池波正太郎の「仇討群像」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

「群像」の名の付く三部作の一作。

「深川猿子橋」の最後のセリフ。「…強いものは、弱いものを馬鹿にしちゃアいけないのだ。偉そうな奴は、弱そうな奴を見くびっちゃアいけないのだよなあ。…」

人の恨みを買うということは、つまりはこういうところから来るのではないだろうか。

人を馬鹿にし、侮り、軽んじる。または、人をいびり、イジメる。

こうしたところから人の恨みを買い、果ては殺されることになる。案外、昔も今も変わらないところかも知れない。肝に銘じておきたいセリフである。

また、痴情のもつれというのも、古今東西人殺しの要因となるようである。男と女の間に横たわる情炎というものは、恐ろしいものになるのは永遠に変わることがないのかも知れない。

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内容/あらすじ/ネタバレ

よろいびつ

細井家にその事件が起きたのは享保十一年の春だった。

細井家にある鎧櫃には春画や春本がしまい込まれていた。それを新参の池尻小文吾が熱心に見ていた。と鎧櫃には金百両もしまい込まれていた。池尻小文吾はこれを持て逃亡した。期を一にして用人・西村太兵衛の妻お秀も失踪した。

しめし合わせてのことと思い、主人の細井新三郎は用人・西村太兵衛に見つけたら斬るように言いつける。

だが、真相は…

興奮

北条造酒之助と川野九十郎は主の小姓をつとめているが、川野九十郎は主の寵愛を受けていることを鼻にかけ傲慢である。この傲慢から悪戯心を起こした川野九十郎の所行に怒った北条造酒之助は川野九十郎を切捨ててしまう。

北条造酒之助は逃げ、近藤宇右衛門をたより、近藤一学と名を変えた。

一方、川野九十郎に対する同情の声は薄かったものの、主は討ち手を差し向ける。この討ち手が近藤宇右衛門を殺してしまう。近藤宇右衛門は知名人との交際が広かった。

弟の近藤源太兵衛が中心となり、仇討に出かける。もちろん、北条造酒之助も一緒である。しかし、なかなか仇討が果たせない。折しも世間では色々な仇討が成功し賞賛されていた。

坊主雨

入江長八郎の実兄・金子栄之助が同僚に斬り殺された。斬ったのは坂田彦蔵だった。入江長八郎は仇討にでるがなかなか坂田彦蔵が見つからない。

そんな中、思いがけない女に出会った。八年ほど前、超八郎の家に住んでいたおつなである。おつなと久しぶりにあったことで話をしていると、どうも甥が坂田彦蔵のようである。そして、おつなの話では兄が主の妻女と姦通していたらしい…

波紋

三宅権十郎光少は衆道好みがために、主家を追われてしまう。その追われるときに人を殺してしまい、追われる身となる。

だが、三宅権十郎は討ち手を返り討ちにする。すると、主家はさらに討ち手を送るが、これも返り討ちにしてしまう。

山崎十次郎が伊勢の国・津の城下を出奔してから足かけ三年になる。人を殺してしまったのである。その息子の中尾伝四郎と中尾平馬の二人が探し回っているに違いなかった。

情炎

内山文五郎は、嘘をつき伊東政七を外に出し、その間に妻・ぬいを犯した。すぐに帰ってきた政七は様子が変なのに気がついたが、そう思っている矢先に内山文五郎に刺され、殺されてしまう。

ぬいは生きながらえたが、じきに死んでしまう。そして、内山文五郎は城下から逃走した。

残された二人の娘・おたかはおじの与惣に実の娘として育てられ成長した。大人になったおたかは母のぬいの面影を引継いだ美しい女になっていた。

大石内蔵助

吉良上野介邸への討ち入り前の大石内蔵助を描く。

逆転

内田十蔵とたかが肌身を抱合うのは半月振りのことであった。この二人と中根才次郎を含めた三人は仇討の旅をしている。才次郎の兄の仇討であり、たかはその殺された政之助の妻であり、内田十蔵は奉公人である。奉公人と主筋の妻がとんでもない関係となってしまったのだ。

その現場を中根才次郎が押さえてしまった。狼狽した十蔵は気がつくと才次郎を殺してしまったことに気がついた。

深川猿子橋

陰陽師・平井仙竜がおはると夫婦になるときに、もしかしたら一生を添い遂げることが出来ないかもしれないといわれた。どういうことかと思っていると、おはるは殺された父の仇討を考えているようなのである。

本書について

池波正太郎
仇討群像
文春文庫 約三八〇頁
短編集 江戸時代
赤穂浪士もの含む

目次

よろいびつ
興奮
坊主雨
波紋

情炎
大石内蔵助
逆転
深川猿子橋

登場人物

よろいびつ
 池尻小文吾
 お秀
 西村太兵衛…用人
 細井新三郎
 三ノ松の平十

興奮
 北条造酒之助
 川野九十郎
 池田七郎左衛門
 浅田十兵衛
 近藤源太兵衛
 近藤宇右衛門
 丹羽重兵衛
 高橋喜兵衛
 小山田清左衛門
 山本五郎兵衛
 山田又市

坊主雨
 入江長八郎
 金子栄之助
 坂田彦蔵
 おつな

波紋
 三宅権十郎光少
 長阪忠太夫
 染川銀之助


 山崎十次郎
 徳七
 大黒屋儀助
 中尾伝四郎
 中尾平馬
 中尾九兵衛

情炎
 内山文五郎
 おたか
 与惣
 藤木左右助
 木村源治郎

大石内蔵助
 大石内蔵助
 鍔屋家伴
 おやす
 山城屋一学

逆転
 内田十蔵
 たか
 中根才次郎
 井上弥五郎

深川猿子橋
 平井仙竜
 おはる

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