佐伯泰英の「密命 第12巻 乱雲-密命・傀儡剣合わせ鏡」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十二巻。

新生活が始まる直前の棟方新左衛門にとんでもない災難が降りかかりそうだ。棟方新左衛門と夫婦になる約定をしたという女が現れたのだ。

幸いにも、棟方新左衛門は内祝いとして金杉一家に呼ばれて飛鳥山に行っている。この間に何とか問題を解決しておきたい。

だが、この話を聞かされた石見銕太郎は腰を半分浮かして右往左往するほどに狼狽する。名剣術家も形無しの慌てぶりなのだ。

こうして始まる本書。

本書の主人公は、シリーズ始まって以来、金杉惣三郎から金杉清之助に変わった。まだ諸国回遊の修行の旅に出ている清之助。

清之助が事件に巻き込まれるのは紀伊藩でのこと。紀伊藩といえば吉宗の出身藩である。ここで清之助はいったんピンチを迎える。まさに危機一髪である。だが、奇跡的に助かった清之助はこの後どんな活躍をみせてくれるのか?これが、本書の魅力である。

さて、本書から徐々に世代交代が始まっていくのだろうか?清之助も父・惣三郎と同じような道を歩む羽目になるのだろうか?

そして、いつになったら清之助も修行を終え、江戸に戻ることになるのだろうか?江戸に戻ったとして、葉月と夫婦になることがあるのか?…

今後の展開が楽しみである。

内容/あらすじ/ネタバレ

棟方新左衛門と久村りくとの結納が整い、親しき人たちが飛鳥山の菊屋敷に集まってお祝いをしていた。陰暦九月のことで、九月を菊月ともいう。

その祝い事が飛鳥山で行われている頃、車坂の石見道場に旅支度の女が立った。棟方新左衛門を訪ねてきたのだ。

陸奥国弘前から来たという女は新左衛門と所帯を持つために江戸に出てきたという。女は南部染女と名乗った。この話を聞いて泡を食ったのが、石見銕太郎だった。

話を聞くと、六年前に夫婦になる約定を交わしたという。そして、この度手紙を受けたので江戸に上ってきたという。棟方新左衛門の人柄からは信じられない出来事である。

石見銕太郎は花火の房之助を訪ね、ことのあらましを語った。今は飛鳥山に行っている一行が帰ってくるまでに話の道筋をつけておきたいという思いがあるからだ。

それにしても、この話は本当なのだろうか…。

享保八年(一七二三)。和歌山に足を踏み入れた金杉清之助は居合の田宮流道場に拠点を置いて修行していた。清之助はこれまで居合を学んだことがなかった。

この道場に寄宿している内に親しくなったのは園部冶平次という剣術家だった。

その園部が清之助を誘い出し、料理茶屋紀之国屋に案内した。ここで園部が胸中に抱える葛藤を清之助に語った。

こうした中、料理茶屋紀之国屋の娘・お登季を無理矢理に連れ出そうとする武士がいる。新宮藩の水野京之助を名乗っていた。

水野京之助らを退治したことを清之助は田宮道場主の田宮千右衛門に話した。そして、そのまま紀伊藩の町奉行に話を通しておくことになった。

清之助が退治した水野京之助は新宮藩先代の妾腹の子だった。本来は定府で江戸にいなければならない身なのに、それがなぜ新宮にいるのか。しかも、忍びの者らしき連中もいる。

和歌山城中では金杉清之助は吉宗の密偵ではないかという噂が流れているらしい。清之助はこれを聞いて驚愕するが、同時に和歌山を去るときが来たと感じた。

その立ち去り際のこと、水野京之助が立ちはだかった。そして、京之助の送り込む刺客を倒した後、清之助は京之助の耳にそっと、私は吉宗の密偵だとささやいた。

和歌山を離れた頃から清之助を尾行する者がいる。紀伊和歌山藩の探索方高槻銀次郎である。尾行する内に高槻は役目を忘れ、この若者を好きになり始めていた。

そうした中、再び水野京之助が現れ、この争いの中、清之助は鉄砲で深い傷を負った…。

この清之助の危機を救ったのが、高槻銀次郎であった。この高槻のお陰で命拾いをした清之助は、修行の成果もあり驚くほどの早さで回復していった。

だが、身体は一日一日と回復しているのに、剣を振ると違和感を覚えるようになった。それは銃創によるものなのか、それとも他に原因があるのか…。

本書について

佐伯泰英
乱雲 密命・傀儡剣合わせ鏡
祥伝社文庫 約三三〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 切通しの女
第二章 八寸の徳
第三章 粉河寺の秋
第四章 奥之院詣で
第五章 弄剣合わせ鏡
終章

登場人物

南部染女
岡村左門之丞衛
黒岩吉兵衛…陸奥弘前藩江戸屋敷用人
田宮千右衛門
園部冶平次
お登季…料理茶屋紀之国屋の娘
水野京之助…新宮藩
佐竹兵衛…新宮藩御番組
平手籐内…紀伊藩町奉行
高槻銀次郎…探索方
瑞覚坊…粉川寺
大和屋吉兵衛
解々一膳坊…傀儡
かつらぎ
左験坊真龍…高野聖
峠兎奪…高野聖
沢全…修行僧

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