
藤沢周平の「半生の記」を読んだ感想とあらすじ
この一冊は、まさに、藤沢周平の半生の自伝である。「半生の記」と「わが思い出の山形」をあわせると、作家になるまでの半生が詳しく描かれている。そして、最期に付けられている年譜は、作家になってからの足跡がわかるようになっている。
歴史上の事件を扱った短編集である。「逆軍の旗」は明智光秀を扱い、「上意改まる」「二人の失踪人」は藤沢周平の郷里の歴史を題材にとったものである。最後の「幻にあらず」は上杉鷹山を主人公とした短編である。
直木賞受賞後の作品二編と、受賞前の作品三編を収録した短編集。藤沢周平の初期の短編集とあって、全体的に暗さの目立つ作品集となっている。
老境にさしかかってから見える小さな希望が、この作品にはある。だが、それでも、この作品からは老境の悲哀が消え去ることはない。だからこそ、素晴らしい作品であると思う。