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藤沢周平の「藤沢周平の世界」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

1では、文庫の巻末解説や全集の解説などが収められている。

2で対談、インタビュー、講演がまとめられている。

【ピックアップ】

故郷の味…丸谷才一

藤沢周平と同郷の丸谷才一が、その思い出の故郷の味について述べている。

爽快なユーモア:「用心棒日月抄」…丸元淑生

丸元淑生は藤沢周平が織田信長を書くことはないだろうと言い切っている。恐らく、同感する人も多いのではないだろうか。藤沢周平の世界に織田信長は似合わない。

加えて、豊臣秀吉や、徳川家康も似合わないと思う。

友情を描く藤沢周平:「三屋清左衛門残日録」…中野孝次

中野孝次は藤沢周平の実生活はよほど孤独なのではないかと推測している。その裏返しに、友情に篤い作品を書いているのではないか、と。

対談 日本の美しい心…藤沢周平/城山三郎

同年生まれの二人の作家による対談。この対談の中で、「漆の実のみのる国」について触れている。

藤沢周平は、世に言う鷹山名君説は少し違うのではないか。かなり美化されているのではないかという疑問があり、それを取り払って、出来るだけありのままの鷹山を書きたいのだと言っている。

米沢と私の歴史小説…藤沢周平

藤沢周平の作品の中で唯一全く同じテーマを扱っている作品がある。「幻にあらず」と「漆の実のみのる国」である。両方とも上杉鷹山について書かれているが、「幻にあらず」の方が先に書かれている。

ここでは、なぜ同じテーマの作品を書く気になったのかを述べている。

「幻にあらず」では竹俣美作当綱の罷免で終わっており、その後、莅戸九郎兵衛善政が登場してからのことが描かれていない。そして、結局のところ、多額の借金を抱えている米沢藩の財政が再建されたのかが描かれていない。

そうしてことを長年気にしていたのが一つ。もう一つは、新たな歴史的資料や研究が進んで、「幻にあらず」で書いたことに訂正を加えたいという気持ちがあったようである。

それは、藁科松柏の年齢のことでもあり、七家騒動の捉えかたであったりする。

七家騒動については、同じ様な事件が各藩で起きており、実際に主君押込が起きている。江戸初期の主君絶対とは様子が異なり、鷹山の時代には藩ありきという構造の変化に起因した事件と捉えなければならなかったのである。

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本書について

藤沢周平ほか
藤沢周平の世界
書かれた時期:-
刊行:1997年4月
文春文庫 約二七〇頁

目次


一作一作が勝負…向井敏
モノクロームの魅力…駒田信二
故郷の味…丸谷才一
作家的肉体:「暗殺の年輪」…駒田信二
負のロマン:「又蔵の火」…常盤新平
佐知の魅力:「用心棒日月抄」…常盤新平
爽快なユーモア:「用心棒日月抄」…丸元淑生
人肌のぬくもり:「一茶」…藤田昌司
闇を透視する目:「驟り雨」…有明夏夫
アンソロジーは中継駅:「橋ものがたり」…井上ひさし
ぜいたくな伝奇小説:「闇の傀儡師」…清原康正
史実と虚構:「密謀」…尾崎秀樹
縦横の筆さばき:「よろずや平四郎活人剣」…村上博基
夕景の向こう側:「隠し剣 孤影抄・秋風抄」…関川夏央
作家の年輪:「海鳴り」…丸元淑生
人情と過去:「ささやく河」…関川夏央
架空の藩の実在感:「風の果て」…皆川博子
武家と市井:「花のあと」…桶谷秀昭
真実の重み:「白き瓶」…清水房雄
烈しい郷愁:「蝉しぐれ」…秋山駿
友情を描く藤沢周平:「三屋清左衛門残日録」…中野孝次
失われたものの美しさ:「玄鳥」…中野孝次
「三屋清左衛門」を読む…西義之
藤沢さんと私…城山三郎
藤沢周平氏時代小説の原液…桶谷秀昭
お葉に始まる-藤沢周平の女たち…川本三郎
幻影の町…杉本章子
ファンの顔…出久根達郎
なにがしかの不幸…飯田経夫
白石の笑顔…綱淵謙錠

対談 日本の美しい心…藤沢周平/城山三郎
インタビュー 幸も不幸も丸ごと人生を書く…藤沢周平
米沢と私の歴史小説…藤沢周平