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佐伯泰英の「酔いどれ小籐次留書 第2巻 意地に候」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第二弾。前作から数ヶ月後。

前作の最後で、「これは一体どうやってシリーズ化になっていったのだろう?」と首をひねってしまったのだが、なるほど、こうきたのですね。

前作で赤目小籐次一人に御鑓を拝借され、藩の面目を丸つぶれにされた四藩。その内の一藩、小城藩の人間が小籐次を狙う。

小城藩は鍋島家。主藩に肥前佐賀藩三十五万七千石鍋島家があり、小城藩と同じ支藩として蓮池藩、鹿島藩がある。このそれぞれを「三家格式」と呼ばれる武家諸法度で密なる繋がりをもっており、本藩の意向は支藩の規範となる。

この藩の繋がりとは別に、精神的な繋がりとして肥前佐賀藩二代・光茂に仕えた山本常朝の口述を著した「葉隠聞書」がある。「武士道とは死ぬことと見つけたり」で知られるものである。

小籐次を狙うのは、藩の意向ではなく、あくまでも私怨であり、「葉隠」の精神によるものであるという。

この「葉隠」は時と場合により、ずいぶん便利に使われたようである。便利にというのは悪い意味でいっている。特に「武士道とは死ぬことと見つけたり」の一文だけが一人歩きをしてしまっているようだ。

だが、「葉隠」は無茶なことを説いているわけではなく、あくまでも心構えを述べているものである。つまり、この一文の場合、死ぬ気で物事に当たれということであり、当たり前だが「死ね」ということを言っているわけではない。

また、「葉隠」は処世術に関する記述も多いようで、こういうときはこうすればよいといった内容のものもあるようだ。

さしずめ、小籐次を狙う小城藩の連中は「葉隠」の精神を歪曲して解釈してしまっている連中ということになるだろう。

さて、しばらくは、この「葉隠」大名家との戦いが赤目小籐次を待ち受けているのだろうか。

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内容/あらすじ/ネタバレ

文化十四年(一八一七)夏。久慈屋昌右衛門の好意で赤目小籐次は新兵衛長屋で暮らすことになった。

小籐次は竹を切りに出かけた先で、昔からの想い人おりょうが襲われる現場に遭遇した。襲った連中を追い払うと、おりょうが小籐次に礼を言い、もしかして豊後森藩の赤目小籐次ではないかとたずねる。

小籐次は驚いたが、おりょうが自分を知っているということで嬉しくもあった。

小籐次は長屋に戻って、切ってきた竹で竹とんぼや竹の風車、鳴子、竹笛などをつくった。研ぎの仕事を始めようと考え、引き出物として子供向けの玩具をつくっていたのだ。

久慈屋昌右衛門が長屋にやってきて、小城藩の能見五郎兵衛を知っているかという。先の御鑓拝借騒動で小籐次は能見五郎兵衛をたおしていた。その嫡男・能見赤麻呂を総大将として、小籐次を狙っているという。

この話をした後、昌右衛門は小籐次の商売用にと小舟を用意してくれた。この小舟をつかって早速仕事に出かけた小籐次だが、客が来ない。

そうしたところ、うづ娘が商う野菜売りの船がやってきた。小籐次はうづの助けもあり、この日の商売が出来た。そして、うづを女郎屋へ売り飛ばそうとしている寅岩の萱造という親分がうづをしつこく狙っていることを知った。そして、とうとう…。

小籐次は赤穂藩の古田寿三郎に会うことにした。小城藩の能見赤麻呂の一件に絡んで、もしや四藩が刺客を放っているのではないかと危惧したからだ。

だが、古田寿三郎はそんな余力はないという。それでも、一藩が先行すれば次から次へと小籐次を狙い始めるかも知れない。そうなると、迷惑を被るのは四藩のはずである。古田寿三郎は早速、小城藩の伊丹にあうと約束した。

古田寿三郎の他、丸亀藩の黒崎小弥太、臼杵藩の村瀬朝吉郎、小城藩の伊丹唐之丞がそろった。ここで、伊丹は小城藩の内部が二分していると述べた。

そして、能見赤麻呂の一行はまだ江戸に入っていないことが確認された。だが、何日前に小籐次は四人組に襲われた。これは一体どういう事か。

小籐次を誘い出す文が舞い込むようになった。いちいちこれに応えた小籐次の体にはいつしか疲労が蓄積していった。そして、四人組が再び姿を現わした…。

依然として、能見赤麻呂の一行十三人は姿を現わさない…。やがて伊丹唐之丞から情報が舞い込んできた。藩主・鍋島直尭の親類筋にあたる田尻藤次郎が江戸に来ており、なにやら策動しているようだという。

そして、ようやく能見赤麻呂を含めた十三人の氏名と剣の流儀が小籐次に報された。

本書について

佐伯泰英
意地に候 酔いどれ小籐次留書2
幻冬舎文庫 約三二五頁
江戸時代

目次

第一章 四人の刺客
第二章 夏の雪
第三章 呼び出し文
第四章 御殿山の罠
第五章 小金井橋死闘

登場人物

勝五郎…版木職人
おきみ…勝五郎の女房
うづ…野菜売り
寅岩の萱造親分
専太郎
ちょろ熊
おさき…魚料理・歌仙楼の女将
観右衛門…久慈屋大番頭
難波橋の秀次…御用聞き
内藤兵部
酒井小平次
小笠原権六
新渡戸和三郎
与平…研ぎ屋
備前屋梅五郎…畳職
神太郎…梅五郎の倅
能見赤麻呂
能見十左衛門
登美造…中間
田尻藤次郎
姉川右門…肥前佐賀藩江戸屋敷御頭人(留守居役)