佐伯泰英の「密命 第5巻 火頭-密命・紅蓮剣」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第五巻。

惣三郎は四十六。白髪の混じり、当時としては老境に入りかけている。剣も若い日のようには修行をしない。だが、石見銕太郎をして、惣三郎の剣は神域に入りかけているようだと言わしめている。剣士として別の次元へと進み始めているようだ。

前作で、大岡越前守忠相に、これ以上の影の仕事はごめんにござる、と伝えている惣三郎だが、そうは問屋が卸さない。

今回の相手は、強盗の上火付けをするという凶悪な火頭の歌衛門一味が相手だ。押し込む先で、執拗に大岡越前守忠相を愚弄する木札を置き去る。

目的は一体なんだ?火付けをする点といい、大岡が進めようとしている町火消の編成をあざ笑うかのようである。とすると、町火消の編成に異議を唱える人間の仕業か?それとも、大岡忠相に別の恨みのある人間の仕業なのか?

さて、町火消の編成が終わり、いろは四十七組が生まれた。芝鳶は「め組」と名を変え、これからも活躍していくことになる。

そして、息子・清之助も逞しく成長し始めている。やがて二人しての活躍が来る日も近いだろう。

すると、池波正太郎の「剣客商売」の要素も加わりそうである。

内容/あらすじ/ネタバレ

享保四年(一七一九)の師走。ひょろりとした長身猫背の頭目・火頭の歌衛門に率いられた凶徒が両替商紀之国屋を襲った。そして襲ったあとには火をつけた。

焼け跡には大岡越前守忠相を愚弄する木札が残されたいた…。

享保五年。金杉惣三郎はおだやかに新年を迎えていた。札差冠阿弥膳兵衛の持ち長屋で、女房のしのと、娘のみわ、結衣に囲まれて隠居のような日々を過ごしている。

惣三郎は荒神屋喜八で喜八の補佐役として帳付けをし、若い人足達の話し相手になり、現場に出ることはなくなっていた。

昨年から始まる火頭の歌衛門一味の犯行は四件に及んでおり、残忍な手口ばかりであった。

お杏が惣三郎を訪ねてきた。芝鳶の辰吉が大岡の命で動いているいろは四十七組の町火消の編成で問題が生じているようだ。ほとほと弱り惣三郎の知恵を拝借したいというのだ。

定火消御役の小出監物から呼び出しがあったという。大身旗本が鳶の頭を呼びつけるのだ。何やら魂胆があるに違いない。大岡の頼みもあり、惣三郎はこの問題に首をつっこむことになった。

町火消編成の問題に続いて、火頭の歌衛門の問題にも惣三郎は関わり始める。

犯人は押し込んだ家の塀を乗り越えた形跡はない。誰かが内から引き込んだようだが、どのようにして引き込んだのかが分からない。

石見銕太郎の道場に出ると、異彩を放つ小柄な若衆がいる。この野津虎之助は暗く見つめる上目遣いの視線と、血に飢えた退廃が漂っていた。

再び火頭の歌衛門が犯行に及んだ。ここで、惣三郎は策を弄することにした。この策によって、火頭の歌衛門一味をおびき出そうとするのだが…

火頭の歌衛門の手がかりがつかめないままの日々が続く。大岡は一味はいったん江戸を離れたと判断しているようだ。この間に、家族で鹿島へ行くことにした。清之助が修行している米津寛兵衛から招待を受けていることもあり、清之助の修行の様子を見たい気持ちもあった。

本書について

佐伯泰英
火頭 密命・紅蓮剣
祥伝社文庫 約三七五頁
江戸時代

目次

序章
第一章 大川端の猪鍋
第二章 車坂の小蝮
第三章 鍾馗の昇平
第四章 鹿島の若武者
第五章 町火消誕生
第六章 みわの手柄

登場人物

火頭の歌衛門
埋火の統五郎
藤岡大三
火付のお千
杵打ちの亀太郎
黄星丸飛虫
早足の丹治
野津虎之助
小出監物…定火消御役
渡辺津兵衛…一羽流
神崎飛雲
内藤帯刀…定火消御役
松平山城守…定火消御役
黒朱染太郎…定火消御役
板倉和三郎…火付盗賊改
土田魯庵…医師
昇平…芝鳶
小杉陸左衛門…水戸藩士
奇助
熊吉
うめ
市川小十郎
市村直次郎
米津寛兵衛
絵鳥秀太郎
鐘正八右衛門

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