藤沢周平「ふるさとへ廻る六部は」の感想とあらすじは?

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新聞や雑誌等に載ったエッセーを集め、それぞれテーマ毎に振り分けている文庫オリジナル。

文庫のタイトルは「ふるさとへ廻る六部は気の弱り」という言葉から名付けられています。

エッセーの1では藤沢周平の故郷である庄内や東北地方に関する思いが述べられています。藤沢周平の作品を読む上で、この庄内の世界は外せません。

エッセーの2では藤沢周平の時代小説・歴史小説に対する考え方や思いが述べられています。また、先輩や同時代の作家に関する思いが述べられています。

エッセーの3はテーマのない、いわゆるエッセー的な内容となっています。

エッセーの4は藤沢周平の最も好きな推理小説に関する思いが述べられています。藤沢周平の小説には推理小説から受けた影響がずいぶんあるに違いありません。

このエッセー集の中で最も興味深かったのは、エッセーの2の部分でした。

藤沢周平作品について自身で述べているのは、やはり面白く読めました。

また、藤沢周平がいかに推理小説が好きであるかが分かるエッセーの4も興味深く読める部分です。

【ピックアップ】

「「美徳」の敬遠」

藤沢周平の時代小説・歴史小説に対する考えの一片が分かるエッセー。ここで、藤沢周平は武家社会の主流は書かないと言っている。書けば、武家の格式やら作法、武士道に言及せざるを得ないからである。

そういうものが苦手だとも言っている。また、これが故に、浪人者、下級武士、武家の二・三男坊が多く登場するのだとも言っている。

このエッセーでは他の時代小説・歴史小説に関する見解も述べられているので、興味深い。

「市井の人びと」

藤沢周平は市井ものを書く時は、昔の随筆から材料を仰ぐことは稀で、現代日常の中から題材を選ぶと書かれている。結果的に現代を切り取ったかたちで小説に反映されているのだろう。その点に藤沢周平の真の面白さがあるのだと思う。

「試行のたのしみ」

直江兼続と石田三成が登場する小説「密謀」の事について書かれている。

「やわらのこと」

人気のシリーズ「獄医立花登手控え」で主人公の立花登がやわらの達人であることに関連して書かれたエッセー。

「自作再見-隠し剣シリーズ」

「『橋ものがたり』について」

それぞれの作品について書かれたエッセー。

「新聞小説と私」

藤沢周平が新聞小説として書いたものは「回天の門」「消えた女」「密謀」「海鳴り」「ささやく河」「蝉しぐれ」である。

この中で、作者の想定とは異なりが思いがけなく好評だったのは「海鳴り」で、連載が終了してみると意外に読み応えのあるものになった「蝉しぐれ」であったことが興味深い。

「宿題-山本周五郎」

「たとえば人生派」

山本周五郎について書かれているエッセー。山本周五郎と比較されることが多い藤沢周平が、そのことに戸惑い、かつ、その比較が故に山本周五郎作品が読めなくなってしまったことが書かれている。

やはり、この様に比較されてしまうと、何とかその影響下から逃れるために苦心惨憺するものらしい。

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本書について

藤沢周平
ふるさとへ廻る六部は
書かれた時期:-
刊行:1995年5月
新潮文庫 約三六五頁

目次

忘れもの(詩)

 1
日本海の落日
旧友再会
聖なる部分
教え子たち
村の学校
夜明けの餅焼き
冬の鮫
孟宗汁と鰊
塩ジャケの話
乳のごとき故郷
ふるさと賛歌
月山のこと
二月の声
ふるさとへ廻る六部は
岩手夢幻紀行
啄木展
雪が降る家-光太郎・茂吉
混沌の歌集-斎藤茂吉
老婆心ですが
自己主張と寛容さと
郷里の昨今
似て非なるもの
農業の未来
変貌する村
高速道路が来る

 2
「美徳」の敬遠
市井の人びと
試行のたのしみ
信長ぎらい
やわらのこと
自作再見-隠し剣シリーズ
『橋ものがたり』について
面白い舞台を期待
新聞小説と私
宿題-山本周五郎
たとえば人生派
芳醇な美酒-直木三十五
池波さんの新しさ
時代小説の状況
豊年満作-時代・歴史小説の展望
大衆文学愚感
私の「深川絵図」

 3
歩きはじめて
夏休み
役に立つ言葉
青春の一冊
二つ目の業界紙
大坂への手紙
元日の光景
私の修業時代
出発点だった受賞
恥のうわぬり
禁煙記
ずれて来た
私の休日
夕の祈り
車窓の風景
近況
近所の桜並木
腰痛と散歩
電車の中で
プロの仕事
老年
昭和の行方
さまざまな夏の音
「冬から春へ」思うこと
晩秋の光景
日日片片
明治の母
ある思い出
涙の披露宴

 4
胸さわぐルソー
立ちどまる絵
忙しい一日
ブラマンクの微光
なみなみならぬ情熱
熱狂の日日
演歌もあるテープ
ハンク・ウィリアムス
好きこそものの
ミステリイ徒然草
私の名探偵
推理小説が一番
魅力的なコンビ

冬の窓から(詩)

あとがき

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