佐伯泰英の「夏目影二郎始末旅 第7巻 五家狩り」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第七弾

短編が二つに、中編が一つといった構成。

最初の短編は、後の桃井道場四代目・桃井春蔵直正となる田中甚助豊秋を登場させるための物語となっている。この田中甚助豊秋と影二郎が今後の物語の中で、絡んでいくことになるのだろうか?

そして、次の短編は異母妹の紀代の縁談に絡む話。常盤家の中で、父を除いて、数少ない影二郎の味方ともいえる紀代。この紀代を、ここで登場させ、今度どのような展開に持っていくのだろうか?

二つの短編は、このシリーズの中でどのような効果をもたらすのかが楽しみである。というのも、佐伯泰英という作家は、無駄な設定をほとんどしないので、あえてこういう短編を入れているということは、この後になんかしらの展開があると見てよい。

さて、本書のメインとなる中編であるが、尾張を舞台にして、大名昇格運動にまつわる暗躍が繰り広げられる。

尾張というと、どうしても、「密命」シリーズを思い出してしまう。継友、宗春兄弟と吉宗との対立。

今回は、この事が遠因となっているわけではない。もっと前、家康の時からの因縁が事の発端となっているのだ。

これを前々作で老中首座の陰嚢をいささか握った影二郎はどう「狩る」のか?

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内容/あらすじ/ネタバレ

天保十二年(一八四一)。

若菜と出かけた影二郎の前で、二人の侍が七、八人の侍に追われ斬られた。成瀬家は尾州の家臣ではないと、斬られた侍の一人がいった…

この事件のあらましは、父・秀信に伝えておいたが、尾州が絡むとなると、相手は御三家。慎重な動きが必要となる。

そうした中、辻斬りが横行しているという。しかも名のある道場の高弟が襲われている。辻斬りは一体何者か?

アサリ河岸の桃井道場でも、小天狗と呼ばれている田中甚助豊秋が辻斬りなにするものぞと息巻いていた。後の桃井道場四代目・桃井春蔵直正である。

…一つの時代が終焉を迎えようとしている。大御所・家斉が病の床にあった。

妹の紀代が影二郎を訪ねてきた。

許嫁の浜谷清太郎が年上の女性に骨抜きにされてしまっているのだという。この事を知った義母の鈴は激怒しているという。困り果てて相談にやってきたのだ。

その清太郎がうつつを抜かしている女は小人目付の娘・お桂であった。しかも、この女がそうとうのたまで…

…影二郎が父・秀信に呼ばれて聞かされたのは、先だっての尾州に絡む話。ここで五家のことを聞く。五家とは御三家御付家老で、尾張の成瀬隼人正家、竹腰山城守家、紀伊の安藤飛騨守家、水野対馬守家、水戸の中山備前守家をいう。

この五家は本来、尾張や紀伊、水戸の家臣という家柄ではない。そのため、この五家には不満がくすぶっている。大名になるための運動を始めたというのだ。

先だってのことは、これが裏にあるようである。

秀信は、尾張犬山にゆけという。だが、今回の命は曖昧としたものであった。というのは、水野忠邦がこの五家の大名昇格運動で一端の役割を果たしていたからである。

…尾張に入った影二郎一行。菱沼喜十郎、おこま、小才次らが探索に奔走した。そうした中、小才次の行方がわからなくなった。

一体どうしたというのだ?何者かに攫われたのか?

一同が小才次の行方を追い始めた中、影二郎は三枝謙次郎と名乗る武士から尾張の内情を聞くことが出来た。そして、そこに金鉄党と呼ばれる者達の話も聞かされる。

それにしても、ここまで手の内をさらけ出す三枝謙次郎とは一体何者か?

本書について

佐伯泰英
五家狩り
光文社文庫 約三七五頁
江戸時代

目次

第一話 忠直卿の亡霊
第二話 紀代の憂愁
第三話 小才次の危難
第四話 若宮八幡女舞
第五話 暴れ木曽川流し
第六話 重ね鳥居辻勝負

登場人物

田中甚助豊秋
松平春次
浜谷清太郎
お桂
依田七之助
鳥市
梅村丹後…尾張藩御目付
一貫堂大乗…御土居下蜻蛉組
越路太夫
若狭じい
真七郎
三枝謙次郎
伍作

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