塩野七生「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」の感想とあらすじは?

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「めったにしゃべらない、しかし常に行動している男」といわれた、三十一年という短い生涯のチェーザレ・ボルジアを描いています。

解説で沢木耕太郎が述べているのは実に的を射ているように思います。歴史でもなく、伝記でもなく、小説でもなく、しかし同時にそのすべてでもあるというのが本書の特徴でしょう。

その事は本書でチェーザレ・ボルジアの口を使っての描写が極端に少ないことからもそういえると思います。

その代わりに、チェーザレ・ボルジアが何時、どこで、何をしたかという事実を丹念に積み重ねています。

所々で作者・塩野七生のチェーザレ・ボルジアに対する好意的な見解や感情が出てきますが、それすらも控えめです。

塩野七生は意図的にチェーザレ・ボルジアの口からの発言を控えており、自分の見解や感情も控えています。

そうすることで「めったにしゃべらない、しかし常に行動している男」であるチェーザレ・ボルジアを際だたせることが出来るからです。

しかし、この手法により、人物の個性が明確に浮き出てきません。これによってチェーザレ・ボルジアの印象は読者に委ねられる事になります。

そのため、本書を読んでのチェーザレ・ボルジアの印象は人によってまちまちになるでしょう。ですが、それでよいのだと思います。

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内容/あらすじ/ネタバレ

1492年、チェーザレ・ボルジアは17才になる直前のことだった。ローマからの使者がやってきて、チェーザレの父が法王・アレッサンドロ6世となったことを告げた。チェーザレはローマへ赴いた。

アレッサンドロ6世は枢機卿会議を開き、新たな枢機卿を任命する。その中に、チェーザレも含まれていた。ここにチェーザレは枢機卿となるのである。

1494年、フランス軍がイタリアに侵入した。この後では反ボルジアの気に燃えるローヴェレ枢機卿のかげがちらつく。

だが、ここからが法王・アレッサンドロ6世の政治力の見せ場である。シャルル8世の要求であるナポリ王位継承権、十字軍遠征計画、宗教会議開催には一切触れずに、シャルル8世を懐柔してしまう。

アレッサンドロ6世のもう一人の息子、ホアンは僧籍にはいることなく、武人として成長していたが、今ひとつ能力に欠ける部分があった。

そして、そのホアンが何者かに殺されるという出来事が起きる。犯人としての噂が立ったのは他でもないチェーザレであった。

この後から、チェーザレの野望が行動となって現れ始める。

チェーザレは枢機卿の地位を捨て、還俗することにした。還俗して最初に行ったのが、フランス王家との姻戚関係を結ぶことであった。

そして、次には法王領内の小僭主達を制圧することを始める。剣を取ってから2年。チェーザレが制圧したのは、イーモラ、フォルリ、リミニ、チェゼーナ、ファノ、ファエンツァであった。その後も快進撃は続く。

しかし、そのチェーザレに反旗を翻した者たちがいた。それはチェーザレ配下の傭兵隊長であった。これをマジョーネの乱という。この反乱でチェーザレが痛切に学んだことは、自分の力の多くは父・アレッサンドロ6世が在位しているというところから来ていることである。

父が死ぬまでにチェーザレは自身の力を強力にしておかなければならない。

そして、その日は突然にやってきた。折しも、チェーザレも病に倒れているという皮肉ぶりだった…。

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本書について

塩野七生
チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷
新潮文庫 約三二〇頁
15世紀末~16世紀頭 イタリア

目次

第一部 緋衣
第二部 剣
第三部 流星

登場人物

チェーザレ・ボルジア
アレッサンドロ6世…法王・父
ホアン…弟
ルクレツィア…妹
ドン・ミケロット…部下
ニッコロ・マキャヴェッリ
シャルル8世…フランス王
ルイ12世…フランス王
レオナルド・ダ・ヴィンチ

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