武田泰淳の「十三妹(シイサンメイ)」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

小学生の高学年から中学生の時分にはとても面白く読めた作品だろうと思う。解説の田中芳樹が、新聞連載されていた当時、小学生であったが毎日ワクワクしながら読みすすみ、続きを楽しみにしていたというから、対象読者がその辺りが妥当なのだと思う。

本書は「三侠五義」「児女英雄伝」「儒林外史」を合わせた作品であるそうだ。そして、筆者は清朝の中国忍者伝と記しているが、武侠小説として読んでも構わないのではないかと思う。ちなみに十三妹は「児女英雄伝」のヒロイン、白玉堂は「三侠五義」の人気男である。

本書は「三侠五義」「児女英雄伝」「儒林外史」をただ単に合わせただけでなく、成立時代の違う作品を一緒にまとめたから驚きである。

武田泰淳もあとがきに書いているが、シェイクスピアのジュリエット嬢と、セルバンデスのドン・キホーテ老騎士を勝手気ままに結びつけたようなものであり、解説の田中芳樹に言わせれば、源義経と坂本竜馬が一つの作品の中で共演するようなものらしい。

まぁ、こんな無茶なことでは中国人には読ませられない。

「児女英雄伝」「儒林外史」が清代後期、「三侠五義」が宋代前期であり、両者の間は約七〇〇年の時差がある。

武田泰淳は続編を考えていたようである。本書の終わり方も、続編がありそうな終わり方である。だが、結局は続編は書かれなかった。

理由は幾つかあるらしいが、田中芳樹は売れなかったことが直接の要因だろうといっている。

面白くないから売れなかったのではない。

執筆当時は中国との国交が開かれていなかったため、中国に対する関心が薄かった。そのため、売れなかったらしい。すると、続編の依頼は来ないというわけだ。

この時代、柴田錬三郎が「柴錬三国志・英雄ここにあり」を書いていたが、編集者から売れないからやめてくれと言われたそうである。

時代というものである。

本場、中国では武侠ものは人気がある。代表的な作家として金庸、梁羽生、古龍らがいる。3大作家と呼ばれる。金庸の作品はほとんどが翻訳されており、文庫等で入手しやすい。

武侠ものがどのような感じなのか、映画で見るのなら「グリーン・デスティニー」がおススメ。武侠作家の王度廬の「臥虎蔵龍」を映画化したもの。

他には3大作家の梁羽生の「七剣下天山」を映画化したものとして「セブンソード」がある。

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内容/あらすじ/ネタバレ

安家の二人の嫁はともに二十になったばかりであった。第一夫人は豪農の一人娘であり、第二夫人は…過去に謎の多い女性である。その彼女たちの夫は第一次、第二次の科挙の試験を通り、最後の試験を控えている身であった。

ある夜、二人の夫人が話をしている中、賊が安家に押し入った。第二夫人は家族の目を覚まさせないで始末するつもりでいた。

なんと言っても、第二夫人はかつて有名を轟かせた十三妹、本名・何玉鳳なのである。彼女はあっさりと賊を片付けてしまう。

だが、このさわぎに紛れて錦毛鼠こと白玉堂が忍び込んで金を盗んだことは、さしもの十三妹にとっても油断であった。

賊侵入騒ぎがあっても安家は賑やかである。食事の中で、家族の皆が何玉鳳に話をせがんだ。そして、何玉鳳が話し始めたのは人の首を巡るややこしい話であった。話が終わると、皆フーッと深いため息を付き、互いに顔を見合わせるのだった。

後日、父親の安老爺の昇進の話が入ってきた。河川工事に出張せよというものだった。そして、遠い任地へと赴いた。だが、程なくして安老爺が失脚したという。そのため、軟禁状態におかれ流刑になるかもしれないという。回避するためには銀三千両が必要だった。

安公子が父の大難を救うため遠い任地へと向かうという。何玉鳳は自分が付き添わない代わりに金満少年を同行させることにした。目から鼻に抜けるほどに賢い少年だが、肝心の主人が金満少年を多少軽んずる部分がある。

遠い任地への旅は金満少年が上手くやっていたが、途中で知り合った金儒人という者にたかられてしまう。実はこの金儒人は白玉堂であった。安公子が出発してからつけていたのである。そうとは知らない安公子である。

旅には様々な困難が待ち受けているものである。安公子にもたぶんに漏れず困難が降りかかってきた。そして、金満少年ともはぐれ、乞食同然、無一文になってしまった。さてさて、安公子の運命や如何に。

本書について

武田泰淳
「十三妹(シイサンメイ)」
中公文庫 約三三〇頁

目次

首の話
ややこしい話
旅の話
放浪の話
ねずみの話
受験前の話
試験場の話
その後の話

登場人物

何玉鳳(十三妹)
張金鳳…第一夫人
安公子…夫
安老爺…義父
金満
白玉堂(錦毛鼠)
馬老先生
方博士
包公
襄王

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