町奉行所の同心
松山輔之進
石崎内膳…江戸家老
遠藤恒之助
大西平六郎
塚本三右衛門…江戸留守居役
山田平之丞
斎藤源右衛門
乙左衛門…手習師匠
お美代
吉五郎
松之介
お律
元吉…お律の父親
おりよ…お律の母親
彦七…川田屋
田左衛門…家主
おその…田左衛門の娘
うさ吉…犬
長太郎…鍛冶屋
お知香
吉乃
松山市之進

タイトルとURLをコピーしました