佐伯泰英の「密命 第9巻 極意-密命・御庭番斬殺」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第九巻。

前作で尾張柳生から宣戦布告を受けた金杉惣三郎。元々は誤解から始まったことだが、それがわかった上で尾張柳生は己のメンツを立てるため金杉惣三郎を亡きものにしようと動き始める。

そして、これは息子・清之助にも同じことがいえた。

九州の地を剣術修行で廻っている清之助を尾張柳生の刺客が次々と襲いかかる。

西で東で金杉親子と尾張柳生の果てなき攻防が始まる。

物語は吉宗の享保の改革。財政改革を断行するために老中水野忠之を勝手掛老中に任ずる。勝手掛とは財政担当と言うことだ。

この享保の改革で吉宗は緊縮財政を採るのだが、当時この政策は庶民には人気がなかった。それを逆手に取ったのが尾張藩なのだが、物語ではもう少し先のことだ。

というのも、本シリーズでの尾張藩主は、まだ徳川継友である。上記の対決は尾張藩主が宗春の時代になってからのことであるのだから。

この、尾張藩主が継友から宗春に交代するときにも様々な逸話があり、相当面白い話ができそうなので、今から楽しみである。

さて、老中水野忠之の水野道場を仕切るのは若い家臣の佐々木治一郎、次郎丸、三郎助の兄弟、弓削辰之助。惣三郎に鍛えられメキメキと力をつけている。彼らにもいずれ活躍する日が来るのだろう。

最後に、前作で軽部駿次郎に騙されて傷心のみわ。みわが我儘を言えるのは鍾馗の昇平だけである。どうやら恋へ発展していきそうな気配である。

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内容/あらすじ/ネタバレ

享保七年(一七二二)仲秋。豊後相良藩勘定奉行の米谷鎌吉は城下を流れる番匠川に大天狗が現れるとの噂を聞いたので見に行った。大天狗は修行中の金杉清之助だった。その清之助を鎌吉が見る前で尾張柳生の赤星次郎平と名乗る剣士が襲いかかった…。

水野道場での稽古が終わったあと、老中・水野忠之が金杉惣三郎と朝餉をともにしたいと言い出した。何やら話があるようだ。その席に大岡忠相もいた。

御庭番一六家の一人古坂与吉が吉宗の寝所近くで殺されていたのが見つかった。享保の改革に反対する幕閣の手先が動いたか、それとも尾張の手先が動いたか…。

他の御庭番もすでに動いているが、水野は惣三郎に早急に暴き出せと言う。

その前に、惣三郎は吉宗に拝謁することになった。ここで吉宗は、江戸近辺を探索しているはずの明楽樫右衛門が戻ってきていないことを告げた。

その頃、清之助は日田往還にいた。ここで、再び尾張柳生に襲われる。

惣三郎は御庭番十六家の村垣吉平忠充から明楽樫右衛門の息子・明楽法太郎が一人で行方不明の父を探索していると聞かされる。この親子は連絡をつけていたようだ。

大岡忠相から密偵の時蔵と多津が派遣されてきた。惣三郎の探索を助けるためだ。

惣三郎は明楽親子の線から吉宗を狙うものをあぶり出そうと考えていた。その旨を時蔵と多津にも告げ、いよいよ惣三郎の探索が始まった。

時蔵は明楽法太郎の足取りを掴まえた。三日と明けずにおきみという曖昧宿の飯売女の所に通っているという。その法太郎だが、狙いをつけているのは美濃高須藩の上屋敷のようだ。

まずは、法太郎に会わねばならない。だが、接触しようとした瞬間邪魔が入り、会うことができなくなってしまった。

清之助は福岡にいた。そこで石見銕太郎道場の師範であった木下図書助を訪ねた。だが、ここにも尾張柳生が…

老中・水野忠之が御庭番・古坂与吉が殺された時に吉宗の寝所に近づき得た人物六人を絞り出していた。中奥御留守居役・佐藤頼母、御伽衆・井上信武、小納戸衆・篠村逸馬、奥祐筆・能見八郎兵衛、小姓組・常坂源三郎、書院番・市村仁右衛門である。この中に、吉宗を狙う人物がいるのか…。

明楽法太郎がいなくなってしまったので、惣三郎はおきみに直接会うことにした。そして、明楽樫右衛門が元美濃高須藩の中間駒造の女房お秋に接触していたことが分かった。そして、お秋の実家は小金井村にある。実家の刀剣鍛冶・藤原利兵衛を訪ねた。

この藤原利兵衛のところに、信抜流の居合の達人小出直三郎が鍛造した刀があるのを見つけた。妖気漂う代物であった。そして、ここで明楽樫右衛門とお秋が既に亡きものになっていることを知った。

それにしても、小出直三郎の存在が不気味なものとして惣三郎の胸の奥を騒がせた。

小出直三郎の名は水野忠之も大岡忠相も知っていた。というのも、御庭番十六家の上に御庭番四家を置こうとしたときのこと、この四家が何者かによってすべて殺されたことがあった。これに小出直三郎が関わっていたようなのだ。この直三郎が創意工夫した剣に脛斬りというものがあるそうだ。

小出直三郎は今回の一件に深く関わっているようだ。だが、小出直三郎は吉宗の寝所に近づけるはずがない。では、一体誰が?

本書について

佐伯泰英
極意 密命・御庭番斬殺
祥伝社文庫 約三七〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 日田往還蜩勝負
第二章 尾張柳生七人衆
第三章 必殺脛斬り
第四章 決闘馬関船島
第五章 女密偵お吉の悲劇
第六章 暗闘背面突き
終章

登場人物

<御庭番十六家>
村垣吉平忠充
明楽樫右衛門
明楽法太郎…息子
おきみ
お秋
駒造
小出直三郎
<尾張柳生>
赤星次郎平
板杖燕之丞
木場柳五郎
龍光寺兵造
大津源旛
鎌足大海
鯨内天厳
佐藤頼母…中奥御留守居役
井上信武…御伽衆
篠村逸馬…小納戸衆
能見八郎兵衛…奥祐筆
常坂源三郎…小姓組
市村仁右衛門…書院番
時蔵…大岡忠相の密偵
多津…大岡忠相の密偵
お吉…大岡忠相の密偵
広瀬籐兵衛…日田の掛屋
おかる…孫
百助…手代
和久田直勝…伊予松山藩松平家家臣
黒田継高…筑前福岡藩藩主
木下図書助
藤原利兵衛…刀剣鍛冶
強矢陣五郎助恒…富田流
熊谷和十郎…信抜流
お里…娘

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