佐伯泰英の「密命 第3巻 密命-残月無想斬り」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第三巻。

今回の敵となるのは、百五十六歳となる石動奇嶽である。徳川家にあだをなす妖刀村正をかかげ、金杉惣三郎に襲いかかる。

この石動奇嶽との対決が見物であるが、もう一つの見物は「合戦深川冬木ヶ原」であろう。江戸の市中で、徳川家康と武田信玄が対決した三方原の戦いを再現するのだ。武田信玄役に二代目市川団十郎。徳川家康には…。

前作で、豊後相良藩に累を及ぼさないために脱藩した金杉惣三郎。その後、将軍家と尾張藩を巡る攻防が収束したにも関わらず、帰藩の命が下りない。なぜ惣三郎は帰藩が認められないのか?

この答えは普請奉行から南町奉行となった大岡越前守忠相が答える。

帰藩を斎木高玖に待つように求めたのは大岡越前守忠相であり、それを所望したのが徳川吉宗だという。そして、これからしばらくは吉宗のために働けと言うことになった。

大岡越前守忠相が南町奉行に就任し、惣三郎ゆかりの定廻り同心西村桐十郎も請われて北町奉行所から南町奉行所へ移った。

本作では、悲しい出来事と喜ばしい出来事がある。悲しい出来事は寺村重左ヱ門の死である。そして、喜ばしい出来事は、惣三郎としのの祝言である。惣三郎の子供達がようやく一つの家族になれた瞬間である。

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内容/あらすじ/ネタバレ

江戸城から出てきた人間を、妖刀村正で斬る輩が現れた。斬った死体には血が一滴も残っておらず、死体に樒を指していく。そして、御幣が飾られ、血と書かれていた…

金杉惣三郎は十四歳の息子・清之助と十一歳の娘・みわの二人を抱えて狭い長屋暮らしをしている。半年前までは豊後相良藩の江戸留守居役を務めていた。が藩に累を及ぼさないために、自ら脱藩して浪人となったのだ。

その辺の事情は藩主・高玖も知っているはずである。だが帰藩の命が下りない。

北町奉行所定廻り同心の西村桐十郎がやってきて、再び殺害事件が起きたという。同じく樒が飾られ、今度は火と書かれていた。

今までねらわれてきているのは徳川吉宗に近い人間である。西村桐十郎が心配するのは、次にねらわれる人間がこの前南町奉行になった大岡越前守忠相ではないかということである。

清之助の行状が思わしくない。みわに言わせると好きな女ができたのではないかという。それは当たっていたのだが、厄介な問題になりそうだった。

この問題が片づくと惣三郎は清之助とみわと伴い、飛鳥山のしのを訪ねた。

札差の冠阿弥膳兵衛に呼ばれた。膳兵衛は弱り切っていた。というのも、享保の改革の一環で、札差を許可制にし、蔵前にいる者だけに限るというお触れがでそうなのだ。芝にいる冠阿弥膳兵衛は潰されることになる。

惣三郎は南町奉行の大岡越前守忠相に会う機会があり、このことを聞いた。すると、冠阿弥膳兵衛の大口の融資先を調べよと言う。その中に今回の問題の原因があるというのだ。

その一方で、豊後相良藩に帰藩できない理由が分かった。そして、徳川吉宗のために働けと言う。

大岡越前守忠相を襲う者がいる。惣三郎はその者と対峙する。襲ってきたのは先に樒を飾った暗殺者である。だが、この暗殺者に惣三郎は勝てないと感じた。相手は名を石動奇嶽と名乗る。

惣三郎は石動奇嶽に対抗するために石見銕太郎に相談した。心貫流の奥山佐太夫とも会い、新たな修行を始めることになる。

そして奥山佐太夫が語るには、石動奇嶽は百五十を超える人物だという。

戦国時代を知る妖怪・石動奇嶽は一体何のために暗殺を続けるのか?この手がかりは、甲州にあるようだ…。そして、石動奇嶽の裏には意外な人物の影がちらつく…

本書について

佐伯泰英
密命 残月無想斬り
祥伝社文庫 約三六五頁
江戸時代

目次

一章 品川心中
二章 老武芸者
三章 甲州密行
四章 重左ヱ門の死
五章 合戦深川冬木ヶ原
六章 御鷹狩り
終章 惣三郎の祝言

登場人物

太兵衛…大家
絹子
鉄頭の梨丙…品川宿を仕切る博徒
雀蜂の杉吉
谷村信平…清之助の友人
三吉…芝鳶
栄次…船頭
寺村重左ヱ門
しの
大岡越前守忠相…南町奉行
織田朝七…内与力
奥山佐太夫…心貫流の名人
石動奇嶽
隋翫国師…恵林寺住職
船山庸照…武田八幡神社神官
滝沢兵衛…甲府松平藩の家臣
吾希…滝沢の娘
古市有才
おせん
浪速屋勢五郎
二世市川団十郎
弦兼…研師
佐竹松翁…尾張藩江戸家老
喜多村見城…徳川宗春用人

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